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prime videoで『市子』観ましたー。
はじめに
prime videoで独占配信が始まった『市子』鑑賞終了しましたー。昨年公開の映画の中で、町山智弘さんなど名だたる映画評論家の方々が内容的に邦画ナンバーワンの作品と評していた本作。映画館に観に行けず残念に思っていましたが、早くも配信サービスで鑑賞できました。
一応、自分の経験則の中で想像できうる不幸な女性を想定し、映画の内容を予想をしたうえで観てみたのですが、想定を上回る要素がありましたので記録したいと思いました。
個人的な評価
ストーリー A-
脚本 B
構成・演出 B
俳優 A
思想 B+
音楽 B
バランス B
総合 B+
S→人生に深く刻まれる満足
A→大変に感動した
B→よかった
C→個人的にイマイチ
内容のあらすじ(ネタバレなし)
内容的には、川辺市子(杉咲花さん)が長谷川義則(若葉竜也さん)と同棲していて、ある日の夕食の際、義則が市子に婚姻届を見せ求婚したところ、市子は涙を流して喜ぶものの、翌日彼の前から失踪してしまうところから始まります。
市子はなにやら訳アリの雰囲気を漂わせていて、好きな食べ物は?と訊かれれば、味噌汁と答えるような女性でした。味噌汁が好きな理由は「幸せそうな家族の匂いだと感じるから。憧れの匂いだから」と述べました。
義則は行方不明になった市子を探すべく、警察に相談しつつ、自分でも手がかりを求め、これまでの彼女の人生の軌跡を辿っていくことになります。
一体、彼女はどんな事情を抱えた女性なのでしょうか…。
以下、ネタバレありです。
感想(ネタバレあり)
内容的に、『無戸籍』『毒親』『きょうだい児』『ヤングケアラー』『性被害』『殺人』と不幸の連鎖を表現している本作。
まず、市子は母親が離婚した後で生まれた子で、出生届を出されなかったため戸籍がなく、書類上存在しない人間となっています。
無戸籍だと、学校に通えないのは勿論、保険証も作れないので病院にも行けず、銀行口座の開設、就労、結婚、あらゆる社会活動ができなくなります。
しかし、市子には月子という妹がいました。妹は筋ジストロフィーという徐々に筋力が低下していく難病を患っていて、家で寝たきり生活を送っていました。
市子は夜の水商売を営む母親に変わって、妹・月子の世話をしつつ、月子に成りすまして通学する生活をしていました。
市子の母親はなかば売春を生業にしており、市役所の障害福祉課のソーシャルワーカーの男性・小泉とも、月子の件で便宜を図ってもらってるうちに肉体関係になっていました。市子は母親が体を売ってる間、いつも外で時間を潰す日々を送ることになります。
やがて、市子が高校生になると、小泉は市子にも手を出すようになりました。市子は言われるまま体を許すしかありませんでした。
なぜなら、市子は妹・月子の介護に疲れ果て、ある日、月子の呼吸器をはずして殺害してしまいます。その月子の死体の処理を小泉に手伝ってもらったためでした。
妹・月子の介護生活が終わったと思ったら、今度は脅迫されて性加害を受け続ける日々が始まった市子。それにも耐えかねて、ある日、性交渉を始めようとする小泉を衝動的に刺殺してしまいます。
小泉の死体は、市子を好いている高校のクラスメート・北秀和が線路まで運び、自殺を偽装して市子の犯行を隠します。
秀和は、市子を生涯かけて守ると決意を伝えますが、市子は彼の前から姿を消します。今まで月子に成りすます、月子の介護をする、母親の男たちの性処理をする、しか人生の選択肢がなかった市子は、”市子”として自分の人生を生きたいと思っていたのでした。
感想としては、まず母親のせいで無戸籍になり、障碍者の妹の面倒を看つつ、妹に成りすまして生活せざるを得なくなり、その中で性被害を受け、そして殺人犯になるという何重にも不幸が重なっていく話だったので、どうすれば不幸は回避できたのだろうと思案させられました。
正直、母親がちゃんと出生届出してればこんなことになってないのですが、生涯にわたって兄弟姉妹の面倒に追われ、自分の人生の自由と選択肢がなくなる”きょうだい児”の問題、また母親の仕事のせいで性被害を受けるセックスワーカー問題など、重畳的に不幸が押し寄せ、行政のライフラインから漏れてしまう人生の方々について、どのような支援ができるか考えさせられる作品でした。