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春は遠き夢の果てに

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かつて存在したという、夢のように美しい梅林を求めて、美佳はその町を訪れる…。 花々に彩られた京都を舞台に織りなされる、不器用で優しい人々の物語。
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2019年3月の記事一覧

『春は遠き夢の果てに』第二部、アップ開始いたします

『春は遠き夢の果てに』第二部、アップ開始いたします。 今回は一挙公開はやめて、毎日一章ず…

春は遠き夢の果てに (一)

    第二部 春は遠き夢の果てに      一  疎水沿いに植えられた桜並木の下を、優…

春は遠き夢の果てに (二)

     二 「それにしてもさあ、ゆきぃ、いきなり人に飛びかかるクセ、たいがいにせんとあ…

春は遠き夢の果てに (三)

     三  木製のベンチに腰かけて、小川の流れを見るともなく見下ろしている。  少し…

春は遠き夢の果てに (四)

    四 「初めて逢った時のことな、こうも言うててん『ゆきちゃん、ちょうちょのおにいち…

春は遠き夢の果てに (五)

     五  すれ違い困難な道幅が続き、合っているのか不安になるくらい、長くて薄暗い峠…

春は遠き夢の果てに (六)

     六  萱葺きの母屋の向かって右側、少し離れた場所に、木造の平屋が存在する。なんとなく気になって眺めていると、「長期滞在者」用に建て増ししたものであると、美佳が教えてくれた。  間口の広い母屋の玄関に入ると、土、木材、藁などが入り混じったような、甘く胸をくすぐる懐かしい香りに加えて、微かに梅花の匂いを感じたように思えた。  夢見るような心地で、左手の上がり框(かまち)から入室する。思っていたより中は広い。墨書の山水画が描かれた襖は開かれていて、田の字型になっている間

春は遠き夢の果てに (七)

     七  やわからい微笑みをうかべたまま、静枝は袱紗を受け取ると、両手で包み込んで…

春は遠き夢の果てに (八)

     八 「じゃ、優希のこと、よろしくね。ちょっと時間かかっちゃうかも知れないけど」…

春は遠き夢の果てに (九)

     九  レナちゃんのことを話すには、まずおばあちゃんがどんなことをしてたのか、聞…

春は遠き夢の果てに (十)

     十  次にレナちゃんに会ったのは、三ヵ月後の年末のこと。 「おかえり」って、お…