
『円周率を求める』~リテラ探究学習研究レポート~
古来より多くの賢人たちが求めようとし続けた円周率。現在ではスーパーコンピュータでの計算によって62兆8000億桁まで判明しているそうです。そんな果てしない歴史と桁数をもつ円周率に挑戦しました。
この研究をしたのは、新高校1年生のR・Nさんです。
■リテラの先生からのコメント
円周率の求め方を自分で考え出すというすばらしい研究になりましたね。
ビーズやシャーペンの芯を一緒にばらまいている時、講師も数学者になったような気がしました。
わかるまで考えようとする姿、頼もしかったです!
■テキスト資料
皆さんは円周率を知っていますか。
小学校では約3.14、中学校ではπと習う数字です。
今回、ぼくは、円周率はなぜ約3.14なのか興味を持ち、実際に求めてみることで、3.14がでてくるか確かめようと思いました。

円周率とは、円の周の長さと、直径の長さ比のことで、円の周の長さを直径で割ることで求められます。

円周率を求めるには、実際に測ってみるのが一番楽です。
用意するのは、主に、丸いものと紐と定規です。

紐を丸いものに巻き付け、一周したところで切り長さを測ります。
これが円周となります。

さらに、定規で直径も測ります。
そして、円周を直径で割ります。

その結果、3.3333・・・という値になりました。
3はあっています。

面白い円周率の求め方として、確率を使うものがあります。
正方形の枠を作り、その中に、正方形にぴったりくっつく円を描きます。
そしてそこにビーズのような細かいものをまきます。

円の中に入ったものと、外に出たものの数を数えます。
数えるのはとても骨が折れるので、今回は重さを使うことにします。
今回の実験では、円の内側のビーズの重さは52g、外側のビーズの重さは7gでした。

ビーズをまいた時、そのビーズが円の内側に入る確率は、全体の面積を円の面積で割った値になります。

ここで、円の面積は、半径×半径×円周率、正方形の面積は、内側の円の直径×直径です。

半径を1としたとき、円の面積は、1×1×円周率、正方形の面積は、2×2で、その比は、円周率:4になります。

これを先程の、円の内側に入る確率の式に当てはめると、円の内側に入る確率は、円周率を4で割った数となります。

この式を変形すると、円の内側に入る確率に、4をかけたものが、円周率になります。

よって、ビーズが円の内側に入る確率を4倍すると、円周率が求まります。
今回は、3.5254236となりました。
円周率は3とちょっとだということが分かります。

その他の確率を用いた方法として、ビュフォンの針というものがあります。
この方法では、等間隔に並んだ平行な線と、たくさんの針を使います。
ここでは、ノートとシャーペンの芯で代用します。

ノートにシャーペンの芯をまき、ノートの線と交わっている芯の数を調べます。

不思議なことに、投げた本数を、線と交わった本数で割ると、円周率が出てきます。
今回は、77本の芯を投げ、そのうち線と交わったのは29本でした。

計算してみると、2.6551・・・となりました。
いまいちですが、半分ほどの本数でやったときは、1.6程の値だったため、確実に精度は上がっているはずです。

円周率の求め方について調べたとき、確実に登場するのが、アルキメデスが用いた方法です。

半径1の円を描き、内側と外側に、正六角形や正十二角形といった図形を描き、その周の長さを求め、直径2で割ることで、円周率がある範囲の上限と下限がわかります。

例えば、六角形では、内側は周が 6、外側は 4√3、大体6.92で、周と直径の比は 3と約3.46、平均を出すと、3.23ほどになります。
アルキメデスは、正96角形を用いて、3.14まで求めたそうです。

現在は、円周率はコンピューターで計算されています。
そこで用いられているのが級数です。
級数とは、数列を順に「足す」の記号で結んだもので、有名なものには、

二分の一足す、四分の一足す、八分の一たす、と続けていくと、1に近づいていくというものが有名です。
答えがある値に近づいていくことを、収束と言います。

級数の中には、足していったとき、合計が円周率に近づいていくものがあります。

1に、分母が奇数、分子が1の分数を足していくと、円周率を4で割った値に近づくといったものや、1に、分母が自然数を二乗した数、分子が1の分数を足していくと、円周率を二乗した数を6で割った値に近づくというものがあります。

しかしこれらの級数は、いくら計算しても、なかなか円周率に近づくことができません。

すぐに円周率が出てくる級数として、チュドノフスキー兄弟によって発見されたチュドノフスキー級数や、

インドの数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンによって発見された級数があります。
これらの級数は実際に円周率を求めるプログラムにも用いられています。

これまで、円周率の求め方を説明してきましたが、求め方を調べているうちに、自分でも求める方法を考えてみたくなり、作ってみることにしました。

円周率を求めるうえで利用するのが、半径が1の円の面積は円周率と等しいということです。
これは円の面積の公式からすぐにわかります。

円の面積の求め方ですが、色々な方法はあると思いますが、円をシュレッダーにかけたように、細かく切り分けて求めることにします。
シュレッダーにかけた書類は、細長い紐の束のようになります。
同じように、丸く切った紙をシュレッダーにかければ、長さの異なる細長い紐の束が出来ます。
この紐の一本一本の縦の長さと横の長さを測って、面積を求めていき、足し合わせれば、元の紙の面積もわかるはずです。

シュレッダーにかけた破片の横と縦の長さを、計算で求めるために、y=√1ーX^2 という式を使います。
この式は、グラフが円になるという関数で、中学校で学ぶ、三平方の定理を応用することで、簡単に求められます。

また、計算をしやすくするため、使うのは円を4等分したうちの一つとします。

丸い紙をシュレッダーにかけたとき、できる紙の紐は、端がとがった形になります。
この紐の幅は、シュレッダーの刃の間隔によって決まりますが、その間隔が場所によって異なることはあまりないので、一定の長さとし、nとおきます。
また、紐の面積は、とがっている部分を切り、三角形と長方形に分けることでより正確に求められます。

この紐たちをつなぎ合わせることで、このように、円のような形を作ることができます。

三角形と長方形に分けたときの長方形の縦の長さは、一本目は√1-n^2、二本目は√1-(2n)^2、となり、それぞれ横幅 n をかけることで面積が分かります。

次に、ひもの本数を考えます。
まず、1cmを n cmずつ分けると、1÷nで、全部でn分の1個に分けられるとわかります。
しかし、一番外側の1個は、三角形になります。

そのため、長方形の本数は、n分の1ひく1個になります。

三角形の幅は、長方形と同じくn、縦の長さは、1つ目は、1から1本目の長方形の縦の長さを引いたもの、2つ目は、1本目の長方形の縦の長さからから2本目の長方形の縦の長さを引いたもの、と続きます。

三角形の縦の長さの合計は、図を見ればわかるように、1になります。
三角形はどれも横幅が同じため、全ての三角形の面積の合計は、三角形の公式から、n × 1 ÷ 2、つまり、nを2で割れば求められます。

長方形の面積の合計は、三角形の面積の合計と同じように、全ての長方形の縦の長さの合計にnをかけることでわかります。
面積の合計は、シグマという記号でこのような式で表せます。
シグマとは総和記号で、繰り返しの足し算の時に用いられます。

この長方形の面積の合計を表す式に、三角形の面積の合計を表す式を足し、4倍します。
4倍するのは、ここまで求めてきたのが、円を4等分した時の面積だからです。

n はシュレッダーにかけた時の横幅であるため、n の値が小さいほど、正確な円周率が出ます。
実際にnに1より小さな適当な数を入れてみます。
0.1のときは、3.1まで、0.01のときは3.14まで正しい値が出ます。

円周率の求め方を調べ計算してみたことで、次のようなことがわかりました。
まず、円周率は3より大きいことは、実験からでもわかりました。
また、計算により、より細かく、約3.14だとわかりました。

円周率はさまざまな方法で求めることができ、紀元前から求められてきています。
今回、計算式を自分で立ててみましたが、より少ない計算で求めることもできることを考えると、まだまだだと感じます。
小学生の頃はただただ計算をややこしくするだけの存在だった円周率ですが、なかなかに奥の深い数字だったのだと知ることができました。
紀元前から続く円周率を求める歴史の流れに、ぼくも少し乗れた気がします。
これで発表を終わります。
聞いてくださって、ありがとうございました。

■研究の振り返り
◇これはどのような作品ですか?
円周率はとても奥が深く、数学は面白いということ。
◇どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
円周率を求める方法を思いついたので、その方法を様々な人に広めたいと思ったから。
◇作品づくりで楽しかったことは何ですか?
円周率を求める級数が、とても複雑で、なぜこの級数が生まれたのか驚かされたこと。
◇作品づくりで難しかったことは何ですか?
図を作る作業と、数式を描く作業。考え方を言葉で表現すること。
◇作品作りを通して学んだことは何ですか?
実験で、なかなか狙った結果が出ないこともあり、様々な工夫で乗り切った。このように、狙ったようにならないこともあるが、臨機応変に対応することが大切なのだと学んだ。
◇次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
時間に間に合わせるようにする。
◇来年研究したいことは何かありますか?
心理学
◇この作品を読んでくれた人に一言
これをきっかけに、数学に興味を持ってくれる人が増えてほしい。
この記事を書いた生徒さん
