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大晦日『PERFECT DAYS』 を見た幸せ、『パリ・テキサス』からもう40年か
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大晦日に『PERFECT DAYS』を観た。これは良かった。『パリ・テキサス』が1984年の作品。それから、約40年。久しぶりに巡り合った気がした。トラヴィスと平山はどこかでつながってる。
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20代の頃に一緒に『パリ・テキサス』を観たA女は、映画館を出ると「なんで、せっかく巡り合ったのにトラヴィスは、また出ていっちゃうの」と眉をしかめた。ちょっと、語気が強かったので、これ以上機嫌が悪くなるのは勘弁、と「そうだね」とかわした。トラヴィスの旅の途中でハイウェイに向かって叫ぶ男が出てくる。気が触れた彼の叫びは、どんなに声を張り上げても目も見えない壁に跳ね返される届かない声。その時は、眉の潜め方に気をされて、A女の質問に答られなかったけれど、道を求める事に捉えられた彼は元の場所に戻ることができなかったのだと思う。家族を持つということは、彼にとっては誤りであった。あくまでも彼にとっては。
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『PERFECT DAYS』の平山は、ひとりで暮らしている。その生活の佇まいは、庵でひっそりと暮らす一介の僧のよう。日常生活には自分で定めた決まりがあり、同じような日を淡々と暮らしている。仕事は、トイレの清掃。趣味は木もれ陽の写真を撮ること。しかし、繰り返しの日常とて同じ日はない。毎日見る光と影も、ひとつとして同じものはない。晩年のモネが、他人が見ればなんの変化も感じない風景を繰り返し描いた事を思い出す。モネは一瞬の光と影が織りなす景色が何一つ同じものはないと感じ、それを大切に描き留めていたよう。世界は常に変化している。一瞬一瞬に喜びを見出す平山の生き方に何を感じるかを考える。
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晩年は、伊那に暮らしていた加島祥造氏がその著書『求めない』で語っている。
「求めない――すると 心が広くなる」「求めない――すると恐怖感が消えてゆく」「求めない――するとひととの調和が起こる」「求めない――すると待つことを知るようになる」……。
「求めない――すると……」
平山に出会い、トラビスを思い出し、大晦日に「幸せ」ということを存分に考える事ができ、とても良い映画だった。
これも一期一会か。