春は遠き夢の果てに 逢谷絶勝(七)
七
天満宮からは車に乗って移動。旧家が多い家並を抜けて、田んぼわきの小道を進み、公園横から竹やぶに分け入った辺りで車は止まる。
「いくつかルートはあるんですけれど、ここからが一番登りやすいんで」車を降りながら健吾が言う。
「昔の観光ルートとしては、今の梅祭りの会場辺りから、山づたいに天山に至る道もあったみたいなんですけどね」
「あ、お地蔵さま!」声を上げると、静枝が道端の小さな祠にてくてく歩み寄る。
「このお地蔵さま、覚えてます。ここいらの人は、お山に登る前にご