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イベント・お出かけメモ#27 法然と極楽浄土(京都国立博物館)

聖徳太子、最澄、空海、親鸞、法然と、ここ数年、毎年のように仏教系の大きな企画展が開催されていて、今年の秋は法然展に行かなければという思いもあって、300枚限定の極楽風呂セット付の前売り券を購入していました。今回の目玉は修復が済んで初のお披露目となるらしい阿弥陀二十五菩薩来迎図(「早来迎」)みたいだったので、それをみることができる後期に行こうかと思っていましたが、11月は仕事が多忙になることが多いので、後期中に行けなかった時が心配で、前期中に行ってきました。

青空にレンガが映えて綺麗な旧館

京都国立博物館は、旧館時代には隔月で来ていた時期がありました。最寄り駅が京阪七条なので、天王寺-京橋-京阪七条というのが便利だったからです。平日の常設展は人影がまばらな時が多くて、閻魔さんたちと一人で向き合うことが出来た時は贅沢なひと時でした。今はあの閻魔さんはどこにいらっしゃるのでしょうか。最近は企画展だけを見て帰ることが多いのですが、一度常設展(名品コーナー?)をじっくり見たいと思っています。

さて、今回は前売り券をオンラインチケットとして購入していました。スマートフォンの画面でQRコードのページを入口の人に示すと読み取ってもらえます。グッズ付前売り券については、「この画面の下にもうひとつQRコードがあって、それがグッズ用になっています。またショップで見せて下さい。」と説明してくれました。親切でした。

お休みをとって平日のお昼前ぐらいに到着したからでしょうか、それほど混雑しておらず、企画展第1室の3階からゆっくりと見ることができました。

企画展は
第1章 法然とその時代
第2章 阿弥陀仏の世界
第3章 法然の弟子たちと法脈
第4章 江戸時代の浄土宗
で構成されていました。

「法然展」ではなく、「法然と極楽浄土展」なので、法然だけにフォーカスしておらず、法然が説いた浄土宗の世界や浄土宗の発展の歴史全体に目配りされたものです。私は仏像と仏画(その中でも曼荼羅図)がとても好きなので、そのあたりが多いと嬉しいのですが、ざっくりとしたイメージでは、紙の展示物が多い印象を受けました。

第1章の最初に「往生要集」がお出迎え。同じ部屋には京都会場限定展示の「方丈記」や「九品来迎図」などもあって、さすが京都、と言う感じを受けます。「方丈記」は大福光寺(京都)、「九品来迎図」は瀧上寺(奈良)でした。後者は、上品、中品、下品ごとのお迎えが描かれたもので、貴族ではないので上品はまず無理として、あとはお布施や徳を積んだとして、中か下だけれど、極楽まで気の遠くなるような時間がかかったとしても、迎えに来てくれて極楽まで付き添ってくれるのであれば、下品でもいいかな、極楽までの旅も面白そうだし、と思ったりもしました。

空海と同様に、仏教の地位向上、宗祖の権威付けと言う感じで、インドや中国の高僧を経て日本に正統な仏教が伝来したことを描いている浄土五祖像は、浄土宗の広報として興味深いものでした。

仏像や仏画、仏画の場合はそこに描かれた庶民が好きなので、第2章の阿弥陀仏の世界は良かったです。前期展示だった「地獄極楽図屏風」(金戒光明寺)「十界図」(永観堂禅林寺)は、地獄の描き方が素晴らしくて、どういう職人が何にヒントを得て描いたのだろうかと思いました。10代の時に梅原猛『地獄の思想』などの影響をしっかり受けているので、極楽図も好きなのですが、地獄図に惹かれます。

この章の場所に、後期は「早来迎」(知恩院)や「山越阿弥陀図」(永観堂禅林寺・京都国立博物館)が来るそうです。この3点はやはり見てみたいです。山越阿弥陀さんは、前期は「山越阿弥陀図屏風」(金戒光明寺)が来てくれていました。臨終の際に枕元にこの屏風を置いてくれたら、五色の糸を結んでくれたら、それは心強いよなと思いました。山越阿弥陀はお顔が優しいものばかりで素敵です。

第3章は「法然の弟子たちと法脈」に沿った展示のため、日本仏教の子弟相関図が頭に入っていない私にはちょっとよくわからないため、鑑賞が早くなるところでしたが、大念寺の阿弥陀如来立像とその像内納入品は印象に残りました。こちらの部屋に後期は當麻寺の国宝「綴織當麻曼荼羅」が来るそうで、目録を見ると「當麻(当麻)曼荼羅」は後期の方が展示品が多いような印象を受けました。
あと、2階への階段を下りて右側の小部屋みたいな展示室に熊谷直実ゆかりの品がありました。出家したということまでは知っていましたが、法然に弟子入りしていたのでした。

1階に降りたところで少しにぎやかになっていたので見ると、日本一の立体涅槃群像の「仏涅槃像」がありました。ここだけ撮影可能とあると、つい撮影したくなります。近づいてひとつひとつを撮影するのはためらわれたので、全体像を取ってみました。やはり仏像はいいです。

全景を撮るのは難しい

この他の阿弥陀像の中で、百万遍知恩寺の阿弥陀像の衣紋がとても素敵でした。今回一番素敵だと思った阿弥陀像がこちらでした。京都会場限定だそうです。同じく京都会場限定の「厨子入千躰地蔵菩薩像」(報恩寺)は、千躰が極楽への執念みたいなものを感じさせました。
そういった仏像の展示物などがある部屋の奥には「蒔絵厨子入阿弥陀如来立像」(報恩寺)はとても手の込んだ品で、こういう品を注文して作ってもらえた人は幸運だなと思ったりしました。叶う好みの持仏を厨子も含めてオーダーしてみたいです。


気に入った展示などはトラベルノートに貼ります

そして廊下を挟んだ向かいに「第4章 江戸時代の浄土宗」として、徳川家の庇護を受け、地位を向上させた江戸時代の浄土宗に関する展示がありました。その中で目を引いたのは、1611年以前の琉球時代に作られた「黒漆司馬温公家訓螺鈿掛板」(檀王法林寺)でした。琉球に流れ着いた袋中上人による仏教布教に関するもので、袋中上人の帰京の際に贈られたそうですが、この時期の琉球の工芸品のレベルを示すものとして貴重だと思いました。こちらは前期展示です。

さて、2時間弱を過ごした後は、ミュージアムショップです。今回は既に極楽湯セットは入手しますが、それ以外に惹かれていたのが蓮の花クッション。立体涅槃群像で仏さまが頭を置いている蓮の花に想を得たグッズです。あとは「早来迎」のTシャツも大変気になりました。ショップを2周したところでクッションに決めました。「早来迎」はこの企画展の目玉なのですが、そのTシャツを着ると「お前はもはや死んでいる」といった相手に対する害悪の告知っぽくなるのではないかという懸念と、やはり着るTPOが難しいなと思ったからです。クッションを入れる大きさのエコバッグは持っていなかったので、袋を購入。風呂桶セットもそこにまとめてもらいました。ショップの定員さん、手際がとてもよくて良かったです。

こたつの時期を前にどうしても欲しかった菊の花クッション。クッションは硬め。

さて、事前情報ではカフェにコラボメニューがあるということで、立ち寄ろうかなと思っていたのですが、帰宅時間を計算するとカフェでくつろぐ余裕はなさそうだったので、その代わりに気に入っていた東の庭にちょっと行ってみることにしました。ちなみにこちらには茶室「堪庵」があって、そこでお茶を楽しむことができる時もあります。

お目当ては、茶室ではなく(カフェ同様にそこまでの時間の余裕がなかったため)、朝鮮半島の石造遺品。階段を上がったところや小道の脇に、文官や武官、童子、馬などの石のオブジェがあります。こちら、職場の庭にも似たようなもの(ただし、職場にあるのはドルハルバン:石のおじいさん)があるので、朝鮮半島からこういった文化財を日本に持ち帰って庭に置くことが流行したのかなと思っていたのですが、こちらの場合は、「大正初年、大阪山本家の日本式庭園の要所に巧みに配置されていたが、昭和五十年十月同園の廃滅に際し」て京都国立博物館に寄贈されたのだそうです。

階段を上ったところに石像があります。振り向けば石像という感じのところもあります。
静かな表情の文官
由来書・説明書

博物館のメイン通路から外れたところにあるので、知っている人は知っている、人の多いところで疲れた人が一息つく、という場所だったりします。

さて、京都国立博物館の旧館は耐震上の問題があるということで閉鎖され、現在調査中だということですが、いつの日かまた旧館に足を踏み入れる時はくるのでしょうか。

旧館に関する説明
こういう感じの扉がとても好き