暗闇のエンターテイナー 21
残り10
かすみが目覚めたのは
夜だった。
かすみが住んでいる辺りは
駅から離れた閑静な住宅街のため
夜遅くなると、
街の音はほとんど聞こえない。
そして家族も
深い睡眠についているであろう深夜、
さすがにかすみは
喉も渇き、お腹も空いたので
水を飲み、アイスクリームを食べていた。
カチカチに冷えたカップのアイスは
寝起きということもあって
かすみには一口分削ることすら
時間もかかった。
前の晩から数えると
20時間以上経つというのに
目が冴えるような感覚ではなかった。
まだまだ眠りたい。
かすみにとって今はっきり言えることは
眠りこそが現在から逃げる唯一の術だった。
かすみの現実とは
度々襲ってくる過去が
後悔であり、
自尊心の低さだった。
眠ることは
理屈ではなく
辛いことから脳が逃げるための
人間の仕組みなのかもしれない。
中毒者はみんなそう言われる。
したり顔のニュースコメンテーターは
こんな事件信じられませんね、
なぜこんな事が、
と言うが
当たり障りない言葉で
濁す意外ないんだろう。
人間を知れば、おそらく難病以外は
そんな難しいものではないと思ってる。
ただ、なってしまったものを
修復する技術は
未来のそのまた未来かもしれない。
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