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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2019年5月の記事一覧

【spin a yarn】
日が暮れて、空に明日の色が混ざり始める頃、今日の影は繭玉に包まれる。夜にも影はついてくるけれど、それは明日の影、繭玉の中の影のエコー。繭玉の中で影の見る夢、テクニカラー、それはおぼろな明日、不確かな未来、予感。影の糸の垂れ下がる、そちらは辿っても昨日。

【spin a yarn】
むせかえる薔薇の香りを嗅いだ時、わたしの中の幾らかは、そのほころびに絡め取られる。蝶の類になるものもいる。時折、懐こい蝶に出会う。離れていった後で、あれはわたしの連なりかもしれないと思う。羽ばたくそれは、多分、わたしよりもまた薔薇を選んでしまうだろう。

【spin a yarn】
泳げないまぼろし
縮む日傘

【spin a yarn】
鏡の向こう
ポジティブな影の世界
奥行きのあべこべは
重いの
それともイルカ

【spin a yarn】
ニセアカシアを纏ったならば、何だか偽物になれそうな気がする。
本物になるくらい難しくて、少しも報われないの。
集めたガラス玉をあげる。
わあ、という心の方が宝物なの。