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アトピー性皮膚炎の新しい治療薬について

 アトピー性皮膚炎は、多くの方が一度は耳にしたことがあると思われる代表的な皮膚疾患の一つです。従来、科学的な根拠がある有効な治療としては塗り薬での治療が主体で、一部免疫抑制剤の内服薬がある程度でした。

 近年 医学の発展によりバイオ製剤やJAK阻害薬といった新しい治療が登場し、従来十分にコントロールできず生活に支障をきたすような重症な方も、塗り薬は不要となるぐらいまで十分にコントロールできるようになってきました。 
 ただし、新しい治療を行うには、クリニックで導入することができるものから、レントゲン 撮影や血液検査などが必須となっていて施設基準がある治療もあるため、基幹病院で行うことが多い治療となっています。

 当院に通院される方々の中にはかなり重症な方もいらっしゃいます。
 上記の新しい治療の登場に伴い、私達は来院される方に新しい治療としてどのような治療があるかを伝える義務があり、そしてどの患者様も条件を満たせば新しい治療を受ける権利もあると考え、その解決手段として、日本医科大学千葉北総病院の皮膚科と連携を開始しました。つまり重症な症状を有する方に千葉北総病院を紹介し、新しい治療を受けていただいていますし、千葉北総病院のスタッフにも非常勤医師として当院で勤務していただくこととしました。 
 その結果、従来社会生活にも支障をきたすほどの病状であった方が、支障なく生活できるようになる方も多くいらっしゃいます。時折、病院に紹介して私共のクリニックの手を離れた方がわざわざ 病状が軽快し喜んでいることを報告に来てくださっている方もいらっしゃいます。

  この連携は、3者にとってメリットのある関係となっています。

 患者様にとっては、当然、症状がコントロールできて生活に支障がなくなる、あるいは薬を使わなくても良い程度まで改善することもあるといったように、病状の改善につながります。

 大学病院としては新しい治療に取り組むことで世界に先駆けて 新しい論文を発表することで実績を重ねて医学の発展に貢献できます。 

 私達のクリニックにとっては、患者様を大学に紹介するということは当院の通院患者数が減るということになるので、経営的にはマイナスになるという側面はあります。眼の前の患者様にとって一番良い選択肢を提案しその方が良くなることが本来の医療のあるべき姿であると考えていますし、短期的には経営的にマイナスなことを行っているようでも、この結果、長期的には改善された方が他の方を紹介いただくという循環が出来てくるのではないかと考えて積極的に紹介しています。

 何より私の原点である、科学者を目指し文明に貢献したい、あるいは医学の発展に貢献したいという思いをクリニックで勤務しながら実現することができていると考えています。
 実際に、当院で勤務して頂いている日本医科大学千葉北総病院の非常勤医師が世界に先駆けて発表している医学論文にも共著者として私も登録していただいています。おそらく一般のクリニックでこのような実績のある医師は数少ないのではないかと推測します。
 つまり、私は自らが科学者となって文明に貢献したいという目標には直接は関われていないものの、クリニックでの普段の診療を行っていることは即ち、世界の医学の発展に貢献できる研究の一部を担い、間接的に文明に貢献ができていることなのだと考えており、密かに誇りに思っています。

 このように三者にとって、win-win-winの関係ができあがっています。

 ここまでメリットばかり書いていますが、もちろん メリットばかりではありません。

  この新しい治療は非常に高額なため多くの方は高額療養費という制度を使うほどの自己負担が必要です。これは大局的にみると日本の社会保障費を圧迫することになるので、日本の財政的には果たして良いことなのかという問題があります。考え方によっては生活に支障をきたしている方が、その悩みから開放されることで労働で生産性を上げることで経済に貢献できればよいのかもしれません。また、これらの治療は新しい治療なため、長期的にはどのような副作用があるかはまだ解明されていない部分もあります。これはどの治療も始まりは同じことがいえることです。

 これらのことを考えても メリットがデメリットを大きく上回るため 治療を継続されている方が多いようです。
 
 医学は日進月歩で進んでいますし、常に我々もアップデートを心がけています。
 従来の治療で十分に コントロールできないアトピー性皮膚炎でお悩みの方は一度ご相談いただければと考えております。

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