「誰にも怪我をさせたくない」日夜葛藤する介護士の心も軽くなる話
私は元介護士です。
これまでメンタルを強化してきたことを、介護の現場に戻ったとしたら、どのように活かせるのかを考えてみました。
介護の業界の人材不足、低賃金、重労働が叫ばれています。実際、充足している現場の方が少ないという体感でした。面接を受ければ全部受かるレベルです。
それでもなぜ働くのか?もちろん人によって理由は様々ですが、やりがいが大きいのだと思います。
ありがとうの一言が、大きな活力になり心が救われますよね。
巷で介護士は誰にでもできる、底辺の仕事だと揶揄されることがありますが、全く逆だと思っています。
誰にでもできる仕事ではありません。
忍耐強さや、冷静な判断が常に求められ、プライドを持った介護士も多くいるのではないでしょうか?
もちろん介護職に限らず、人と関わることで良いことも良くないこともあるのは普通ですが、具体的にどんなシーンでこれまで学んだことが活かせるのでしょうか?
介護の現場ではどんな葛藤があるのかをシーンを想定して考えてみたいと思います。
ケース「一人の夜勤中の対応」
介護士は1名。利用者は20名だとします。
現在Aさんの夜間のオムツ交換の介助中です。
Bさんのセンサーが反応しました。
その方は日中に便秘対応を行っており日中のうちに反応がなかった方です。きっと一人でお手洗いに行こうとされているのだと予測されます。早く対応しなければ大惨事です(既に大惨事かも)。
そしてCさんのセンサーが反応しました。
この方は歩行介助が必要でベッドからの立ち上がりも転倒の危険があります。しかし自分が一人で立てない歩けないとは思っておられません。
この時の判断は介護士に委ねられます。
介護士によって優先順位も価値観も違います。全員は一斉にケアできないのです。介護度や意思疎通度によっても違ってきます。
一人夜勤なのでもちろん助けを求める人もいません。
このような時に葛藤が生まれます。誰一人として怪我をしてほしくない、急いで駆けつけてあげたい。でも体は一つしかありません。「ちょっと待ってください」は通用しません。
介護士は葛藤しています。
排泄介助は途中、便秘対応した方はおそらく大惨事、転倒しては骨折も免れない。全部重要だけど転倒を防ぐことが一番だ!と考えるパターンが多いのではと考えられます。優先順位を決められないと、全部が大惨事になって、後処理もいつまでも時間が掛かります。
…はたして、その判断は正解なのでしょうか?
自分が正しいと思って判断したことが他の人からしてみたら、違うこともあります。
このようなシチュエーションは介護の現場に限らず、ビジネスをしていく上でも、育児でも様々な場面で形を変えてあるのではないでしょうか?
同時多発案件です。
ではこれまでメンタルを強化してきて、この心の葛藤をどのように乗り越えていけるのか?
このような時、圧倒的にストレスに強いパターンの介護士がいます。
それは自分の中に絶対的なルールが確立している人です。つまり、自分が何を大切にし、何を優先していくかを自分で選択している人です。
このような人は、たとえその優先順位が他の人と違ったとしても、自分が正しいと思っているので心が微動だにしません。そして捨てる選択肢もまた決まっています。
(また自分で選択するって言ってますね。それがマインドを強化していくのに重要だと気がついたからです。)
逆に自分の中に絶対的なルールが確立していない場合の人は、優先順位が決められず、全員を救えず、全部がうまくいかず、上司が叱責しようにも慰めようにも結局自分を責めたり落ち込んだりします。なんとなく想像できませんか?
そして次に活かせることは、自分を俯瞰するというスキルです。
自分が追い込まれてしまった時、動揺した気持ちに振り回されずに、少なからず冷静になれるのではないでしょうか?どうしようどうしようでは現状を打破できません。
同時多発案件に自分は焦っているな。AさんもBさんもCさんもみんな救いたいと思っている。誰も怪我させたくないと思っている。怪我をさせてしまっては救急の対応まで入ってもっと大変になると焦っている。
自分を俯瞰して見ることで、どうしようどうしようという状態より、冷静な判断ができると思いませんか?
最後に活かせることは、セルフコンパッションです。
セルフコンパッションでは、自分に優しくする・共通の人間性・マインドフルネスとあります。まずはマインドフルネスを使ってみます。この状況を判断を加えずにありのままに受け入れる。俯瞰すると似ていますね。同時多発案件だね。焦ってるんだね。予測される大惨事に既にストレスを感じている。
そして共通の人間性。誰でも同じ状況なら焦るさ。自分一人じゃない。きっとみんなも同じように焦る。3名同時にケアできる人なんてどこにもいない。こう思うことで、ストレスが軽減され、少なからず冷静な判断ができます。
そして自分に優しくする。自分は頑張ってるね。大変な状況の中で最善を尽くそうと努力して偉いね。自分が直面する苦痛や恐怖や焦りを、誰かに分かってもらわなくても、自分が自分に一番優しくあれるように。
このセルフコンパッションは対応後の自分へも活かせるのかもしれません。今日の夜勤は大変だったね。同時多発案件に一時は焦ったけど、落ち着いて対処できた。同時にはケアできないし、他の介護士だってみんな同じだよね。良く頑張った〜。ゆっくり休もう。
では、これらが出来なかった場合を大袈裟に表現してみます。
自分は優先順位も考えられなかった。結局大惨事になってしまった。早番さんの仕事も増えてしまった。あぁ自分はダメな介護士だ。たくさん焦ったからストレスも凄い。とても疲れた。自分がダメな介護士と侮辱されているのではないだろうか。この仕事は向いていないんじゃないだろうか。
極端に表現すると同じ同時多発案件をこなしてもこんなに差があるのではと考えました。もちろん介護士に限りません。
重要な案件が同時に迫ることがあるかもしれません。優先順位に葛藤するかもしれません。自分とは違う優先順位を持つ人のことを考えて、ストレスに感じることもあるかもしれません。全部をこなせない自分を責めることもあるかもしれません。
そんな時に「自分で選択する・俯瞰する・セルフコンパッション」この3つがメンタルを強化して感じた、仕事の中で活かせるのではと思ったスキルです。
頭で理解しても、実践することって難しいですよね。
それも1回やったからってすぐに自分のスキルとして習得できるものではありません。私はまだまだこれからです。毎日毎日意識するので、すこ〜しずつ変化が起きているように感じてきています。
すこ〜しずつです。
自分で選択するに関してある程度のシチュエーションが想定できる場合は、事前にこういうときはこうすると自分で選択しておくと、いざという時に悩むことも減りそうですよね!
個人的な話ですが、大変な状況をこなしフラットにして引き継いで、利用者さんとゲラゲラ笑って時間ピッタリに退勤するっていう攻略ゲームみたいに楽しんでました。
楽しむって大事ですよね。
本日もお読みいただきまして
ありがとうございました。