見出し画像

【中東】宗教と難民

中東とは、日本の外務省によれば15ヶ国あり、東はアフガニスタンやイランから始まり、アラビア半島を回って北はトルコ辺りまで。

中東に関するニュースを見ていて思うのが、あまりにも複雑すぎるということです。理解しようにも多くの要素が絡まっている。もう少し分かりやすく三つくらいに分類して説明できないのか。

そういった考えから、
今回は前回に引き続き第二弾。
中東の、「宗教と難民」について。現在EU圏で分断が起こるきっかけとなった、中東からの難民・移民問題の元となる、宗教による対立と、対立から生じた難民について書いていこうと思います。


イスラム教の基礎情報

まずは中東の宗教の基本的な情報から。
中東には3つの宗教の聖地があり、生まれた順に「ユダヤ教」「キリスト教」「イスラム教」となっています。ローマ帝国時代に、ユダヤ教は帰る土地を失い迫害の対象となっていきます。またその時代にキリスト教が国教になり、キリスト教はヨーロッパの宗教になっていきます。

イスラム教が生まれたのはそれから数百年後。7世紀の初めに預言者である「ムハンマド」によって成立します。一神教であり、唯一絶対の神「アッラー」を信仰しています。その後、中東や北アフリカから、アラブの枠を超えてアジアにも広がっていき、現在およそ20億人の「イスラム教徒=ムスリム」が存在しており、世界三大宗教の1つとなっています。

大きく2つの宗派に分かれており、それぞれ「スンナ派」と「シーア派」という宗派です。簡単に言うと、「スンナ派」は預言者ムハンマドの言行をまとめた「スンナ」というムスリム共同体の規範となる慣行を重視しており、イスラム教徒全体の約9割を占めています。一方で「シーア派」とは、4代目カリフ・アリーとその子孫のみを正当な指導者として認めており、少数派の宗派となっています。

イスラム教には六信五行など、戒律が厳しいイメージがありますが、その本質は、人のおごりを戒めて弱者を助ける、といった所にあると思います。なぜなら、イスラム教では個よりも全体が尊重され、ムスリムは最後の審判の時に天国に行けるよう教えを守り、富めるものは弱者のために喜捨することが求められているからです。例えば、商売で上手くいったらその分喜捨して、逆に自分が失敗して貧しくなれば当然のように喜捨を受ける。助け合うのが当たり前だというシステムになっています。

スンナ派とシーア派の対立

「スンナ派」と「シーア派」の対立は遥か昔から続いていて、現在でも中東諸国内での争いに繋がっています。前章で述べた内容をもう少し詳しく見ていきます。

多数派のスンナ派と少数派のシーア派ですが、どちらも教義上大きな違いはない。では何が違うのかと言えば、指導者の定義である。スンナ派は「カリフ」を指導者とする一方で、シーア派は「イマーム」を指導者とします。「カリフ」とはムハンマドの後継者の意であり、「イマーム」とはその中でも4代目カリフ・アリーとその子孫を指す言葉としてシーア派で使われています。

歴史上スンナ派が常に多数派としてイスラム教全体へ影響を及ぼしており、国の体制と結びつくことが多く、逆にシーア派は反体制派に位置づけられることが多かった。そのため異端というイメージがあるかもしれませんが、どちらもイスラム教として互いを認めており、異端という捉え方は誤りのようです。

ほとんどの中東諸国の政権はスンナ派ですが、イランではシーア派が多数を占めていて政権もシーア派です。隣のイラクでもシーア派が多数で、サダムフセイン政権が崩壊して以降は混乱の中シーア派が政権を担っています。他にシリアでは、アラウィー派のアサド政権があり、アラウィー派はシーア派から派生したとされています。アラウィー派もシーア派に含むとすれば、スンナ派の大国サウジアラビアの上に、シーア派のベルトが形成されているのが現状です。

アラブの春からシリア内戦

シリアからEUやトルコへの大量の難民を生み出すことになったのが、「シリア内戦」でありその契機となったのが「アラブの春」(2011)です。

「アラブの春」(2011)とは、チュニジアの「ジャスミン革命」から始まったアラブ諸国における民主化運動の流れであり、その流れはエジプトやリビア、イエメンなどに広がっていき独裁政権が倒されるに至りました。

シリアにも「アラブの春」(2011)が波及して、シリア国内で多数派のスンナ派を強権支配してきたアラウィー派のアサド政権を打倒する動きが出ます。しかし他のアラブ諸国と異なり、シリアではアサド政権は打倒されず存続。結果、政府軍と反政府軍との内戦が現在も続いています。

アサド政権が打倒されなかった要因として、中国やロシアがアサド政権を支援している一方で、アメリカなどは反政府軍を支援しており、国際社会での足並みが揃わず外からの介入が内戦を激化させた一つの例だと考えます。

シリア内戦による大量の難民の受け入れをどうするのか、EU圏では大きな問題になっており、その後のイスラム過激派によるテロが激化して以降は特に、イスラム教徒に対する差別や排斥を主張する声が高まっているのが現状です。

以上、【中東】宗教と難民、についてでした。
イスラム教とその宗派を知ることで、現在の対立構造が少しでも理解しやすくなれば幸いです。
ありがとうございました!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?