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人(お客さま)を引きつけるものとは何であるかを、従来型で成功してきたビジネスパーソンに教えてくれる本

ひとこと書評&感想

 外資系教育会社の営業として世界142か国中2位の成績を収め、現在は独立し、コンサルタントとして活躍している著者による、ファンベースな営業の指南本。著書にベストセラーも多数されている著者だが、その趣は変化しつつあるようだ。
 「おわりに」では、「営業コンサルタント」という長年使ってきた肩書を捨てるとしている。ファンづくりが大事、というこの数年のメッセージは、ノルマ達成を掲げる従来のクライアント企業にはすんなり入っていかなかった模様だ。まあ、そういう企業が多いのも無理はないだろう。
 特に単一事業で売上や利益を伸ばして成長してきた企業においては、「売らなくていい」と従業員にメッセージを発することは難しいと感じる。そのまま企業のブレーキになりかねないから。
 しかし一方で、著者の言うように、お客さまを大事にできない企業は、今後の存続がどんどん危うくなっていくことも間違いないと感じている。そのフォーカス先が「お客さま」でなく「ファン」なのかという点を考えたくて本書を手に取った。結果、私は「お客さま」だと思った。著者がこの本で言っているのは「ファンを大事に」という言葉だが、ファンになる前の一見さんは大事じゃないなどとは言っていない。著者のファンミーティングでの振る舞いは、一見さんをもファンにするような振る舞いである。「ファンを大事にしましょう」と従業員に言うと、ファン以外の顧客は大事じゃないと勘違いする人も残念ながら出るため、私は今後も「お客さまを大事に」という言葉で語りつつ、枠組みとしてはファンマーケティングやファンミーティングをぜひ取り入れようと思う。
 さとなおさんこと佐藤尚之氏の本と併せて読むと、相互に理解を深めてくれる。本書の方は表現が柔らかすぎて避けたくなる方もいるかもしれないが、そうした方にこそ一読いただきたい本である。ふだん見えていないことが書かれている。

自分用乱文メモ

Chapter1 「ファンに愛される」売り方とは?

・買ってくれる人が減っていく厳しい時代。「売れる」から「選ばれる」に変化する。であれば、「売る」から「つながり」に発想転換しないと売れない。一人のお客さまが何度も買ってくれ、一人のお客さまが何人もの人につなげてくださるというシステムを作る。
・「売ったら終わり」から「買ってもらってからが始まり」へ。
 かつ、「売りのためのフォロー」(レコメンドなど)よりも「関係構築のフォロー」が重要。
・著者独特の概念(表現)、「未来マップ」(p.40~)

 一冊の本を購入したり、コンビニでお菓子を買ったりするときにいちいちMAPは必要ないとは思いますが、ファンをつくりたいのなら、たとえば本を買うときに「こうやって読むと楽しいよ」「こんな仲間が読書会やってます」「著者の講演会があります」などの”ガイド”があれば継続して購入してくださる可能性は生まれます。お菓子だって「こんな食べ方があるよ」「こんな人たちが商品を作っています」「みんなの食べるアイデア募集」などの”ガイド”があればやっぱりファンになって、また購入してくださる可能性は広がります。
 つまりこの”ガイド”こそが「未来MAP」なのです。
(中略)
 実際に地図のような図をつくってお客さまに見せ、「今日はここの地点からです」とスゴロクのようなイメージで説明するととても喜ばれます。
営業「〇〇さまは今ここにいます。でも3カ月後はここにいて、こんなふうになっています。1カ月後くらいだとこの程度の伸びや効果を感じますよ」
 などと説明してあげるのです。自分の未来をイメージできると途中の不安も減りますし、何よりもわくわくが増してきます。スポーツジムやエステサロンのような、効果が目に見えやすい業界だけでなく、保険などの金融商品でも。車や住宅などではトークのつくり方は違ってきますが、「未来MAP」はどんな業界でもファンづくりには必要です。

ファンに愛され、売れ続ける秘訣 / 和田裕美著(かんき出版,2022年)p.40-41

Chapter2 佐藤尚之 × 和田裕美

・ファンベースとはファンの人たちを何よりも大切にしてより幸せになってもらう関係を築きながら、中長期的に売り上げや価値を上げていくという考え方。さとなお氏が定義するファンは、企業やブランド、商品が大切にしている価値を指示してくれている方たちを指す。
・ファンベースをする理由❶パレートの法則 ❷時代(人口急減、ウルトラ高齢社会、若者の物欲減少と独身者の増加、超成熟市場による消費意欲減退、情報過多と二極化)、❸類友(価値観の類似する友人から熱烈に紹介されたら、興味が湧く)
・ファンを大事にする。みんなに好かれようとするとみんなを失う。
・ファンミーティングでファンを知ることが第一歩
 どこに共感してくれているかが見えてくる。これを知らないままだとファンが求めていない商品やサービスを提供してしまったかも。(どこがファンに好かれているのかわかっていない企業はとても多い) かつ、全体アンケートではダメで、少数であるファンに聴かないと意味がない。
・ファンミーティングのポイントは、濃いファンにいいところや情緒価値を聞くこと。改善点や機能価値を聞いても何にもならない
・アンケートは本音が出にくい。すぐに思い出せないことも多い。ファンミーティングだと、他の人の話から思い出せる。

Chapter3 これからの売り方10のルール

1.お客さまを大事にするという意味を考える
2.「売ろう」と思わないほうがいいプレゼンができる
3.「幸せになって欲しい」が価値基準のプレゼントは?
  →相手ごとで、未来に意識を向けた感情
  →ファンづくりは売ることではなくお客さまが幸せになることをゴール設定とした”寄り添い”
4.「売らない」ことが「売れていく」に変わる
5.今までのようなセールス用語「刈りとる」なんて使わない
  →お客さまが聞いていても使える言葉を使う
6.「売らない」という言葉がパワーワードになる
7.他社(他者)を勧めることが大事
  →「まだ早いのでもうちょっと後で買ってください」も
8.一番大切なのは相手の心、自分の数字は相手に関係ない
9.紹介やリピートが中心の共感型セールス
10.数字よりもパートナーシップ
  「お客さまを知れば知るほど思い入れが増してくる。そうなるとお客さまも応えてくれる」

Chapter4 ファンのためにできること

・あなたの存在が私の役に立っています、と伝わっているか?
 「自己有用感」
・ファンが求めるものは何?
 アメリカの調査会社CEB社の調査によると、大事なのはヒアリングではなく、お客さまが全く気付かない考え方や課題に関する会話。推測スキルが必要ということ。

Chapter5 ファンを育むムービートーク

※ムービートークは著者の造語。映像のイメージが沸き起こるように伝えること
・ファンづくりのために、売る側が圧倒的な知識と知見を持っていることが大前提
さまざまな立場・場面でのムービートーク例と解説あり。

Chapter6 ファンを育むためにできること

・静かなファンを見過ごさない
 手を挙げる人だけが意見や感想を持っているわけではない。すべての人が「ここに自分の居場所がある」と思えるように。
・ファンが求めるのは「想定外なもの」
 例えば著者のグッズ販売。ノベルティーもたくさん用意している
・ファンにならない人もいるが、その人にとって有用な情報をお知らせし続ける
・ファンは旅して戻ってくる

Chapter7 ファンミーティングをやってみよう

何かを仕掛けて売るという考え方である限りマーケティングに未来はないと思っています。もっと誠実なマーケティングに変わっていかないといけない。仕掛けるというのはもう古くて、その人の熱量が周りに自然と広がっていくのを目指すべきです。(さとなおさん)

ファンに愛され、売れ続ける秘訣 / 和田裕美著(かんき出版,2022年)p.201

・なんで売れちゃったのか?共感ポイントを知る
 →ファンミーティングで知る。
  著者の場合は人なので、弱さや人間らしさがファンの共感ポイントになっていた。つまり、ファンは類友。


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