【娘におくる手紙】12か月、最初はいつも片側から。
▼11か月、「一緒なら、むてき」
今月も手紙を書きます。
ついこの間、あなたは1歳になりました。
お誕生日おめでとう。この1年(おなかにいた頃から数えるともっと長く)、たくさんのはじめてをありがとう。
誕生日はケーキにロウソクを立ててお祝いしました。
はじめて目にする炎にたじろいで、完全にかたまっていたあなたの姿がとてもかわいかった。
1歳が近付いてきたあたりから、オムツやおもちゃのメーカーなど、これまでネットで買い物をしたブランドから「お誕生日おめでとう」のメールがたくさん届きました。
おもちゃや洋服を買うとそれ以降しょっちゅう届くようになる、いわゆるDMやメルマガってやつです。
※これは余談ですが、あなたが生まれるまで知らなかったけど、赤ちゃんのための商品を売っている会社ってこんなにたくさんあるんだね。
まだまだ知らない世界があるんだなと感心しています。
(仕事の癖で、会社やブランドの運営が気になってしまう母です。)
メルマガは案外おもしろくて割と読むのだけど、どのメールにもだいたい、成長や生活の目安が書かれています。
「生後8か月、そろそろハイハイをし始める頃ですね」とか「ママを探して泣くようになります」みたいに。
メルマガによると、ハイハイは8か月くらいでできる子が多いらしいけれど、あなたは一向にハイハイをしない子です。
寝返りも嫌がってしようとしない。
寝返りはたしか生後6か月頃のメルマガに書いてあった気がします。
児童館で会う同じ月齢くらいの赤ちゃんたちはみなハイハイをしていて(母はひそかに “ハイハイ軍団” と呼んでいます。)、部屋中をキャッキャと這いずり回っています。
その中であなたはいつもどっしり座って、手にしたおもちゃをぶんぶん。
ハイハイ軍団を眺めながらまるで指揮官のように、得意げに振り回していました。
そんなあなたの横に座っていると、周りのママたちが
「うちの子もこの間まで全然しなかったから大丈夫ですよ」とか声をかけてくれます。
そのたびに「そうですね」と返しながら、心の中で「大丈夫ってなんだろう」と考えていました。
だって、あなたが困っているのならどうにかしてあげなきゃって思うけれど、あなたはハイハイをしなくて困っているようには見えなかったし、それがしたいようにも見えなかった。
あなたにとって必要なら、そのときに自然とできるようになると、そう思っていました。
だから「大丈夫じゃないかも」なんて考えもしなかった。
でも子育てって複雑だな、と思いました。
多くの親は、「赤ちゃんの個性を大事にしたい」と言うし、“ほかの子とは違う特別ななにか” があることを期待しているのに、ほかの子と少し違うところがあると、“ふつう” じゃないことに不安になる。
大人になると「ひととは違うなにか」を必死に探すのに、赤ちゃんのときは「周りの子と同じじゃないとダメ」という雰囲気があると感じました。
発達の問題もあるから簡単に言えないことではあるけれど、“ふつう” や、個性と発達の境界について考えたりもしました。
そんなことを考えながらも、あなたと一緒にマイペースに、並んで座って景色を眺めていると、案の定11か月をすぎた頃あなたは突然ハイハイをしはじめました。
あんなに泣き叫んで嫌がっていた仰向けや寝返りも「当たり前ですけど?」みたいな涼しい顔で、クルクルクルと転がっていくように。
ハイハイをきっかけに成長の花が芽吹いて、一気に咲きはじめたんだと感じました。
毎日できることが増えていくあなたを見ていて気付いたことがあります。
それは、「なにかができるようになるとき、最初はいつも、ものごとの片側から」ということ。
お気に入りのビンのフタを閉めることができるようになって、毎日何回も閉めるけれど、あけることはできない。
できないというよりも、ビンは閉めるものだと思っているみたい。
だから毎回お母さんのところに「ん!」と持ってきて、あいた状態にしてもらう。
それがしばらく続いて、ある日「ビンのフタは私もあけられるんだ!」と気付くと、その後はあけたり閉めたりに夢中です。
あける、閉める
押す、ひっぱる
散らかす、片付ける (※今のところ片付けはまだできません)
そんな風に少しずつ、ものごとを両方ともできるようなって、赤ちゃんから “子ども” になっていく。
一歳をすぎた今は、人間くさい仕草も増えてきました。
今日もお気に入りの子ども椅子に座ってくつろいでいます。
一丁前にあぐらをかいて、ひじ掛けにもたれかかっていて、ちょっと偉そうなおじさんっぽいです。
それでは。また来月も手紙を書きますね。
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