シン映画日記『トリとロキタ』
ヒューマントラストシネマ有楽町にてダルデンヌ兄弟監督最新作『トリとロキタ』を見てきた。
『ロゼッタ』、『ある子供』、『ロルナの祈り』などを手掛けたベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟の新作で
カメルーンからベルギーのリエージュにやって来たロキタとトリの異母姉弟は、ビザを取得するためにイタリアンでのデリバリーのバイト以外にドラッグの運び屋や細々とした裏仕事を請け負うことに。
アフリカからのヨーロッパでの密入国サバイバルというとアキ・カウリスマキ監督の『ル・アーブルの靴磨き』や『希望のかなた』などがあるが、
本作はただ移民社会に対応していくサマだけでなく、
生き抜くためにキツく、ヤバい仕事を受ける。
しかも、トリとロキタの周りにいる大人が揃いも揃ってクズで、
とにかく金にモノを言わせてやりたい放題。
後発に入るとロキタのみ謎の施設に連れられるが、
厳重にしている様子や、栽培している植物からどういう施設か察することが出来る。
いまいちしっかりしてない姉のロキタと
物凄くしっかりした弟のトリの視点での
ベルギーのリエージュの暗部をモロに取り上げ、
ヒューマンドラマに行きがちなダルデンヌ兄弟の作品を
ヤバい方向に引き上げ、緊張感が途切れずに見られる。
シンプルではあるが、
冷酷なリアルさはこれまでのダルデンヌ兄弟の作品にはなかった重さで
手応えがある。