「夢中に打ち込めたんだ」という記憶
「そんな安易に『バカ』『バカ』言いなさんなよ」
と腹が立ったんですよね。
夏にこんな記事を読みました。
ここでは沖縄・興南高校の野球部の我喜屋優監督が、近年増えてきている「スポーツに特化した」高校の『学校としての在り方』について問題提起をしています。
我喜屋さんの「朝から野球しかしていない高校生の将来は誰が保証するのでしょうか?」という訴えは彼が学校経営者でもあるだけに重みがありますし、この意見に賛同する方がたくさんいるのもとても理解出来ます。
ただ、この記事に対して
「よくぞ言ってくれた。こうやっていたずらにそれしか出来ない『スポーツバカ』や『野球バカ』を次々と生み出してゆくのは良くない」
みたいなコメントをされている方々もいて、それにはかなり違和感を覚えたんですよね。
おっしゃりたいことはわかります。
でも、そこには「その学校には一生懸命スポーツに取り組んでいる生徒がいる」という『大事な視点』が抜け落ちている気がします。
前述のような発言は本人がそう意図しなくとも『刃』となり、その矛先は生徒たちにまで届くのでは?と危惧します。
それは絶対に避けなければいけないことですよね。
で、肝心なスポーツ高の生徒さんたち。
果たして、本当にそれしか出来ない『バカ』なんですかね?
僕は違うと思います。
この動画をご覧ください。
インタビューを受けているのは、先月末に行われたプロ野球ドラフト会議で埼玉西武ライオンズから6位指名を受けた沖縄にあるエナジックスポーツ高3年生(1期生)の龍山暖捕手です。
どうですか?
この学校は「朝から野球しかしていない」わけではなさそうですね。
そして龍山君。実にしゃんとしていて、意志を持ち『自分の言葉』で高校生活のお話していませんか?
僕が龍山君と同い年の時にこのようなインタビューをされたら、彼のようには絶対に答えられない自信があります(笑)。
「僕と彼の違いはなんだろう?」と考えた時に、龍山君にはやっぱり
「僕はこの学校で野球に打ち込めたんだ」
という自信がある分、僕より「しゃんとして」るんだと思うんです。
高3当時の僕は漫然と
「適当に勉強して受かりそうな大学に行けば、それなりの就職が出来るのかなあ?」
程度のことを考えていたくらいでしたから。
彼に限らず、今の若い子たちは賢いですよ。
我々の時代よりも確実に進化していて、「夢中になって打ち込めるもの(得意分野)」を見付ける力に長けている。
そして与えられた環境の中で自主的に「何を学びとっていくのか」も、我々よりもわかっている。
そんな風に感じます。
そういったことをふまえて、私個人では『スポーツに特化した学校』も若者の夢への道筋として「あり」だと考えます。
もちろん我喜屋さんもおっしゃるように、教育の観点からその『特化のし具合』には限度を設けないと、ですけど・・・。
その上で、そういった学校を選んだ若者たちの選択は信じてあげて欲しいんです。
彼らは『バカ』ではなく、「バカになれるものを若くして見付けた」人たちなんですから。
僕なんかはそれがなかったから、彼らが本当に羨ましいです。
たとえ卒業後にスポーツとは関わりのない進路に進むことになる生徒さんがいたとしても、「僕(私)は夢中に打ち込めたんだ」という記憶は、彼らのその後の人生における大きな後ろ楯になってくれるはずです。
だから彼らは、その内情も知らずに上っ面だけで前述のような心ない言葉を浴びせてくる大人に対しては「夢中になれるものを見付けられなかった人の戯言だ」くらいに捉えてくれればいいと思います。
「バカになれるものがあるしあわせ」を目一杯感じながら、引き続き邁進してください。
そして我々大人は、そういったスポーツ校が私利私欲に走り出し若者を食い物にしないよう注視しつつ、賢い彼らの夢をそっと後押ししてあげるのが役割なのではと思っています。
それにしても龍山君。ディフェンスタイプの素晴らしいキャッチャーなので、密かに「我が日本ハムが指名してくれないかなあ」と期待していたんです。
ちょっぴり残念ですが、ライオンズは捕手が手薄でチャンスの多いチームなので、彼にとっては良かったと思います。
今回のドラフト指名、おめでとうございます。応援してます💪