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読書記録①小野不由美『残穢』

精神的にあれなときに限ってオカルトを読みたくなりがち問題。
今回もまた絶望的にあれで、最近はひたすら日本のホラー・怪談小説を読んでいる。
この作品を読もうとしたのは「十二国記」シリーズ全巻読み直しと数年間積んでいた最新エピソード『白銀の墟 玄の月』読破の流れから。

その際、刊行年でいくと2010年代以降に発表された『丕緒の鳥』、『白銀の〜』を読むのがただただ苦痛でしかなく、とくに4冊もある『白銀〜』についてはクドクドした文章、進まないストーリー、やたら出てくる新登場人物、そして何もしない彼ら、えっこれで終わり?というラスト等々、もうこのシリーズは「黄昏の岸 暁の天」まででいいです、ごめんなさいという惨敗感だった(グイン・サーガだっていまだに読み続けられているのに)。
小野不由美のホラーについては「十二国記」シリーズの『魔性の子』(そういえばこれってゼラズニイのオマージュ?)と実話怪談(風)集『鬼談百景』、「営繕かるかや怪異譚」シリーズは読んでいて、その辺りは面白かった。
この『残穢』については、百物語に倣って99話収められていた「鬼談〜」の100話目のエピソードにあたり、「鬼〜」中の話が「残穢」にも繋がっているとのことで、余計に興味をそそられた。
なお竹内結子さん主演で映画化もされていたそうだが未見。

あと「呪術廻戦」では呪術の痕跡的な意味合いでこの言葉が使われ、たしかコミックスで本作からの引用である旨が触れられていた。
以下あらすじ。

この家は、どこか可怪(おか)しい。
転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が……。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。
怨みを伴う死は「穢(けが)れ」となり、感染は拡大するというのだが──山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!

新潮文庫『残穢』裏表紙より

文庫解説によれば、刊行時に「とにかく恐ろしい」と評判になり、山本周五郎賞の審査員が「手元に置いておくのも嫌な話」とある。
しかし書き下ろし単行本の刊行年が2012年とあり、先ほどの「十二国記」シリーズ末期と重なっているため、ちょっと嫌な予感。
そして読み始めると案の定、『白銀〜』と同じクドクドクドクドクドクド展開にしてやられる。そもそも「ドキュメンタリー」とはあるが、あらすじの畳云々から始まる恐怖体験は「私である作者小野不由美」ではなく、「私」のもとに手紙で寄せられた読者の体験談である。
都内で編集プロダクションに勤めるライターでもある読者さんがあれこれ恐怖現象の経過や由来を調べ「私」に報告してくるという形式をとっている。
届いた情報にああでもないこうでもないと感想を述べ、何の変哲もないマンションの過去の土地の持ち主を調べ、その中で誰それが亡くなって幽霊が出るという噂話があった、しかしそれは事件性はなくデマだった、また遡って調べたらこんな事があった、しかしそれが起こった頃の時代性はこんな風だったので、それを鑑みればああだこうだの繰り返しで冗長極まりない。
登場人物一覧や関係図、土地の変遷図がついていればまだ関係が分かりやすかったかもしれないけど、その辺が本当に理解しづらい。「私」は周りの人が調査報告してくれているため直接恐怖体験をすることはない。ところどころ挟まれる京都に「私」の家(夫である綾辻行人との)を建てる話も何か伏線として張り巡らしているのかと思えば全く関係なく、いろいろな現象に懐疑的な「私」がすべて虚妄で片付けようとする。そしてこれが七年にわたって続く。
終盤からは日本ホラー界の有名人である東雅夫氏、平山夢明氏、福澤徹三氏等も登場。平山、福澤両氏の活躍により、最終的には明治・大正時代の北九州の炭鉱主の家で起こった事件、そして「私」自らもその地まで訪れ、真相が解明される(されたのか?)。
穢れに触れると伝染する「触穢(そくえ)」。その穢れを時間でも呪術でも浄めきれずに残ってしまった「残穢」。浄められずに残った穢れが福岡から東京まで渡ったということなのだが、死と怨念と呪いに塗れた京都に家建てる「私」は、登記簿見たり歴史書紐解いて、その地が寺院跡地で禁裏御料地だったから何も影響ありませんでした。
そして首が痛かったり、センサーで電気が勝手に点灯したり、謎の電話がかかってきたりしたけど「私」は大丈夫です。めでたしめでたし。
2012年、「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2012」(小説ランキング50)第8位。「ミステリが読みたい!2013年版」(国内部門)第10位。第26回山本周五郎賞を受賞。『ダ・ヴィンチ』の「怪談オブザイヤー」で第1位。お前らは一切信用しないからな。




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