読書感想文:『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』読了
ジェフリー・ユージェニデス(佐々田雅子訳)の『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』を読んだ
1970年代のミシガン州デトロイトを舞台とした、リズボン一家の崩壊物語
五人姉妹には、セシリア、ボニー、テレーズ、メアリイ、ラックスがいる
皆ティーンエイジャーで、年頃の男子たちとパーティーを開きながら、戯れる
夜中に、電話越しにビートルズやローリング・ストーンズの音楽をレコードで掛けかけたり、ティーンエイジャーがタバコを吸ったりと、何処か年代を感じる小説
しかし、セシリアの自殺をきっかけに、リズボン一家に段々と影が差し、姉妹の言動も不安定なものになっていく
「なぜ五人姉妹は自殺したのか?」と原因が気になる所だが、本作はむしろ、自殺を未来の預言として捉えている
実際、70年代のデトロイトでは、自動車産業がオイルショックによって衰退し、60年代の公民権運動もあって、他の州への移住が進んでいた(解説参照)
デトロイトの荒廃ぶりは有名で、今もネットではよくゴーストタウン化した街並みが写真で載せられている
小説内では、姉妹の自殺=自己愛を満たすための行動(神に殺されるよりも、自分たちの手で自分の命を終わらせる)と書かれていたが……
実際は、姉妹の自殺=街の荒廃という、より象徴的な描写を試みた小説になっている
ストーリーは暗いけれど、年頃の漠然とした悩みを巧みに描いた、良き青春小説です