#9.鶏とネギとカップ麺。
鴨がネギを背負って、という表現があるように、鴨肉とネギの相性には素晴らしいものがあるが、鴨肉に限らず、鶏肉そのものがネギと相性が良いと思っている。一口大の鶏肉を酒で炒め、大量の長ネギを投入し、醤油でさらに炒めて七味をたっぷりと振りかける、これだけでも美味しい。鶏とネギの組み合わせはキノコとも相性がいいので、炒めたそれらを醤味の和風出汁に投入し、水溶き片栗粉でとろみをつけて、蕎麦や饂飩にするのもいい。これにもやはり七味が合う。
時々、ネギを病的に嫌う人というものがいて、極まった人物になると、カップラーメンのかやくから器用に、箸でネギを取り除く人も見たことがある。前述したように、鶏肉とネギの相性は良い。ネギを嫌うということは、鶏肉の魅力を知らないということでもあり、誠に勿体無いことと思う。
ちなみに、カップラーメンといえば、一番に思い浮かぶのはカップヌードルだが、私は醤油よりシーフードの方が美味しいと思っている。昔、トリビアという番組で、本場の中華料理人三名に日本の様々なカップ麺を食べさせて議論させて、やはりシーフードヌードルが最も美味しいと言っていたから、間違っていないはずだ。完成度は醤油が一番かと思いつつも、シーフードにはポテンシャルをずっと感じていた。
数年前に、そんなシーフードヌードルのベストな食べ方をようやく見つけた。それは箸の先端でひとつまみ程度の豆板醤と、大さじ一杯程度のお酢を入れることである。これによりあっさりとした海鮮の風味を残しつつ、醤油やカレーに負けないパンチを得て、私の中のシーフードヌードルはついに完成へと至った。
食べ物の組み合わせというものは興味深い。鶏肉とネギのように、あるいは前述したカップ麺のアレンジのように、最低限の素材で掛け算の如く効果を顕す瞬間を見つけるのは楽しい。これが料理の醍醐味だな、と。
たまにTV番組などでタレントが得意げに作る料理などが、ただの足し算によるものだったりすると、殺意が湧くことすらある。彼らもまた、カップ麺からネギをちまちまと取り出すような生き方をしているに違いない。ピザトーストを料理と呼ぶな。
この記事を読んだ方々へ。
高級なものでなくてもいい。手軽に手に入る素材の中から、これはと思う組み合わせをぜひ教えて欲しい。あと、シーフードヌードルの食べ方も試してみてほしい。