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よりぬきついなちゃん

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pixivにて公開中の【鬼っ子ハンターついなちゃん】の二次創作小説より選り抜きの作品を掲載します
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記事一覧

【小説】Good Sleep(増補改訂版)

【小説】Good Sleep(増補改訂版)

「ん…」

神奈川県・厚柿市の一角にある邸宅のベッドで、真珠色の長髪と琥珀色の瞳を有するその華奢な少女は束の間のまどろみから目を覚ました。

「はわわわわわわ!?」
狼狽えてベッドから身を起こそうとする真珠色の髪の少女の肩を、別の少女の細い手が優しく押さえつけた。真珠色の髪の少女は再び枕に頭をつける。

「ウチは…ウチはこれから"バトロール"に行かな…」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」

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【小説】小さな侍【ついなちゃん二次創作】

【小説】小さな侍【ついなちゃん二次創作】

「ねぇねぇ聞いた?【小さな侍】の話」
「聞いた聞いた!雀に跨れる位に小さな侍が、夜となく昼となく出るって言うアレでしょ?確か…」
「不動産会社の代島さんの家だっけ?」
「そうそう!昭和末期から平成始め辺りに急に商売が右肩上がりになって、家を新しく今の場所に建てたら小さい侍が出るようになったんだって、うちのおばあちゃんが言ってた」

女子高生の群れが、口々にそんな噂話をしながら通り過ぎて行くのを、雑

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【小説】続・深窓の令嬢【ついなちゃん二次創作】

【小説】続・深窓の令嬢【ついなちゃん二次創作】

此処は、とある次元軸の神奈川県・厚柿市。

欧州の何処かにあるような広い庭の大邸宅。
バラの花が咲き乱れるその庭で、13歳位の淑やかな少女が、二十代前半位のクラシカルな装束を身に着けたメイドに髪の毛をブラッシングして貰っているのが見える。
少女の、腰まで届くその長髪は真珠色で、瞳は琥珀色、肌は雪のように白い。吹けば飛ぶ程に儚げで華奢な少女だ。他方、そんな少女を優しく慈しむメイドは肩まで切り揃えたコ

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【小説?】雨上がりの街角【ついなちゃん二次創作】

【小説?】雨上がりの街角【ついなちゃん二次創作】

秋とは名ばかりの残暑厳しいある日、自称【よろず創作家】TechpanCreateは、急な夕立にしとど濡れた道路を松葉杖片手に歩いていた。

今日は定期通院の日、しかもその後諸用にて役所に立ち寄って先程やっと開放されたばかり。
税金周りの重い話だった上、窓口の職員に恫喝紛いの説教を喰らい、げんなり歩くTechpanCreateの足取りは重かった。

先程の夕立の影響なのだろう。
歩道のそちこちに水溜

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【小説】桔梗【ついなちゃん二次創作】

【小説】桔梗【ついなちゃん二次創作】

日本の何処かにある、大きな窟。

その窟から姿を現したのは、黒髪の小柄な和装の少女と、何処と無く両棲類を思わせる顔つきに焦茶色の着物を身に着けた壮年男性だった。
「ハンザキ。もう少し男前に化けられなかったのか」
和装の少女が眉を顰める。
壮年男性…歳ふりし大山椒魚の妖怪・ハンザキは決まり悪そうに頭を掻いた。
「未だ修行全からずして、美男子に化ける事が出来ませぬ。蟇のような爺になるのが手一杯で御座い

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【小説】コンサート【ついなちゃん二次創作】

【小説】コンサート【ついなちゃん二次創作】

「ひゃー、今日のコンサートも大盛況やったね!」

真珠色の髪と琥珀色の瞳を持つその少女は、舞台袖に引っ込むとハンカチで額の汗を拭った。
今日は、この少女が歌手デビューして初めての大規模な、列島縦断コンサートの最終公演。
どの会場でも満員のスタンディングオベーションと言う大盛況で、それは千秋楽なる今日もまた同じだった。

「お疲れ様です、御主人」
長身で豊満な眼鏡美女が水筒片手に現れた。
「おおきに

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【小説】ボウドク【ついなちゃん二次創作】

【小説】ボウドク【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市。
とある雑居ビル様の建物。

一階部分にある、骨董品や古美術品を売る店舗の店先で、白い狐を思わせる背の高い美女・八蜂鞠ククリは思わぬ報告に目を丸くした。

「それじゃ何かい?今、白山展望台は完全に封鎖かい」
「そうなんですよ、ククリ様」
ククリの問いかけに頷いたのは、青い髪を持つ美女。ククリ直属の部下で、そのまま【アオ】と言うコードネームで呼ばれている。
「展望台に人が至ると、突

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【掌編】お土産【ついなちゃん二次創作】

【掌編】お土産【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市の住宅街。立ち並ぶ家の中でも一際大きな邸宅。
玄関には【風花】のネームプレート。

此処は厚柿市でも名が知れた良家・風花家の邸宅である。

その邸宅の二階の窓辺りで、ふわふわ浮かんでいる童女がひとり。白い着物に翠の袴、白い足袋にぽっくり下駄。長い翠の髪をシニヨンにまとめ、余った髪を後ろに靡かせている。大きく丸い目は青空を切り取ったように輝き、そのあどけない顔には生きる喜びが満ちてい

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【小説】天狗の提灯【ついなちゃん二次創作】

【小説】天狗の提灯【ついなちゃん二次創作】

此処は、紀州・葛城山の山中。

そよそよと流れる川の傍に、和洋折衷な戦装束を身にまとい、四つの目が光る鬼神面を頭に抱いた少女が矛の石突を川面に向けて構えて立っていた。その長い髪は真珠色に輝き、瞳は琥珀色で、肌は雪のように白い。

暫しの沈黙の後、ほんの僅か、川面で何かが動く気配がした。
「たあっ!」
短い少女の叫びと共に矛の柄が川面を貫く。同時に、尺に余る大きさの見事な山女魚が高く跳ねた。少女の手

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【小説?】メタな話【ついなちゃん二次創作】

【小説?】メタな話【ついなちゃん二次創作】

「あー、疲れた」

自称・よろず創作家の男、TechpanCreateは自宅のドアノブに手をかけて溜息をついた。

病を得て足が不自由になって、休職してから半年余り、その後職を辞してから2ヶ月。
現在TechpanCreateは療養の合間を縫い、歩行のリハビリと、傷病手当の受給期間満了を見越した在宅稼業に向けた準備に奔走する日々を送っていた。昼間は地域共生センターのフリースペースを借りて作品造りに

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【小説】心を込めて【ついなちゃん二次創作】

【小説】心を込めて【ついなちゃん二次創作】

「うーん…」

神奈川県・厚柿市のとある住宅街にあるマンションの一室。

その一室で、ひとりの少年が腕組みをして真剣に何やら考え込んでいた。黒く艷やかな髪と、湧水のように澄んだ瞳が特徴的な、中性的で凛々しい面差しをした少年だ。ユニセックスな私服が、スマートな体つきに良く似合う。
少年…平安時代最強の陰陽師・安倍晴明の末裔たる若き陰陽師、安倍広葉は眉間に皺を寄せ、形の良い眉を曲げてうんうん唸っている

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【小説】ケーキ【ついなちゃん二次創作】

【小説】ケーキ【ついなちゃん二次創作】

とある街の、とある路地裏。
ひとりの女性が、周囲を確認しながらゆっくりと歩く。
長い黒髪をうなじの辺りで縛り、銀縁の眼鏡を掛けた秋服のその女性は、時折ポケットの中からメモを取り出しては、周囲をきょろきょろと見渡す仕草をする。

やがて、女性の視線は路地裏の奥まった一角に注がれる。一見何の変哲もない只の路地裏である。
…たったひとつ、路地裏に似つかわしくない重厚な作りの扉が据えられている事を除けば。

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【掌編】カラオケ【ついなちゃん二次創作】

【掌編】カラオケ【ついなちゃん二次創作】

「待ってー、広葉くーん♪」
「待たないし!今日は帰って修行しなきゃだし!」
「キャー、照れてるー♪」
「かわいいー♪」
「か、かわいいとか言うなし!」

黒髪と、湧水のように澄んだ瞳を持つ小柄な少年を、上級生と思しきセーラー服の少女数人が追いかけ回すのを見て、厚柿中学一年生の少年二人組…新聞部の部長・小林小太郎とバスケ部所属・日折司輝は怪訝な顔をした。
上級生の女子達に追い回されているのは、小太郎

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【小説】蜂蜜【ついなちゃん二次創作】

【小説】蜂蜜【ついなちゃん二次創作】

とある神域。
社務所に掛かる看板に、墨痕鮮やかに【楠木神社】と記された古い神社の傍らに、見上げる程大きな一本の広葉樹が立っている。
密に茂る若葉を縫うように咲く、鈴のように可憐な白い花が美しい。時折、そよ風が花を揺する度にかすかな鈴のような澄んだ音が響く。

その大樹の傍で、腰掛けに座って何かを美味しそうに頬張る、14歳位の少女の姿があった。
長い翠色の髪をシニヨンにし、余った髪を後ろに靡かせ、瞳

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