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『ベリーショート』おばあちゃんのシャボン玉

おばあちゃんが作ってくれるシャボン液で作るシャボン玉は、一日中、割れることが無い

他と同じように膨らませるのに
割れずにふわふわしている。

「どうして、おばあちゃんが作ると
シャボン玉が割れないの?」

と聞いても、

「ふふ」と笑うだけのおばあちゃん

私は割れないシャボン玉を
大きく大きくなるように
静かに、そして、そっと息を入れる。

シャボン玉は、どんどん大きくなって、私が乗れるくらいの大きさまでになった。

「おばあちゃん、見て!こんなに大きいシャボン玉が、出来たよ」

おばあちゃんに言うと、慌てふためいて

「ダメダメ、そんなに大きくしちゃダメだよー」

「なぜ?割れないんだよね。私!乗れちゃうよ」

「ダメダメ、乗ってしまったら
やっちゃん、飛んで行っちゃう」

「えっ、そうなの。じゃあ試してみる」

やっちゃんは、「よっこいしょ」と
掛け声をかけシャボン玉に乗ってみた。

「わぁ、乗れた!おばあちゃん、ほら、飛ばないよ。乗れるだけだよ」

おばあちゃんは、
「どうしよう」という顔をしている。

「やっちゃん、家の住所、言える?」

「うん、言える」

「じゃあ、行っといで、帰りたくなったら住所を言って」

とおばあちゃんが言うと、私はふわふわ、ふわふわ、飛んでいた。

地上からどんどん上に上がって、
街一番の大きな山も越えてしまった。

「あれ、どうやって止めるんだろう。こんなに上に来てしまって、
どこに行くんだろう」

私は、シャボン玉に座り、家の住所を言ってみた。

すると、シャボン玉は、山を越えて、見たことのある風景に戻って来た。

「あ、家が見える。おばあちゃんがいる」

「おばあちゃん!!」と言うと
聞こえたのか
おばあちゃんが手を振っている。

シャボン玉は、静かにゆっくり動きおばあちゃんのところに
降りて来た。

「やっちゃん、空の旅はどうだった?怖くなかった?」

「ちょっと怖かった。だけど、おばあちゃんが見えて安心したよ」

「ごめんね、やっちゃん。もう、大きなシャボン玉は、作らないで」

私が乗ったシャボン玉は、シワシワになり空気が抜けている。

「でも、おばあちゃんの作るシャボン液は、普通のと違うの?」

「ふふ、おばあちゃんは、昔、空に住んでたのよ。雲のもっと上の世界に住んでたの。今は、もう無くなってしまったけど」

「なんで無くなったの?」

「地球が変わって来たからね。仕方ないの」

「おばあちゃんは、天界の人だったんだ。もう帰れなくなって寂しくない?」

やっちゃんは、おばあちゃんに聞いた。

おばあちゃんは、

「やっちゃん、天界なんて難しい言葉、知ってるの、すごいね」

と言ってから

「やっちゃんがいるから寂しくないよ」

と優しく手を握ってくれた。

「おばあちゃん、大好き」

小さい割れないシャボン玉は、
まだ、ふわふわしていた。

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