職務経歴書/履歴書からカルチャーフィットを読み解く方法
弊社が提供する「現場向け動画教育プラットフォーム tebiki (SaaS)」のチーム拡大のため、会社代表としてたくさんの履歴書/職務経歴書を拝見し、採用面談を毎日しています。今回はその中で培ってきた「面談前にその人の性格を見極める技術」をまとめてみました。
自分ではもう無意識にやってることなのですが、社内の採用担当へのノウハウ伝授のために明文化したものを公開してます。よく言われる「会ってみないとわからない」は本当ですが、履歴書/職務経歴書などの書類で、その人の「スキル」と「性格」は半分ぐらいわかります。
この記事では、採用担当として書類のどこをどう見ているのかを細かく解説したいと思います。
( 貴山 @tkiyama )
カルチャーフィットと「行動特性」
職務経歴書/履歴書で判断するのは「スキル」だと思われがちですが、実は「カルチャー」との相性もそれなりにわかります。
「カルチャー」とは、創業者を中心とした「職場メンバーの性格と働き方」そのもので、「カルチャーフィット」とは、「今いるメンバーと同じ目線で仲良く働けて、その職場に馴染める性格か」と言って良いと思います。
ここでいう性格は「行動特性」や「コンピテンシー」と呼ばれるもので、その人の行動や思考のパターンです。チームワークやリーダーシップの度合い、成長志向、主体性とか色々あるんだけど、(人事の専門家から怒られそうですが)要は「性格」のことです。つまり、カルチャーフィットの見極めとは、性格診断そのものになります。
その人の性格が、職場の雰囲気/働き方/既存メンバー等とフィットするか。ハードワーク/ゆったり働く、予算に超/そこそこコミットする、スーツ必須/ビーサン短パンOK、遅刻厳禁/あなたにお任せ、などなど。
例えば、予算達成のコミットメントを強く要求する組織の場合、そのやり方が肌にあう/あわないは明確にあって、そういうのが肌にあわない人が入社してもすぐ退職することになります。
※「クリエイティブ人事」という本の中で、サイバーエージェントの曽山さんが採用基準を「素直でいいヤツ」と書いてますが、CA社の場合、まさにこの一言でカルチャーフィッティングの線引きをしていると言えます。
各面接では、学生のコミュニケーション能力や論理的思考力などにも注目しますが、私たちが最も重視する採用基準は、ずばり、「素直でいいヤツかどうか」です。といっても、会社や上司の言いなりになるイエスマンを採ろうとしているわけではもちろんありません。私たちが考える「素直でいいヤツ」とは、「物事をあるがままに見ることができ、間違えたら自ら軌道修正できる人」「変化に対応でき、学習能力の高い人」のことです。
面談前に書類内容から仮説を立てる
どうやってその人の性格を見極めるかというと、
・仮説を立てて
・材料を集めて
・検証する
を短い面接時間の中で繰り返して、その人がどんな人かを把握しようとしています。
その最初のステップが、履歴書や職務経歴書等から立てる「こういう人だろうなー」という仮説なわけですが、この仮説がお互いに不要な面談を減らし、面談精度を向上させるためにとても大事です。
「会ってみないとわからない」はそのとおりだけど、「事前の仮説がなければ短い面談時間で性格判断はできない」も正しいです。
例えばこういう感じで仮説を立てます。
「性格が地味で自己主張しないので今の職場では評価されていないが、まわりに流されず、自律してミッションドリブンで仕事ができる凄腕。」
「分析と議論が得意なコンサルタイプ。頭の回転は早いがオーナーシップがない。いろいろ口だけは出してくるし、言ってることは正論なので余計にめんどくさい。」
「ガッツリ体育会系。3日ぐらい食事なしでも生きていける。とにかくイケイケだが数字に弱い。でも素直。」
「言われたことはきっちりスケジュール通りやる。業務遂行能力は高いが、だらしない人を許容できないというか、清濁併せのむ度が低い。ミネラルウォーターしか飲めない。」
履歴書と職務経歴書から材料を集める
※ここでは「履歴書と職務経歴書」としていますが、求人メディアのフォーマットの内容も同様です。
以下に挙げた特徴は、あくまで「そういう人が多い」というだけで、全員にあてはまるわけではないことに注意。後述の「最大公約数を探す」ための情報を集めています。
■ 業務実績そのものと、その変遷
やってきた仕事そのものが、その人の性格に強く影響を与えます。例えば、飛び込み営業を3年やった人は物事に動じない性格になるし、分析業務をずっとやっている人は実行よりも分析が好きという傾向があります。やってきた仕事に加えて重視するのがその変遷で、例えば飛び込み営業を1年でやめて違う業務にうつってる人は、飛び込み営業的な仕事は好きじゃないんだろうなーと判断します。
■ 業務実績の盛り方
盛ってることが多いので、文字通りは受け止めません。よくあるのが、実際はリーダーから言われたことをやっていただけなのに、自分で立ち上げてマネジメントしていたかのように書く人。多少は盛るのが普通なので、実態はどうなのかなー、と考えながら職歴を頭に入れておきます。盛りすぎ/全く盛っていない、というのも材料になります。
■ 在籍年数
1社あたり3年以上在籍したかが一つの目安です。1年未満で転職している場合、会社側に問題あることも多いんですが、在籍1-2年での転職が数回続くと、「やり抜く力が足りない」「飽きっぽい」「協調性が足りない」などのサインだと考えます(あくまでサインであって絶対そうとは限らないです)。
逆に、例えば「1社に10年在籍して転職経験がない」だと、新しい環境にあわせて自分を変えるのは難しいかもと考えます。
■ 職種チェンジ
例えば、技術職→営業職、のように職種チェンジを繰り返している場合、短い在籍年数と同じサインです。ただし、例えば営業職→採用人事職など、連続したストーリーがある場合もあります。
■ 学歴
個人差は大きいですが、高卒/大卒/院卒や学校名で、性格を多少は類推できます。例えば、アメリカ留学してMBAをとった人は、かなりの時間とお金を留学に使う判断をした人で、知的好奇心が強い/キャリアアップ志向が高い/実務より戦略立案が好き、といった共通点があります。
留年も大きなサイン。なお、仕事をしながら大学に通ってた/遊びすぎた/海外留学してた、などいくつかの理由があるので、留年=ダメ、ということではないです。
■ 年齢
これまでの経験上、30代後半にもなると、その後性格が変わることはなく自分を変えられない人がほとんど。だからダメということではもちろんなくて、(性格が変わらないから)相性がぴったり一致しないと不幸なことになるので、より慎重に判断することになります。
■ プロフィール写真
最近は写真がない人も多いですが、ある場合はこれも貴重な判断材料になります。「写りがひどい」とか「目を大きくしすぎでしょ」みたいなのが時々あるんだけど、きれいに写ってるかはどうでもよくて、その写真を履歴書用に選択した人の気持ちを考えます。見た目を重視しないんだなーとか、逆に自分を良く見せたいタイプなのかなーとか。
■ 趣味
とてもおとなしい人だと思ってたのに、趣味が「野外フェス」とかだと、「あれ、ちょっと見落としてるな(仮説が間違ってる?)」と考えます。
■ 会社の社外秘情報
社会通念との絶妙なラインがあるんですが、公開されてない事業の売上高とかがバッチリ書いてあると、モラルを守れない人なのかなーと考えます。
■ 会社/職場の批判
意図的に「批判」を書く人はほとんどいないですが、例えば「チームの業務遂行力の低さを感じたので」みたいな職場のネガティブな情報が書いてあると、その情報を「批判」と思わないんだなーと考えます。
口頭で言うのはアリというかむしろ聞くんですが、誰に見られるかわからない書類にそういう内容があると、協調性があんまりないのかなーと思います。
■ 誤字脱字
1つぐらいなら関係ないですが、3ヶ所以上ある場合は「細かいことを気にしない」「確認しない」人なのかも、と考えます。また、変換ミスではなく明らかに間違った漢字が複数あると、本をあまり読まないのかなー(≒知的好奇心が強くない)と推測します。
論理思考力と相手目線力を判断する
書類の書き方で、論理思考力と相手目線力は結構判断できます。「読み手の気持ちになって書けているか」が見極めポイント。文章が上手下手ではなく、文章の論理構成が美しいか、という観点で判断します。
こんなところをチェックしてます。
・一般常識的に意味が知られていない専門用語を連発していないか
・一文が長すぎる/短すぎることはないか
・時系列の情報が一方向に流れているか
・見出しや箇条書きの並列/階層構造の整合性がとれているか(これがかなり重要)
・各種経歴を西暦で書いているか(和暦だと平成→令和で何年在籍したのかぴんときません)。
etc
全く見てない項目
■ MVP/Award
おそらくリクルートから拡がったであろうMVPなどの社内受賞歴は頻繁に目にしますが、考慮してません。
ほとんどの会社ではMVPは数種類あって、誰でも1回はとれるものから、ほんとにすごいやつまで幅があります。社内の人は見てわかるんでしょうけど、社外から見るとそのMVPの希少性がわからないので気にしません。
■ 実績の伸び、予算達成度
前年対比+XX%、予算対比+XX%、といった記載も頻繁に目にしますが、これも気にしてないです。伸びに対して、その求職者の貢献度がどれくらいかわからないため。また、予算を低く設定すれば予算対比は大きくなるし、外部要因で実績が大きく伸びる、ということもあります。
最大公約数を見つける
履歴書/職務経歴書、面談前後のメッセージ、Zoom設定、面談、リファレンスチェックなどの情報の共通項を見つけて、「こういう人なんだな」と腹落ちしたら、採用オファーする/しないの判断をしています。
すごい感覚的なんだけど、自分の中で相手の人物像が「円になる」のを待っている感じです。
さいごに
私自身、これまでたくさんの採用を失敗してきました。採用面接で求職者を見極める、というとなんか偉そうなんですが、会社と入社した人の両方が幸せになれるように、試行錯誤しながら作ってきた実務的な採用判断基準を今回まとめてみました。
採用オファーを受けてくれたチームメンバーが夢中になって仕事ができて、厳しいプレッシャーを感じながらも、大きな事業成長を達成するプロフェッショナル集団を作りたいと日々思いながら、採用とか人事制度設計とかしています。
今回の記事が、採用に悩む人事担当者や、就職/転職活動に悩んでる人たちのお役に立てたらうれしいです。
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