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生みだすちから


 退院してからのリハビリ生活。精神科にリハビリというのはなんともなぁ、というくらい私は安定しているのだが、週三日、外来を受診して作業療法を受けている。通うことが目的だから涼みにきてよ。というゆるい感じのやつ。人数も少ない。毎日決まってくるのはふたりで、たまに私と若い女の子。五人よりは増えないでくれと願う。

 調子がいいので冬までの原稿は終わり、もう一作にとりかかっている。ほんとうはこちらから進めていたので嬉しい誤算。短編はスピード勝負。アイデアが鮮明なうちに書きあげられて気持ちいい。はやく読んでほしくて友だち何人かに送りつけ、推敲を重ね次にいく。手放しはかろやかに。この感じ。これはいい感じだ。自信がある。
 なんだか今までの生活より作家らしくなっている。当然だ。書くことしかしていないのだから。入院するのもわるくないかも、と頭をよぎるが、次はもうない。金銭的に。そう、全てはお金。お盆は存分に作家生活を送らせていただきましたので、そろそろアルバイトはじめます。といっても、私よりも周囲が心配しているから、短期バイトである。
 飽き性でどうしようもない。作業療法でおぼえたビーズのハンドメイドは続けられそうと夢中になったが飽きてしまったし、ぬりえも難しい『大人の塗り絵』をしたが飽きてしまった。好きだけど簡単だからすぐ飽きちゃう。私が唯一続けられているとしたら小説くらい。そう、子供のころから続けられている唯一の。はじまりは漫画だったのにね。将来はちょう人気漫画家になるっていってたの、今でもおぼえてる。だけど文章を書く魅力に気づいてしまったから、なんかやめられないんだよね。好きだけど難しく、難しいからもっとやりたくなる。終わりがないからやりたくなる。物語は完結するけど、書くことは終わらない。どうしてだろう。楽しくて仕方がないんだ。


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常世田美穂
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