父の日に考える父子教育
皆さんは、子供の成長において何が一番重要だと考えますか?理想を挙げればキリがありませんが例えば、「幸せな一生を過ごしてほしい」や「健康に育ってほしい」などが多いかと思います。一方で親である私たち自身に目を向けてみると、健康でしょうか?幸せに過ごしている事でしょうか?
幸せになりたいと思っていても「何が幸せなのか?」「何をしたらその幸せを感じるのか?」「本当にそれが幸せなのか?」このような問いに対する所謂「幸せの定義」は明確に存在しているわけではありません。
私たちがここで強調したいのは、漠然と幸せや健康を考えてもなかなか本質にたどり着かないことです。子供からすれば幸せはおもちゃを買ってもらったとき、健康は熱を出してないときと思っているかもしれません。親は子供に生きることとは何かを教える必要があり、子供は自身で生き方を考え、決めていきます。
本分、自分の生き方
前回、アンパンマンのマーチを例に「本分」について触れました。「なんのために生まれて なにをして生きるのか こたえられないなんて そんなのは いやだ!」つまりアンパンマンは本分のことをしっかり意識していて、その本分については「みんなの夢をまもるため」と繰り返し言ってます。
弟子規研究所ではこれまでも「本分」を取り上げてきましたが、改めて定義を示したいと思います。
本分を見つけるためには「人間関係構築力」と「自己認識力」の2つのチカラを高めていく必要があります。今回は前者について「父子」の観点から考えます。
5つの人間関係と父子の親
人間社会には、私たちを取り巻く5つの関係性があると言われています。それは「父子の親」「君臣の義」「夫婦の別」「長幼の序」「朋友の信」の5つで、五倫(5つの倫理)とも言われています。東京五輪ではないです笑
ここで一番初めに触れているのが「父子」の関係です。ただしここでは「親子」という意味なので母親も含まれます。もちろん父と母では子供への接し方も違います。具体的な役割の違いについては別の機会に書きたいと思いますが、お父さんだけではなくお母さんも一緒に読んで欲しいと思います。
さて「父子の親」とは、父母は子に対して親愛・慈愛を示し、子は父母に対して孝であるという両者の関係性を表しています。なお親愛・慈愛について『易経』という古書では次のように表現しています。
ここでいう「正」とは以下のような意味です。
①子供が一生ずっと純粋で居続ける、天真爛漫で目がキラキラした状態を保つよう親愛・慈愛をもって育むこと
②子供が純粋で無邪気な品徳を、親や兄弟へ、社会へ、そしてすべてモノとの関係性に拡大していくよう親愛・慈愛をもって育むこと
父母は子に対して、いつまでも純粋な心をもって一生を過ごしていけるよう身をもってお手本として教育をします。一方、子は父母の正しい教えを学習します。このようにして、子は実践を通じて品徳を体得し、周りと良い関係性を築きながら徐々に影響力を発揮する範囲を広げていきます。
3つの教育方法
身をもってお手本として教育をすると書きました。現代社会の教育環境は座学あり、ワークショップあり、マンツーマンありと多様ですが、東洋思想では下記の3つにまとめられています。
①身教:身をもって教えること
②境教:環境の中の関係性をもって教えること
③言教:言葉や教材をもって教えること
座学は③の言教ですし、ワークショップは②、マンツーマンは①と③のミックスと言えるでしょう。
2つの学習の”道”
一方、学ぶ者としても2つの道があります。「孝道」と「師道」です。孝道は主に父母から実践ベースで孝行を学ぶこと、師道は主に先生(上司や先輩、友人も含む)から理論ベースで敬意を学ぶことです。
とはいえ父母も先生も、子供に持論を押しつけたり、コントロールしたり、資質を変えることはできません。教える立場として、自分自身が端正にふるまい、教化していくことのみです。まず「学為人師、行為世範(学んで人の師となり、行いて世の人の範となる)」ことを目指しましょう。これによって子は「青は藍より出でて藍より青し」が実現できるのです。
お父さんもお母さんも、子供との関係性つまり「父子の親」を正しい姿にすることは、五倫につながります。親子関係は、人間関係構築力の起点です。そして皆さん自身が「本分」を見つけ、自分の人生を幸せだと思えたとき、きっとお子さんも幸せを感じているはずです。
五倫の残り4つについては、また別の機会に書きたいと思います。
車文宜・手計仁志
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