【ぼくは"元"航空管制官】ステージ13 ~管制官達のクリスマス~
こんにちは。元航空管制官の田中秀和(たなかひでたか)です。
また今年もクリスマスの時期が来ました。ちょっと人間味のある管制官達のクリスマスをご紹介します。
私が勤務した那覇空港や中部国際空港の様な24時間運用の空港には夜勤があります。24時間運用を行っていない地方空港でも遅番はあります。現場で働く管制官はシフト勤務ですから、12月24日にこれら遅番や夜勤に当たってしまうと、家族とクリスマスイヴを夕飯時に祝うことが出来ません。子どもがいる家庭は、お父さんまたはお母さん抜きでクリスマス会を行うか、日にちをズラして開催するか、毎年シフト表とにらめっこすることになります。私も夜勤明けに帰宅すると、子どもから真っ先にサンタさんから貰ったプレゼントを見せられ、嬉しそうに報告されたこともありますが、やはりクリスマスは家にいたいなと思うこともありました。ただ、誰かは遅番や夜勤で働かなければなりませんし、むしろ独身管制官こそ彼氏彼女と勝負の時ということもあるでしょう。何となくお互いに探り合う雰囲気になるためか、クリスマスは休みを取りにくい印象はありました。
クリスマスに増えるものと言えば、ヘリによる遊覧フライトが挙げられます。景気に左右されるので必ず毎年ある訳ではないのですが、パイロットに伺うと夜景を観ながら機内でプロポーズというのも珍しくないそうです。そんなキラキラな世界を横目に、いつもどおり管制塔やレーダー室で勤務しなければならないのは、何となくひがみたくなるのが本音です。実は出勤時にもそれは感じたりします。街全体がキラキラしているのに、いつもの格好でいつもどおり出勤する自分に…
そんな気持ちを察してか、シフトの責任者である次席航空管制官が自腹でクリスマスケーキなどを差し入れてくれることがあります。勤務中に皆で同時に食べることは出来ませんので、適宜休憩を取りながら交替で食べるのですが、緊張感が続く勤務の中で甘いものを摂ると身も心も癒やされますね。今更ですが「当時は大変ありがとうございました」とこの場をお借りして、先輩方に御礼を伝えたいと思います。
ちなみに、勤務交替時に業務を引き継ぐ早番から「サンタさん映った?」と夜勤明け組に聞くのも定番の挨拶(ジョーク)となっています。残念ながら管制官のレーダーにサンタさんのソリは映りません。それは、サンタさんのソリがトランスポンダーと呼ばれる識別信号を出す計器を積んでいないと考えられ、そしてソリが木製だと思われることが挙げられます。管制官に無線で交信を試みたサンタさんについても、日本では聞いたことがありません。私としては、安全で円滑な飛行のためには、是非全国の管制機関をご利用頂けたらと思っています。前述の夜勤管制官達も、喜んで全力で支援してくれることでしょう。
「でも、FR24(Flightradar24)には映っているよ」というご意見もあるでしょうが、あちらとは情報ソースが異なるのか、少なくともこれまでに日本の管制官達のレーダーにサンタさんが映ったという話は聞いたことがありません。なお、FR24に表示されているサンタさんの速度と航跡(ターゲットの進み方)に違和感を覚えるのは管制官の職業病でしょうか。私個人としては、本当にサンタさんがあの速度で移動しているのだとしたら、サンタさん複数存在説の裏付けになると思っています。だって、世界中を回るにはあの速度はちょっと遅過ぎる気がしませんか?
クリスマスシーズンになると、外資系航空機のパイロットを中心に「メリークリスマス」という言葉が飛び交います。たまに時差を忘れて26日にも「メリークリスマス」と言われることもあります。クリスマスを過ぎると、日系航空機のパイロットから「良いお年を」と言われる様になり、年の瀬を感じることになります。そして、年明けには「明けましておめでとうございます」や「Happy New Year!」が飛び交います。と言うことで、次のステージは年明けですね、お楽しみに。
Merry Christmas & Happy New Year!!!
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