「中のママ」にお願いされたよ

僕、お願いされたんです😊


ママと付き合ってから半年から1年くらいまでのお話です。

僕は、当時十条に住んでいた彼女のアパートに仕事が終わったあとに足繁く通っていました。

食事をし、お風呂に入り、ラジオを聴き。

テレビのないママの家で『友達カップル』のおしゃべりな2人は途切れること無く、ずっ~とお話をしていました。

それはお布団に入ってからも続き、夜も更け、2人がしゃべり疲れるのが大体午前3時過ぎ。

そこからもちょこちょこと話をしながら、結局寝るのは午前4時くらい。

そこから2時間くらい寝て6時に起き、ラジオを聴きながら食事をして、7時にはお仕事へ。

その繰り返しでしたが、「楽しいが過ぎた」ので疲れることは全然ありませんでした。

そんな僕たち夫婦の恋人時代の大切な思い出なんですが、そこにはたまに『3人のゲスト』が現れたんです。 

今回はその『ゲスト』ついてのお話をさせていただきます。


その『3人のゲスト』の名は、

ヤダヤスヨ
ヤダヤダヨ
ヤダアキコ

さんの恐らくは3姉妹。なんかお一人、どこかで聞いたような名前の方がいますね(笑)。

『彼女たち』が現れるのは、大体僕たち2人がいよいよ寝始めようかという午前4時頃。

僕に腕枕されウトウトし始めたママが突然『子ども言葉』になり、「ねえねえ、お兄ちゃん」と僕に語り掛けてくるのが彼女らの『登場』の合図でした。

『ヤダ三姉妹』の中の誰が現れるかは、まったくのランダム。「誰が何を話す」のかも、法則性はありませんでした。

『ヤダ』さんは大切にしていたグローブを親に許可なく捨てられたこと等々、ママが幼少期に「イヤだったこと」や「悲しかったこと」を中心に、私にたくさんのお話をしてくれました。

僕はそれを最初のうちは「ママのおふざけ」と思っていましたが、起きがけに何度か彼女にそのことを尋ねても「あまり覚えていない」とのこと。

そこで「何でだろう?」と考えてみた僕でしたが、ふとある言葉が頭に浮かんできました。

「ふむふむ。もしかしてこれが『インナーチャイルド』ってやつかな?」

ママからはそれまでに何度か「お母さんとの関係での悩み」を聞いていました。

「そっかあ。ママが小さな頃に消化しきれずにいたお母さんへの思いが、こういった形で今吹き出しているのかもしれないなあ」 

そんな風に、僕は解釈しました。

と同時に、ママが意識的か無意識にかまではわかりませんが、僕を頼り、自分の『内側』のことまでを預けてくれたことに大きな喜びを感じました。

そしてもともとそのつもりでしたが、この出来事がさらに僕の背中を押し「ずっとこの人を守っていきたい」とママにプロポーズをし、OKをもらいました。


そこから間もないある日のこと。

例によって僕はママのアパートに泊まり、午前4時頃にママを腕枕していると、そこにヤダヤスヨさんが現れました。

「ねえねえ、お兄ちゃ~ん。結婚が決まったんだってね~」

「うん」

「Aちゃん(ママ)がお兄ちゃんのこと『とっ~ても優しいんだ』って言ってたよ~」

「そっかあ。嬉しいなあ」

「あのねえ」

「うん」

「Aちゃんは悲しいことがいっ~ぱいあったんだけど、お兄ちゃんのおかげでそれがいっ~ぱい消えたんだって」

「うん。それはよかった」

「だからAちゃんに、これからも優しくしてあげてね」

「うん。もちろん」

「よかった~」

そんなやり取りのあと、いつの間にかヤスヨさんがいなくなったのか、腕枕のママはすやすやと寝息をたて始めました。

恐らくヤスヨさんは、『ヤダ三姉妹』を代表してママの結婚相手となった僕に挨拶しにきてくれたのだと推測しています。


そしてママの大学院卒業を待ったのち、僕たち2人は結婚し、子どもも生まれ、ママの心はどんどん満たされていったのか、ついには『三姉妹』の登場機会はなくなりました。

でも僕は『彼女たち』は消えたわけではなく、子供たちを驚かせぬよう「ママの内側の奥の奥の方」で私たち家族全員をそっと見守ってくれているのだと、なんとなく感じています。

ですので、子どもたちが巣立ち、晩年夫婦二人きりになった時に、ヤスヨさんはひょっこりとまた現れてくれるのでは?と期待しています。

もしそうなった場合、私は彼女にこう尋ねてみようかと考えています。

「僕はお役目をしっかりと果たせていますか?」

彼女の答えがもし「はい」だったら、僕は天にも昇る気持ちになれることでしょう。

僕にそんな『生きがい』をくれたヤスヨさんたちには、本当に感謝しかありません。


つい先日、この記事が書きあがった記念にママに試しに『ヤダ三姉妹』のことを聞いてみたのですが、『彼女たち』の存在自体こそ覚えていましたが、僕との会話内容は「全然覚えていない」とのことでした。

それを聞いて、僕は安心しました。

なぜならそれは、今ママが「とってもしあわせだ」という何よりの証に違いありませんから。

遠い未来でのヤスヨさんとの再会に向け、これからもママや家族との楽しい時間を日々紡いでいければと思っています😊

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