シン映画日記『THE WITCH/魔女 -増殖-』
グランドシネマサンシャインにて韓国映画『THE WITCH/魔女 -増殖-』を見てきた。
『新しき世界』や『隻眼の虎』、『V.I.P. 修羅の獣たち』を手掛けたパク・フンジョン監督作『The Witch/魔女』の続編。済州島にある秘密研究所アークの襲撃事件で生き残った少女が島から逃げ延びて牧場を経営する姉弟に匿ってもらうが、アークを襲撃した謎の超能力者集団や、姉弟を狙う犯罪組織らが次々と襲ってくる。
『The Witch/魔女』の続編ではあるが、そこでは出てこなかった少女と牧場を営むギョンヒとデギルの姉弟がメインで、要は謎の少女と姉弟の交流と彼女らを襲う複数の組織との壮絶バトルと超能力を操る遺伝子操作で作られた魔女を抹殺しようとする秘密組織と、それに対抗する超能力魔女軍団らの世界観など、近未来SFでありながら巧妙なバトルロワイヤルが楽しめる。
この映画が非常に上手いのは遺伝子操作を行う化学施設や超能力を使う超人が出る近未来SFでありながらスーパーヒーローや怪物、怪人は一切出ず、また済州島とその近隣の建物が少ない土地を使いながら、韓国で等身大の近未来SFを作り上げている。
おまけに監督のパク・フンジョン監督はこれまでに『新しき世界』や『隻眼の虎』などでヤクザらの組織抗争を取り上げていただけあって、複数の組織を群像的に見せるのが非常に上手い。
そしてなによりも主人公の謎の少女が断トツに面白い。表向きはカワイイ少女で非力そうだが、実はとんでもない戦闘能力があり、サイコキネシスも持つ。そんな少女と彼女を抹殺しようとする秘密組織や牧場を狙うヤクザとのバトルは思い切りがいい。
日本でも近い感じで近未来SFをやろうとした作品は『AI崩壊』や『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』、『Arc アーク』などいくつか見受けられるが、どれももう一つ上手くいかなかったが、
パク・フンジョン監督は自らの『ブレード・ランナー』のような人造人間が出てくるSFを韓国映画に無理なく落とし込み、そこに複数の組織群像劇をも展開している器用な映画である。
次回作への繋ぎ的な2作目であるからか2時間以上もあるわりにはこじんまりとした作品であるのがちょっと惜しいが、
前作未見の方でもわりと楽しめる。