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【読書感想文】羊をめぐる冒険/村上春樹
村上春樹の初期三部作の最後を締めくくる作品で、前2作品に比べると倍以上の文量がある。かなり読みごたえがあったし、読み終えた後の虚脱感は凄まじかった。
講義中に隠れて読み進めて、講義の途中で読了した。読んでいる間は講義の内容なんか全く頭に入らないが、読み終わってからも講義の内容が頭に全然入ってこなかった。教授の話がつまらないせいもあるし、この作品の読後感の巨大さのせいでもある。
かつて、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読み終えた時も、同じような気持ちになった。つまり、これですべて終わってしまったという、途方もない脱力感。胸の中が空っぽになって、教室の中のたった1気圧で肺がぺしゃんこになってしまいそうだった。
疑問は尽きない。あれはどういう意味だったのだろう?あれは何だったのだろう?あいつの正体は何だったのだろう?
でもそんな魔訶不思議を通り抜けてしまった後には、ただ「僕」の乾いた人生があるだけだ。「僕」の青春は終わった。今度こそ終わってしまった。数えきれないほどの何かを、その両手からボロボロとこぼして、「僕」は大人の歳になってしまった。
「僕」はこれからどうやって生きていくのだろう。それは分からない。でも、「僕」なら生きていけるんじゃないかな、と、ちょっぴり思った。少しだけ追い風が吹いていたから。
私もまた歩かなければならない。青春はいつ始まりどこへ行くのか。そしていつ終わるのか。私はまだ青春の只中にいるけれど、もう随分いろいろなものを「透明な過去の駅」に落としてきてしまったような気がする。「遺失物係」の前に立ったら、やはり私も悲しくなるのだろうか。でも、駅の構内を吹き抜ける生暖かい風もやはり「風」なのだ。それを追い風にできるかどうかは、私が過去の方を向くか、それとも未来の方を向くかで決まってくるのかもしれない。
でも「ときには昔の話を」……なんて、それは遠い未来の楽しみにとっておきたい。だからジェイには変わらずバーを続けてほしいと思う。
当分の間は、村上春樹は読むまい。