- 運営しているクリエイター
2023年5月の記事一覧
御本拝読「あまからカルテット」柚木麻子
食べ物への敬意
少食で胃・食道が弱いくせに、「食」がテーマの小説が好きで乱読している。が、食べ物が粗末に扱われた時点で、読むのが辛くなってしまう。ミステリーの謎の一つとして、毒が盛られるとか食べて苦しみだすという描写は大丈夫。多分、被害者は気の毒だが食べた瞬間は美味しかっただろうから。
セックスに夢中になって鍋を焦がして料理を捨てた、嫌がらせや見せしめのために食べ物に口をつけずにゴミ箱や床に
御本拝読「くもをさがす」西加奈子
闘病記というより
正直、四半世紀近く闘病記は避けてきた。気持ちが引っ張られて、落ち込んだり引きずったりするからだ。子供の頃から、闘病記や戦争体験記を読むと体調を崩し、それ系のアニメや映画も吐いたり眠れなくなったりするチキンなひよっこメンタル。死そのものへの恐怖よりも、その過程の辛さや痛みを自分の神経に感じるのが嫌だった。
本書は、作家・西加奈子さんの、乳がんの発覚~抗がん剤治療~両乳房・リン
御本拝読「わたしのすきなもの」福岡伸一
文理の壁を超え
福岡伸一先生は、言わずと知れた理系の大家。しかし、文章が面白いというか、エッセイやコラムが本当に読みやすい。理系だとか文系だとか、本来は分ける必要ないのになあ、と福岡先生を見ていると思います。まあ、主に大学受験というシステム上、文系と理系を分けることで便利に管理できるんでしょうけど。
本書は、「婦人之友」に連載されていたコラムをまとめたもの。載っていた媒体の性格上もあるのでし
御本拝読「うしろむき夕食店」冬森灯
さっぱり爽やか
昨今、「おいしい小説」系統の小説はかなり賑わってきています。コージーミステリー、ヒーリング系、時代物etc……。やはり、女性の書き手さんが多いイメージ。そんなおいしい小説たちの中でも、最近読んだ一冊が爽やかで良かったので。
ちょっとしたミステリーを含んではいますが、人は殺されませんし、大きな裏切りや哀しみに遭う物語ではありません。どこにでもいそうな社会人たちが、仕事や人生の岐