弟子規研究所

『弟子規』は社会における道徳や秩序を示し、その中で自分の本分を尽くすことなどを説いた中国の古い教材です。『リーダーとして論語のように生きるには』の著者が、この教材の研究を通じて、社会で信頼されるための不変的な規範、問題解決や目標設定のポイントなどを紹介します。

弟子規研究所

『弟子規』は社会における道徳や秩序を示し、その中で自分の本分を尽くすことなどを説いた中国の古い教材です。『リーダーとして論語のように生きるには』の著者が、この教材の研究を通じて、社会で信頼されるための不変的な規範、問題解決や目標設定のポイントなどを紹介します。

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弟子規研究所、開設。

ごあいさつ初めまして。車文宜(CHE Wenyi)と手計仁志(TEBAKA Hisashi)です。このたび2人で弟子規研究所という活動を始めることにしました。 このnoteでは、日頃の社会やビジネスで起こる出来事を『弟子規』の視点から眺めてみて、その本質や善悪の基準を読み解いてみよう!という内容を発信していきます。 あまり肩ひじ張らずに、私たちが日頃感じたことや考えたことなどをツラツラと書いていければと思います。皆さんもお気軽に読んでいただければ嬉しいです。 『弟子規』

    • 『貞観政要』と三つの鏡(3/3)~人の鏡~

      3回シリーズの最終回は、いよいよ「人の鏡」について解説します。 1.得失の対象はなにか 最後の「以人為鏡、可以明得失」の部分です。この得失とは何を指しているのでしょうか。得るべきものと失ってはいけないものを、どのようにして明らかにすべきなのでしょうか?現代語訳には「厳しい直言や諫言を受け入れ、自分の間違いを知る/自分を正す」などの解説があるようです。自分の間違いを知る、正すことで、何かの得失が分かるということでしょうか。 以前にサステイナブル・デベロップメントを実現する

      • 『貞観政要』と三つの鏡(2/3)~歴史の鏡~

        前回に続き、今回は2つめの「歴史の鏡」について解説します。 1.歴史を学ぶ難しさ 「以史為鏡、可以知興替」の部分です。歴史"を"というより歴史"から"学ぶことにより、これまでの王朝がどのように興隆し、そして衰退していくのかを知ることができるという趣旨です。ここでは興隆と衰退における因果関係について着目しています。 以前に四書五経『大学』が語る無為自然で書いたように、 『弟子規』などの基本概念を理解しないまま『論語』を読んだり、『三国志』や『孫子』に手を伸ばしても、活用

        • 『貞観政要』と三つの鏡(1/3)~銅の鏡~

          1.『貞観政要』はどんな本? 皆さんは『貞観政要(じょうがんせいよう)』という書物をご存じでしょうか。これは、唐代(西暦618~907年)の第二代皇帝である太宗(李世民)とその臣下の問答を、呉兢(ごきょう)という人物が編纂した言行録と言われています。「貞観」とは太宗が在位した元号(西暦859~878年)で、中国の長い長い歴史の中でもっとも平和で安定した時代のひとつと言われています。「政要」は文字通り政治の要諦という意味です。つまり『貞観政要』とは、平和な世を築くためのポイ

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        弟子規研究所、開設。

          平等は違いから生まれる

          違うからこそ、平等 「平等」と「イコール」は同じ意味ではありません。「平等とはそれぞれ個々が自分にしかない価値を社会に提供することで生まれる」と以前書いたことがあります。 例えば手の5本指。みんな長さ、太さ、位置が違う。仮に全部が同じ長さ、太さ、向きだったら手として機能しません。どの指が優れているとか、劣っていて使い物にならないとか、そんなふうにはならないですね。5本指は、違いがあるからこそ1つの手として成り立っていて、私たちは手を器用に使うことができます。 私たちの

          平等は違いから生まれる

          非認知能力と東洋思想の人間力

          非認知能力:Non-cognitive skills 小さなお子さんがいる方は、この「非認知能力」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。非認知能力研究のきっかけは、アメリカの心理学者David P. Weikartが1960年代にアフリカ系アメリカ人の貧困家庭の子どもたちを対象に、非認知能力教育と成長後40歳時点での収入額や生活保護支給、犯罪率などを追跡し比較した調査研究「ペリー就学前プロジェクト」にあるとされています。この研究に注目し、経済学の視点で分析したのが、

          非認知能力と東洋思想の人間力

          修身と東洋式経営管理

          修身の位置づけ 前回の記事で、四書五経のひとつである『大学』には、「格物、至知、誠意、正心、修身、齊家、治國、平天下」という人間の成長の順序を定める八条目があると書きました。しかし、同じ段落の最後で「自天子以至於庶人、一是皆以修身為本(天下を平らにする天子から庶民に至るまで、みな修身を根本とすべき)」とも書かれています。八条目の最初にある「格物」ではなく、あえて途中にある「修身」を根本にすべきと書いてあるのです。 『大学』だけではなく、『弟子規』も修身に特化しており、詳

          修身と東洋式経営管理

          四書五経『大学』が語る無為自然

          能登半島地震で亡くなられた方々へ衷心よりお悔み申し上げます。 また、被害に合われた皆様にはお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧を心からお祈り致します。 四書五経と弟子規、学ぶ順序 四書五経と呼ばれる経典(優れた教えの書物)があります。四書は『大学』『論語』『中庸』『孟子』、五経は『易経』『詩経』『書経』『礼記』『春秋』からなります。これらは東洋思想においてのセット書籍で、学び、そして生きる上で入門シリーズの位置づけです。 一方で『弟子規』は、本格的な学びの前に

          四書五経『大学』が語る無為自然

          「無為自然」は何もしないこと?

          無為は積極的?! 無為自然(むいしぜん)という言葉を聞いたことはありますか?調べてみると以下のような解説が多いです。 ありのままに生きること 「無」の道に従って一切の作為を捨てること 作為がなく、宇宙のあり方に従って自然のままであること 努力は精一杯するけれど、最後の結果は天に任せるあり方 んー、分かるような、分からないような。今回はこの無為自然について詳しく解説します。 まずはじめに「無為」とは動作や作為が無いことではありません。そもそも東洋思想は「何もしな

          「無為自然」は何もしないこと?

          徳を積むとはなにか?

          勉強と学習の違い 幼い頃に「なんで勉強しなきゃいけないの?」と思ったり、親に尋ねたことがある人も多いと思います。この「勉強」という言葉、実は「気の進まないことを無理に励むこと」という意味なんです。ではみずから行う勉強は何という?それは「学習」です。勉強と学習、あまり使い分けていないかも知れませんが、その意味は大きく異なります。そして「学」と「習」にはそれぞれ意味があります。 知らないことやわからないこと、面白いと思うことに対しての好奇心が、学びの原動力です。そして物事の

          徳を積むとはなにか?

          なぜ徳が必要なのか?

          これまで、東洋思想について色々な角度から記事を書いてきましたが、前回、ようやく「道徳」について書きました。徳を積むことは大事といわれていますが、その理由や動機はみなさんそれぞれあると思います。 今回は徳を学び、行動するための3つのポイントをご紹介します。皆さんが「おおお!私もやってみたい!」と思ってもらえたら嬉しいです。 1.「心のアップグレード」を先に 前回の記事で「内境」について以下のように書きました。 「内境」を重んじる理由について少し補足します。簡単に表現する

          なぜ徳が必要なのか?

          東洋思想はサステナビリティを越えて

          滴水之恩、湧泉相報 東洋思想では「恩返し」の教育を重視します。「滴水之恩、湧泉相報(一滴の水の恩に、涌き出る泉のような大きさで報いる)」という言葉があります。恩返しは、いただいた分を返すだけではありません、数倍返しなのです。 皆さんは最近どんな恩返しをしましたか?私(車)も以前に「あれだけ手伝ったのに、その後どうなったかの報告すらない!」と怒られたことがあります(怒っていただきありがとうございます…)恩返しどころか報告すらしていないですもんね。今でも覚えているほど、当時の

          東洋思想はサステナビリティを越えて

          弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!③

          前回①と②で、子育てプランのポイントとして德才兼備(先に徳育、次に才能開花)、自己認識を深め、人間関係構築力を高めることについて書きました。最終回の③では、学びの順番と徳育の実践を示す『大学』と『弟子規』をもとに、人間関係構築力についてさらに深堀りしてみます。 子育てパパ支援と女性活躍推進の関係 私たちがパパをサポートしていきたい理由として、パパたちがより一層子育てに参加し、子供によりよい影響を与えてもらいたいという考えがあります。さらには、ママの子育て&家事への理解や、

          弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!③

          弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!②

          前回、子育てプランにおいて大切なのは「德才兼備(先に徳育として自己認識力や人間関係構築力を高め、その次に才能開花)」という順番が大切と書きました。またパパの子育てに重要な人間関係として「五倫(5つの関係性)」をご紹介しました。今回は自己認識を深めることについて書きます。 【復習】徳育の実践と学びの順番を示す『大学』 儒学の基礎学習においては「四書五経」という、今でいうシリーズ本がありますが、その中で一番最初に読むべきとされているのは『大学』です。「明明徳」「親民」「止於至

          弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!②

          弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!①

          え?パパなの? はい!パパを主軸に支援します! 在宅勤務で子供と過ごす時間が増えたパパが多いと思いますが、皆さん子育てに対しても色々な思いがあるのではないでしょうか? ママの愛は何が起きても、どんなに大きく転んでも、無条件に暖かい居場所です。一方でパパの愛はどこまで高く、遠く挑戦できるか、世界の大きさにウキウキするか、希望に満ち溢れています。パパの愛が足りないと子供は羽ばたかず「井の中の蛙、大海を知らず」になってしまいますので、パパも子育てにおいて、すごく大事な役割と責任

          弟子規研究所は子育てを頑張るパパを全力で支援します!①

          サステイナブル・デベロップメントを実現する東洋思想の方程式

          ようやく暑さがひと段落しましたね。前回は、よい子育ての基礎として「孝敬」という考え方や「智慧」について書きました。 今回は、この「孝敬」と「智慧」のつながりや、私たちが目指す社会ついて書いてみます。 孝敬の実践例 私(手計)は朝起きたら田舎に住む母へ、毎朝「おはよう」LINEをしています。3日に1回は電話で声を届けます。ひと月に1回は帰省します。近くもなく遠くもなく電車で2時間ほどです。どれも用件は特にありません。 子供たちは私の帰省に付き合うときも付き合わないときも

          サステイナブル・デベロップメントを実現する東洋思想の方程式