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『ショート』ロマンス詐欺にご注意を


「貴女は日本人ですか?私はアメリカの軍人です。貴女の投稿した写真に惹かれてメッセージを送ります」

突然、メッセージを受け取ったルイは、とても驚いたが、自分の写真を見て『惹かれた』ということが、嬉しくて返信を送った。

「写真を褒めてもらえて嬉しいです。それから、日本語がお上手なので、驚いています」

また、すぐに返信があった。

「私はロックと言います。以前、日本の米軍基地で勤務していたことがあり、その時、親友に日本語を教えてもらいました。貴女の名前は何と言いますか?」

まあ、日本に来ていたことがあるのね。すごい。軍人さんだなんて、きっと大変な仕事をしているのね、とルイは思い、名前を教えた。

「私の名前は加藤ルイです。45才ですよ。若くはありません」と正直に答えた。

すると、またすぐに返信が来て
「ルイというのですね。ステキな名前ですね。45才?ノーノー、私は50才ですよ。ルイは正直な方ですね。こうして、話をしていると、とても親しみを感じます」

まあ50才だなんて、それにしてもロックの方こそ正直だわ、と思いながら、その日はメッセージを終えた。

ルイは、新しい出会いに気持ちが明るくなり気分も良く、また庭に咲いている花の写真を自分のページに掲載した。

それを見たのかロックがメッセージをくれた。

「ルイ、花の写真、キレイですね。ルイもきっとステキな人なんでしょうね。写真を見るとルイの優しさがわかります」

ルイは褒められて嬉しかった。

「ロック、ありがとう。私の写真を褒めてくれてとてもうれしいです。ロック、仕事は大丈夫ですか。つらいことはありませんか?」
と、彼を気づかう言葉を送った。

「ルイ、私のことを心配してくれてありがとう。私はもう軍人管理の仕事をしているので大丈夫です。ルイは、優しいですね」

まあ、管理の仕事をしているなんて人柄も良いのかしら?と思いながらルイはメッセージを送った。

「ロック、あなたはとても礼儀正しい方ね。こんなふうにメッセージを送ることが出来てうれしいです。ありがとう」
と送った。

すると「ルイ、貴女と電話で話すことは出来ますか?メッセージも楽しいのですが貴女の声を聞きながらお話し出来たら、うれしいです」

ルイはロックなら、大丈夫と思い、スマホの番号を教えた。
すぐに電話が来た。

「はじめまして、ルイ?僕はロックですよ」
「まあ、ロックなのね。なんだか不思議な感じだわ。何処から掛けてくれてるの?」
「アメリカですよ、ルイ」

とても良い感じの声でルイは、心が浮き立ちドキドキしていた。

「ロック、長くなると電話代がかかってしまうから、この辺で」と、言ったところで
「ありがとう、ルイ。キミは優しいですね。じゃあ、また電話しますね、ルイに愛を込めて」
と言い電話は切れた。

次の日も、その次の日も電話で話すふたり、その関係は、親密さが深まり友だちのような話し方で、時にはロックが歌を歌うなどしてルイは、癒されていった。

ある日のこと、
ロックは、日本に行ってルイに会いたいと電話で言って来た。
だが、日本までの旅費が無いから、貸して欲しいとも言って来た。

「ルイ、申し訳ない。私は前の妻を亡くし、子供たちの世話のため、自分で自由に使えるお金は限られているんだ。こんなことをルイに言うのは悪いことだとわかっている。でも、ルイに会いたい。僕はルイに恋をしてしまった。会いたいんだ、ルイ」

ルイはロックからの愛の告白がとても嬉しく「私もロックが好きよ。こんな気持ちは久しぶりなのよ。それに、私は、未婚なの。ロックが日本に来てくれるなら私も会いたいわ」

ふたりはお互いの気持ちを分かち合い『恋人』になった。

ルイは、すぐにロックのために旅費を工面して、ロックのいう銀行口座にお金を振り込んだ。

「ルイ、ありがとう、愛しているよ。ルイに早く会いたい」

口座に入金されたのを確認したと思われた頃、ロックから電話があった。

ルイは早く会いたいという気持ちを抑えつつ、彼からの次の連絡を待っていた。

1週間経った頃、ロックから電話が来た。

「ルイ、すまない。子どもが事故で入院してしまったんだ。僕は日本にまだ行くことは出来ない。それに入院代も無いんだ。ルイ、こんなことを頼むのは悪いことだと思っている。でも、僕にはルイしかいないんだ。ルイ、お金を貸してくれないか。必ず返すから」

ルイはロックが可哀想に思い

「ロック、心配しないで。奥さんも亡くされて、子どもが事故だなんて、いくらでもいいわ。欲しい金額を言ってちょうだい」

ルイは言われた通りにまたお金を振り込んだ。

ロックから電話がきた。泣いているようだった。

「ルイ、ありがとう。優しいルイ、なんて言ったらいいか.....愛しているよ、ルイ」

「ロック、今は子どもさんの怪我が良くなることを願っているわ。私でよければお手伝いをさせてちょうだい、ロック、私も愛しているのよ」

ある日のこと、姉の子どもの姪っ子のさおりがやって来た。

「ルイおばさん、こんにちは。元気でいる?あら?なんだか前より雰囲気が変わったわね、とても若々しい」

ルイは、『若々しい』と言われ嬉しくて、
「さおりちゃん、おばさん、恋をしてるの」 

「わーすご〜い。お相手は誰?何処の人?私たちも知ってる人?

「ううん、アメリカの人なの。とても優しいのよ」

「えっ、どうやって知り合ったの?」

さおりは急にトーンが低くなった。

「FBよ。私の載せた写真を褒めてくれてメッセージを交換してたら、気があって、今は電話でお話ししているの」

「まさか、お金を貸した?」

「ええ、日本に来ている私に会いに来たいと言ってくれたんだけど、旅費が無いから貸して欲しいって言われたわ」

「それで貸したの?」

「ええ、だって、いつかは結婚するかもしれない人だし、愛してくれてるのよ」

「おばさん、あとは何かある?お金の話」

「あのね、子どもさんが事故に遭われたのよ。それで入院費を貸して欲しいと頼まれて貸してあげたわ」

「おばさん、その人の顔、見たことあるの?」

「あるわよ。米国の軍人さんなの。毎日、電話でお話ししてるのよ」

「今までいくら貸したの?」

「もう、なんでそんなこと聞くの?さおりちゃん」

「いいから教えて」

「300万ほどよ。でも愛し合っているのよ。愛してる人が困ってたら、助けたいと思うでしょう」

「おばさん、これ、詐欺よ。ロマンス詐欺と言って、親しくなって愛がどうのこうの言って来たら、お金を貸して欲しいと言ってくるの」

「ロックに限ってそんなことは無いわ。ロックは、本当に困っているし、私を愛してくれているのよ。詐欺だなんて、決めつけないで欲しいわ、さおりちゃん」

「おばさん、冷静になって考えて。もうその人とは別れたほうがいいわ。そういうところまで来てるのよ。お願い、おばさん、目を覚まして!」

「さおりちゃんが、そんなことを言うなんて、ごめんなさい、帰ってくれる」

ルイは、ロックに限って、そんなことは無いと信じていた。

ルイは、ロックに電話をする。

「ロック、元気?私はあまり元気じゃないの。あなたのことを姪っ子に話したら『騙されている』と言われたの。こんな電話をかけてごめんなさい。ロック、私はあなたを信じてる。本当よ」

「ルイ、心配かけてすまない。
キミの姪っ子さんが疑うのも無理はないか。僕はキミにお金を借りてばかりだからね。ルイ、僕は、キミを愛している。結婚したいと思っているよ。僕を信じてくれないか、ルイしか僕にはいないんだ」

「ロック、話せて良かったわ。私はあなたをずっと信じているもの。あなたと結婚したいのよ、私にもあなたしかいないのよ」



さて、ルイは、ロマンス詐欺に見事に騙されてしまいました。
ロック(偽名)が軍人でも無く、日本人で、ロマンス詐欺の容疑で逮捕されても、自分だけは違うと、思い込んでいます。ルイがロックに渡したお金は、800万円ほどに膨れ上がりました。

それでも、ロックを信じるというルイは、哀れな女です。

ルイは、被害者では無いと言っています。
だから、警察に事情を聞かれても
何のアクションも起こしませんでした。

しかし、ルイは突然、自分が騙されたことに気付きます。
鏡の中にいる人物が、恋をしている女には見えなかったんです。
ルイは、警察に行きました。騙されたことを初めて知ったのです。

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