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オーディオブック紹介 「境界線」

おはようございます。
2024年12月6日 金曜日です。

中山七里『境界線』

2018年5月某日、気仙沼市南町の海岸で、女性の変死体が発見された。
女性の遺留品の身分証から、遺体は宮城県警捜査一課警部・笘篠誠一郎の妻だったことがわかる。
笘篠の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流され、行方不明のままだった。
遺体の様子から、妻と思われる女性はその前夜まで生きていたという。
なぜ妻は自分のもとへ戻ってこなかったのか
――笘篠はさまざまな疑問を胸に身元確認のため現場へ急行するが、そこで目にしたのはまったくの別人の遺体だった。

妻の身元が騙られ、身元が誰かの手によって流出していた……
やり場のない怒りを抱えながら捜査を続ける笘篠。
その経緯をたどり続けるもなかなか進展がない。
そのような中、宮城県警に新たな他殺体発見の一報が入る。
果たしてこのふたつの事件の関連性はあるのか? 
そして、笘篠の妻の身元はなぜ騙られたのか――。

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東日本大震災の深い傷跡を、ミステリーという装いを通じて鋭く描き出した作品です。
主人公・笘篠誠一郎警部の妻の謎めいた死をめぐる捜査は、単なる事件の解明を超えて、震災が人々の心に引いた目に見えない境界線を浮き彫りにします。

前作『護られなかった者たちへ』の読後感を期待して手に取った本作は、前作ほどの疾走感はないものの、その分、人間の内面により深く踏み込んだ作品となっています。
震災によって引き裂かれた人間関係、喪失感、生存者の罪悪感など、被災地の複雑な感情を繊細かつ力強く描写しています。

特に印象的なのは、被災経験の有無によって生じる目に見えない境界線、そして被災者同士の間にも存在する微妙な距離感です。
作者の筆致は、読者の息を呑むほどリアルで、塀の内と外、被災地と非被災地の境界線を見事に描き出しています。

個人情報ビジネスという現代社会の闇と、震災の記憶が交錯する本作は、単なるミステリー小説の枠を超えた社会派小説としても秀逸です。
震災から年月が経ち、風化が進む中で、人々の記憶と心の傷を鮮明に描き出す本作は、決して忘れてはいけない物語として強く心に残ります。
被災地の現実と人間の深層心理を深く掘り下げた、秀逸な社会派ミステリーと言えるでしょう。

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今日の占い

12月6日
○チャレンジの日
1.苦手な課題や不慣れな作業から逃げずに、まずは一歩を踏み出すことが重要です。
2.面倒なことを避け続けると、その状況は永遠に変わりません。
3.たとえゆっくりでも、少しずつ進歩することで、徐々に克服への道が開けていくのです。

金のカメレオン座

それではまた明日
ひろかん

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