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【総括2023’/短歌の巻】旅の記録を濃縮する試み
もう直ぐ終わりを迎える激動の2023年。
何の因果か気まぐれか、今年から五十の手習いよろしく挑戦することにした短歌の世界。而して、門外漢の嗜みにもかかわらず、恥ずかしながら十八首の「旅縛り短歌」を捻り出した次第です。
此度は、不遜を承知で拙作を振り返ってみようと思います。芸も捻りもない短歌ですが、お時間のある方はお付き合いくださいませ。
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序:「旅縛り短歌」を始めるにあたって
そもそも、放っておけば寿限無のような長ったらしい文章しか綴れない無粋な人間ですから、旅行や見学・鑑賞の類(美術館・博物館など)を備忘しようものなら、ネット空間と電力と時間の浪費になることは必至。
故に、旅先で得た感慨を短歌で表現するという設定を課すことで、瞬発力と推敲力が養われるのではないかと睨んだわけです。
それが「旅の記録を短歌で濃縮する」という試みの眼目でした。
それでは、四の五の言わず、1年分の拙作を振り返らせて頂きましょう。
※短歌の右下にある日付と題名の部分にリンクが貼ってあります。
壱:盛岡~岩手沿岸漫遊 「早春」
不来方を 離れて眺む 鬼ヶ城 君のいくすゑ 無事願ふ父
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神が棲む 丘より望む 松の原 テンデンコの声 心に刻め
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ビスカイノ なづけし湾の 潮の香を 閉ざす衛兵 無言なるかな
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雲霞 木々のまにまに 椿咲く 気仙の山に 槌の音ひとつ
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弐:新潟漫遊「晩春」
置賜の 季節を分かつ 宇津峠 雪解けの水 笹濁りけり
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荒海の 砂塵を隔てる 伊夜比古は 民の願いの 波止になりけり
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毒消しを 売りし娘の 足跡を 消すは角海に 寄せる白波
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潮音する 終の棲家で 万葉の かなとたわむる 秋艸道人
吹く風の 音を住処に 無頼派を 背負いし人の 姿を探す
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パタリロと おそ松くんに 奇面組 一同揃って 礼された俺
雪冠る 山の彼方に 浮かぶ家 やがて恋しき せんべい布団
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※漫遊後記はこちら
参:岩手沿岸漫遊「初夏」
幕末の 志士を育てた 剣豪の 生まれし郷に 浜風の吹く
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潮の香を まとって登る 贄鮎の 鱗煌めく 気仙の川よ
※漫遊後記はこちら
肆:花巻~岩手沿岸漫遊「初夏」
飾りなき 純真無垢の 魂が 悶えた跡に 言葉を失くす
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たゆらかな 流れを誇る 北上の 白亜に光る 岸辺を思ふ
※漫遊後記はこちら
花巻の後で訪れた陸前高田の浄土寺では、「奇跡の一本老松」に気をとられて歌を詠むのを忘れてしまった分、心を込めて後記にしたためました。
伍:福島漫遊「盛夏」
土用空 痩せても枯れても 勇者は死なず 微笑み誘う オールドニュー
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陸:盛岡漫遊「晩夏」
正南風吹く 土蔵のサウナに 並びしは 黄金仮面 伍百なりけり
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うやうやと 脇侍さしだす 傘の下 幸せの雨 夫婦の上に
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跋:眼目は達成できたのか?
それでは「感想以上考察未満」の振り返りを綴ってまいりましょう。
正直なところ、冒頭で掲げた設定に準じたことで、当初の眼目としていた瞬発力や推敲力が成長したか否かは分かりません。けれども、自身の感受性が反応する瞬間、若しくは反応が促進しやすい状況を感知できるようになったと実感しています。
加えて、古典の授業を睡眠時間にトレードオフしてきた不埒者が詠んだ短歌であることを鑑み、詠んだ歌に関する能書きや言い訳を一切排したわけですが、この決断は予想以上の副産物を与えてくれたように感じています。それは「解釈は読み手に委ねる」という、表現する者として至極当たり前の姿勢を選択できるようになったことでした。
とても勇気がいる決断でしたが、遂行して良かったと思っています。(苦手な事に挑戦する時って、自分自身を肯定したいが為に理由付けに走りやすいものですよね。)
それが、現時点での成果だと言えるかもしれません。
さて、そろそろPCの電源を落とすことに致しましょう。
来る2024年も心明るく短歌に興じたいものです。
また、そうした穏やかな心持ちになれるよう、日常生活の匙些末な事柄を丁寧にこなしていきたいと改めて決意している伝吉小父でした。
それではお後がよろしいようです。
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