【小説】強盗に花束を 第4話【創作大賞2023応募作品】
第4話
明らかにプロである女性強盗に指示に従った僕らは、一箇所に固められて座っていた。
成り行きで、少年強盗とおじさん強盗、僕と銀行員の高木さんが、偶々近くに座っている。
「さて、どうしたもんかなぁ」おじさん強盗が言った。
「どうしたら、って。じっとしててくださいよ」僕が小声で言った。
「せやけど、同業者やで?倒さなあかんやろ」おじさん強盗が言った。
僕は耳を疑った。
「倒す?どうして?」
「兄ちゃんにはまだ分からんかもしれんけど、男には退かれへんときがあるんや」おじさん強盗が言った。
「俺もやるよ」少年強盗が言った。
バカばっかりか。
僕はうんざりして少年強盗を見た。
「お、ええやん。自分も俺の気持ち分かるか?」おじさん強盗が言った。
「いいや。俺はここで有能さをアピールして仲間に入れてもらう」少年強盗が言った。
仲間に入れてもらう?
この強盗達の?
「でも、犯罪者ですよ?」僕が言った。厳密にも少年強盗も犯罪者だけど、次元が違う。この強盗集団はプロだ。
「このおっさんと一緒に倒して、ナイフを突きつけて、仲間にしろと迫る」少年が言った。
やはりバカだ。
バカでないと銀行強盗なんて画策しないとは思うけど。
本当に頭が悪い。
「ええやんええやん。理由はなんでもええ。ここは一時休戦、そんで共闘や」おじさん強盗が少年強盗に言う。
「やめてくださいよ。じっとしてたらいいんです。2人が暴れたら僕らまで危害が及ぶかもしれないじゃないですか。それに田代支店長が人質になってるんですよ。田代さん、確か心臓に持病があるとかないとか。銃なんて突きつけられたらそれだけで死んじゃいますよ」僕が一生懸命止めた。
だけど二人の強盗はもう決心したとばかりに作戦について話しあっていた。
本当にバカだ。
「じゃあ、私も手伝いますね」突然高木さんが言った。
「えっ」僕が驚き声をあげる。
どうして?
高木さんも銀行強盗の仲間に入りたかったのか?
「実はね、平山くん。その田代支店長が今超絶ピンチなんだ」高木さんが言った。
「何がですか?」僕が尋ねる。
「あの人さ、警察呼んだら田代支店長殺すって言ってたよね」
「私通報したの」高木さんが言う。
「え?」僕が言った。
「いつ?」
一体どのタイミングだ?
あの人たちが強盗だと名乗ってすぐ僕らは移動させられて、スマホの電源を切らされた。
通報するタイミングなんてなかったはずだ。
「だからね、私、あの人たちが来る前に平山くんが強盗がきたって言ってたから警察に通報したんだよ」高木さんが言った。
第5話に続く
第5話
第1話