【朝ドラらんまん】日本植物界の偉人、牧野富太郎先生の思考を五台山で探る回
五台山と朝ドラ「らんまん」
高知市南東部にある標高143mの山。頂上は高知市を一望できる天然の展望台。
北京の西にある五台山(標高3048m)に山体が似ていることから、唐へ留学後、行基によって「五台山」と名付けられました。
地元では、桜、ツツジの名所として親しまれています。さらに、頂上付近には展望台、竹林寺、牧野植物園があります。
今回は、五台山に登って牧野植物園を訪れました。牧野植物園は、日本植物分類学の父、牧野富太郎さんの偉業をたたえるために1958年、開園した植物園。
2023年4月3日から放映されるNHKの朝ドラ、「らんまん」。舞台は高知県、モデルが牧野富太郎さん。牧野富太郎さんの生涯を描いたフィクションドラマ。牧野富太郎さんは、「日本の植物学の父」と呼ばれ、日本における植物の理解を深めることに貢献されました。
牧野植物園で植物に触れ、2冊の本で牧野富太郎さんの偉業や思考を学びました。
参考文献
五台山展望台
五台山山頂に建っていた旧展望台。2022年4月28日をもって閉鎖され、現在は解体され、新展望台を建設中。2025年3月頃、オープン予定です。現在は、新展望台がオープンするまでの暫定措置として展望テラスが2022年9月22日に開放されました。24時間開放されており、昼は高知県の雄大な地形、夜は高知市のキラキラした美しい夜景を望むことができます。
1969年~1978年、展望台からふもとまでロープモノレールが運行されていました。山麓駅にあたる青柳橋近くの青柳停留所(現在の高知観光株式会社というタクシー会社付近)から国分川を越えて、五台山山頂の見国停留所(旧展望台)までの約992mを4分で結んでいました。五台山ロープモノレールは世界でも珍しいディーゼルエンジンによって自走するロープウェイでした。しかし、五台山の麓から展望台まで自動車道路が整備されたため、わずか9年で休業に追い込まれました。
南は土佐湾、浦戸湾の入り組んだ地形と雄大な太平洋、北側は四国山地など緑豊かな山々。さらに、高知城など市街地も眼の前で一望でき、夜になると街の明かりが美しいイルミネーションに変化して美しく見られます。
牧野植物園
五台山展望テラスから徒歩10分。
日本植物分類学の父、牧野富太郎さんの偉業をたたえるために設立された植物園。園内には、牧野富太郎さんゆかりの植物など3000種類以上が栽培され、四季を感じることができます。
主なる園内の構成
「牧野富太郎記念館」
牧野富太郎さんの生涯を振り返りつつ、遺された蔵書、スケッチなど貴重な資料が展示されています。
「土佐の植物生態園」
高知県の野山を再現しています。
「土佐寒蘭センター」
高知県のオリジナル品種、土佐寒蘭を鑑賞できます。
「50周年記念庭園」
東洋の園芸植物を鑑賞できます。
「温室」
熱帯地方の植物も鑑賞できます
牧野富太郎さんの功績により、当時、ほとんど研究が進んでいなかった日本の植物について解明されました。牧野植物園では、日本だけではなく世界の植物も展示されています。温室により、熱帯の植物など日本では自生していない植物の展示も可能にしています。
幻の花、ケシも視ることができます。ケシの種子は、アンパンのトッピングなどに用いられ、炒ってから使用することは問題になりません。
しかし、種子が発芽した途端、違法になります。果汁がアヘンの原料になります。盗難防止のため、近づくことはできないので遠くから撮影します。無許可で栽培すると麻薬及び向精神薬取締法とあへん法により、逮捕されます。
牧野植物園
営業時間 9:00~17:00(16:30まで入館)
定休日 12/27~1/1、メンテナンスによる不定休
アクセス 高知駅からMY遊バス 桂浜行きで21分、「五台山展望台」下車。
牧野富太郎
植物学者を志すまで
幕末、土佐藩の酒屋の息子として誕生した牧野富太郎さん。出身は高知県佐川町。高知駅から特急あしずり号で25分、普通電車で50分ほど西に進んだ場所にあります。当時は、身分制度が根強く、学校が身分によって分けられ、仕事は家業を継ぐことが一般的な時代でした。牧野富太郎さんは、酒屋の息子のため、跡を継ぐ予定でした。
身体は虚弱でしたが、勉学に優れていました。先生のススメでより深くさまざまな分野を学ぶため、佐川町から高知市へ出ました。長沼小一郎先生と出会いました。これが植物研究に生涯を捧げるきっかけになりました。長沼先生は日本だけではなく、中国や西洋の学問に精通。科学、文学、英語、西洋科学、特に植物学精通していました。長沼先生から学んで、時には議論することにより、知識を吸収していきました。
幼少期、地元の川、山で遊び、自然に触れていた経験が植物など自然に興味を持ち、将来の研究の道に進むきっかけになりました。
功績
ヤマトグサを始め、1500種類もの植物を命名し、当時、未知だった日本の植物の解明に努めました。植物の調査のため、全国を回り、調査結果をもとに図説+解説文の植物図鑑を作り、人々に植物の魅力について広める活動も行っていました。多くの人々に植物に付いてどうしたら伝わると考えた結果、現在の図鑑のようなスタイルの資料が誕生しました。書物により、中国など周辺の国々の植物との比較研究がすすむきっかけにもなりました。
植物学といえば、スケッチが重要な役割を果たします。全体図と様々な部位を分けて描くことにより、その植物の種類がわかるように、全体像を描こうとしました。植物は同じ種でも、人のように個性があるため、平均的な全体像を描こうとしていたことが特徴です。牧野富太郎記念館では、多くの植物のスケッチ(植物図)も展示されています。
ないものは自分で作りました。例えば、ビニール袋や保冷剤のない時代に採取した植物を長持ちさせるため、ガラス張りで密閉性の高い活かし箱の考案しました。
疑問点をメモして、季節変化にも注意を払ったり、間違い、曖昧さを許さず妥協しない職人気質も見られます。
好きなことのためなら、なんでもやる精神。一人で解決させていきました。興味の種から40万点もの観察記録、標本も残しています。
植物に対する考え
「植物なしでは生活できないから感謝の真心を捧げるべき。」
紙、建築など木材が利用され、食糧は植物が中心など生活には欠かせません。
「植物を愛する人は尊い。」
草木を愛することは、草花を傷めないこと。また、小さなものでも愛し、大切にすることでもあります。植物を傷めないことが人を傷めないという思いやりの心になり、争いもなくなると考えていました。
争いが起きる理由はプライドが強く、人と比較して譲歩しないから。人のために役に立つという思いやりの心で、強者を抑え、弱者を助けることにより、全体のバランスを取ることが必要。これにより、人間の幸福を維持します。気候と同じく、人間も、わずかながらの変化にも敏感になり、配慮を怠らないこととも必要と述べています。
さらに、植物について、多様性を求めていました。植物の知識を深めることによって新しい資源も見つけられるかもしれないと考えているからです。 例えば、桜は江戸時代から注目されており、戦後直後も桜が日本の花のシンボルの存在で、特別扱いのようにたくさん植えられていました。しかし、他の花々にも魅力があるため、桜ばかり注目するだけではなく、全国各地に、サボテン、花しょうぶなど様々な植物をメインに扱った植物園を開園すべきとも書物に書かれていました。
教育
指導者は正しいことを人々に教える責任があります。親から子どもに教えることも同様です。
そのため、子どものなぜ?にも、五感の感想やニュース記事に書かれているような表面的な情報だけではなく、歴史、背景などを交えて広く深く答えてあげることも大切と言います。
ある物事について、深掘りして物事を調べてから教えることが重要です。
時代に合わせて知識をアップデートする必要があります。文化の発展などの妨げになるため、間違いを正す必要があるとも指摘しています。
植物においても、漢字ですら古い情報であることがあります。牧野富太郎さんが晩年に書いた自伝、「草木とともに」では、後半は植物の正しい知識についての記述で独占しています。
例えば、スギについて、漢字では杉と書きますが、これは日本原産のスギではなく、コウヨウザン、イヌガヤ属の一種の名前を指します。
また、ヒノキは漢字で檜と記載しますが、イブキビャクシンのことを指します。
桜は元来、桜桃と書かれており、桃を略して桜になりました。桜桃は、中国の特産の果木の仲間。一般にさくらんぼと呼ばれるものは、西洋実ザクラのことです。
疑い深く物事を見ることも大事。当たり前のことを当たり前に思わないこと。知識をアップデートするなど、勉強は生涯続きます。
人間教育
争いをなくすため、思いやりの心を持つ人を増やし、利己的な人をどう抑えるかなど、人間教育の重要性についても語っていました。学校教育では、人間教育が大切であります。学問だけ深めるなら、学校に行く必要がありません。独学でもできると感じました。
お金だけではなく知識を身に着け、心、勇気など豊かにする必要があります。さらに、豊かなものは複数持っておくことが生き残るうえで大切とも話してます。
牧野富太郎の思考
幼い頃に見つけた興味のタネを育てて花を咲かせることに生涯を捧げていました。ないものがあれば自分で作る。仕事という捉え方ではなく、趣味の延長の捉え方をしていました。
間違いは許さず、妥協しない精神を持っていました。根本的な考え方はアート思考とマッチしていました。植物という興味の種を育てることに一生を捧げ、日本の植物の解明など多くのという功績の花を残されました。
自伝「草木とともに」、朝ドラ「らんまん」、小説「ボタニカ」を通じて、違いや共通点を比べることも楽しみの一つです。
参考文献
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