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東京散歩 大円寺から目黒川 2024.4.3
今年の春はいつもとちょっと違う。花の季節が遅い。花と言えば桜。桜が遅いのだ。ようやく東京に開花宣言が出たのが3月29日。例年より15日ばかり遅い。満開になるのはどうやら今週末かな。
今日の気温が上がればもう少し華やかに咲くのだろうけど、残念ながら生憎の雨。気温も上がらない。今年は一斉にパッと咲いてパッと散る花が見られるのだろうから。三分咲きの桜を眺めながらその光景を想像して楽しむことにした。今日は素人モデルさんにも来てもらったので撮影が楽しみ。
目黒駅を11時に出発。先ずは大圓寺でお参りを済ませてから花見に行く。目黒は祐天寺や目黒不動尊など有名な神社仏閣が多いけれど、この大圓寺は狭いながらも見どころが多く楽しい。楽しいなどどアミューズメントスポットのように言ってしまうと不遜だけれど、いろいろ学べて面白いのだ。地形からも谷戸の途中にあるようなのでなんか不思議スポットでパワーも感じる。
目黒駅の西口を出て、すぐ左手の歩道橋を渡ると、角のビルの裏手に目黒川に下る細くて急な坂がある。この行人坂は、かつて目黒不動参詣の道としてにぎわった道らしい。
目黒駅から行人坂(ぎょうにんざか)を少し下ると大円寺、さらに下れば雅叙園からの目黒川。
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あっという間に大円寺に到着。大きな門がお出迎え。
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天台宗大円寺は、江戸の初期、元和年間(1615年から1624年)に湯殿山の行人、大海法印が建てた大日如来堂に始まると伝えられている。山門を入るとまず目につくのが、境内左手のがけに沿い幾段にも並ぶ石仏群である。初めてここを訪れる人はその数の多さに目を見張ることだろう。釈迦三尊像、五百羅漢像などから成る520体ほどの石仏像は、昭和45年、都有形文化財に指定されている。
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社務所に300円を納めると金箔をいただけるので、薬師如来さまに張ってあげることができます。
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お七火事
天和元(1681)年2月の大火で焼け出された八百屋太郎兵衛一家は、駒込の円乗寺前に仮小屋を建て、住んでいました。
娘のお七は気が回る娘で円乗寺にお使いに行くうちに、小姓の吉三に恋をしてしまいました。人目を忍び二人の仲を深めていきます。しかしながら、いつの時代も恋は簡単に成就しないもの。太郎兵衛の新居が完成すると門前の仮住いを引き払わなければならなくなりました。泣く泣く分かれたお七。
しかし、簡単に諦められないのも恋。そこに現れたのが、ならず者。お七の耳にささやきました。「それほどお小姓が恋しいのなら、もう一度、家が火事になれば円乗寺に帰れるだろう」
恋は盲目、その話を聞いたお七は居てもたってもいられず、後先も考えられずに明けて間もない1月のある日、自分の家に火をつけ、円乗寺へと駆け出したのです。
「火事と喧嘩は江戸の華」なんて言いますが、とんでもない。当時は「失火者斬罪令」(延宝6年)がありました。ましてや放火などもってのほか、市中引回しの上、死罪とされていました。お七は天和3(1683)年3月29日、鈴ヶ森で火焙りの刑に処せられたのです。 嗚呼、この時のお七は17歳。無残な話です。
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西運の念仏行
この寺はまた、八百屋お七の情人吉三ゆかりの寺でもある。
吉三は出家して西運を名乗り、大円寺の下(今の雅叙園の一部)にあった明王院に身を寄せたという。西運は明王院境内に念仏堂を建立するための勧進とお七の菩提(ぼだい)を弔うために、目黒不動と浅草観音に1万日日参の悲願を立てた。往復10里の道を、雨の日も風の日も、首から下げた鉦(しょう)をたたき、念仏を唱えながら日参したのである。かくして27年後に明王院境内に念仏堂が建立された。しかし、明王院は明治初めごろ廃寺になったので、明王院の仏像などは、隣りの大円寺に移された。
西運に深い関心を持っていた大円寺の当時の住職であった福田実衍(じつえん)師は、昭和18年、同寺に念仏堂を再建した際、万葉集出画撰を描いた大亦観風画伯に「お七吉三縁起絵巻」を描いてもらった。その一部、木枯らしが吹きすさぶなかを、念仏鉦を力一杯たたき、念仏を唱えながら、日参する西運の姿を刻んだ碑が境内に立っている。
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大火犠牲者供養の羅漢像
振袖火事、車町火事と並んで江戸三大火のひとつである明和9年(1772年)の行人坂火事は、この大円寺が火元といわれている。同寺から出た火は、折からの強風により、たちまち白金から神田、湯島、下谷、浅草までを焼き尽くす大火となった。特に城中のやぐらまでも延焼したので、大円寺は以後76年間も再建を許されなかった。
石仏群はこの大火の犠牲者供養のために、石工が50年という歳月をかけて完成したといわれている。一体一体をよく見ると穏やかにほほ笑むもの、ほおづえをついて考え込んでいるもの、泣き出しそうなものと、その表情は実にさまざまで、個性あふれる石仏群を見ていると親しみがわいてくる。
この石仏群の手前、本堂横に顔や手が溶けたような、一体の異様な地蔵が立っている。この地蔵は「とろけ地蔵」と呼ばれ、江戸時代に漁師が海から引き上げたもので、昔から悩み事をとろけさせてくれる、ありがたいお地蔵様として信仰されてきたとか。
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たっぷり、お参りをしました。
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さあ、目黒川の桜はどうかな?
目黒川から百段階段へ続く