ご機嫌貯金/水晶体に映る記憶
機嫌の良い人、天気のいい人に憧れる。
父方の祖母がそんな人だった。
毎朝、居間に行っておはようと言うと、パッと明るい顔がこちらを向く。お気に入りの赤い口紅を塗った唇の両端を、くいっと上げて挨拶を返してくれた。
後から聞いたが、祖母は「口角をあげること」を意識的にしていたらしい。すでに80歳を超えていたが、口周りの筋肉がしっかりあり、表情豊かな人。楽観的でお茶目なところが大好きだった。
振り返ると、そんな祖母と暮らした1年間、安心感に溢れていた。
当時、グラグラに揺れ動いていた自分の気持ちも、祖母とおやつの時間にお茶をしばくことで落ち着いたこともあった。
もうその安心の場所は無くなってしまったけど、今強く思う。祖母は、ご機嫌な、天気のいい人だったのだ。
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