春に沈む


人が沈む
沈むのに言葉はいらない
臭い肉体が一欠片あれば良い
沈む先が行き先
水底ならばそれだけで幸せなことだ
ただ沈め
美しい時代もある
酷い時代もある
すべては時代が理解してくれる
吉田屋の水羊羹は食べたかい
あれは美味しいよ
身体の一番遠い所まで甘さが行き渡る
生きている気持ちになる
それなのに人はまだ
命の重さすら正確に量れない
もうすっかり一面の春だ
乗り物置場に新しい乗り物が置かれていく
固く握ったそれが希望ならば
決して手放してはいけない
どんなに小さくても
いつか免罪符になるのだから
言葉など無くても
饒舌にただ沈め
沈もう

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