ロシアによるウクライナ侵攻に付いて今年の初夏ぐらいに考えた事
例によってGoogleドライブを漁っていたら今年の5月ぐらいに書いたエッセイが出てきたんで、せっかくなんで宜しくお願いします。この間に情勢も膠着し、ロシアの行き詰まりを示す報道も増え、カルトに手を出した元首相が無惨に怨恨殺人に遭うなど色々ありましたが、当時考えていた記録として。
本稿を書き始めた当初は「コロナ禍での幸福感」というお題で、流行りのメタバースをテーマにしようと思い、某アプリをスマホに入れたり(※1)、関係する記事や書籍(※2)を読んだりしてネタを温めていた。しかし、2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、根本的に構想を練り直す必要を感じ、大幅に路線変更することにしました。
ちなみに当初は「テレビも持ってないオレもメタバースで最先端の流行にキャッチアップ!不要不急の外出が出来ない君もヴァーチャル52nd Streetでパーカーと握手!」的な浮ついたモノになりそうだった事を告白しておく(一応、マインクラフトのワールドの中に建設された「The Uncensored Library(無検閲図書館)」とかの絡みで「メタバースとアナキズムと陰謀論」的なムリめなテーマに持っていくという壮大過ぎる構想もあった気がする)。そんな中、ヴァーチャル・リアリティでやり過ごすことの出来ない圧倒的なリアルが迫って来た訳である。
ロシアは昨年(2021年)12月ぐらいから、ウクライナの周辺に兵力を集め、ヤッちゃうヨ感を濃厚に出していたので、ずっと緊張して注目していた。なので2月24日に侵攻が始まった時は驚きは無かったが、とうとうホントに来た!というショックは大きかった。「プーチン許し難し!」という熱狂的な感情がメディアを支配する中、地元の立憲議員が「ゼレンスキーの若さとバカさがでた」的な(うろ覚え)コトを呟いて炎上し、トホホな気持ちにもなったりしたのだが、僕も最初は完全にこういった雰囲気に呑まれていた様に思う。
コレから書くことは現在進行中の事案であり、展開も二転三転ありそうだ。停戦後落ち着いてから総括すればまた違った結論になるかとは思うが、開戦時のパニックじみた雰囲気も少し和らいだ今、現時点で何が重要か、拘るべき点は何か、を僕なりに考えてみたい(これを書き始めたのは4月の上旬だが、締め切りまで加筆修正を加える事となると思われる。因みに6月上旬時点ではフランスによる再度の仲裁交渉開始、制裁コストの深刻な増大化によるEUの分断、中露ブロックの強化などを予想する報道が出始めている。)。
プーチンは2011年、平和的デモに治安部隊が実弾を打ち込んだ事から始まったシリア内戦に、アサド大統領側で事実上参戦し、何十万人もの犠牲者を出している。非戦闘員をも容赦なく虐殺している事が一部海外メディアでは盛んに報道されているが、日本国内では未だにさほど関心を持たれてはいない。しかしプーチンがウクライナに侵攻すると、ウクライナでシリアの惨状が再現される事を懸念する人々から声が上がり、今回はメディアも大きく取り上げてきた。シリアと違って。
シリアでの虐殺は許され、なぜウクライナのそれは許されないのか。なぜウクライナ人はレジスタンスでパレスチナ人はテロリストなのか。ブッシュの戦争犯罪、イラク侵攻はなぜ許され、ウクライナに侵攻したロシアは厳しい経済制裁を受けるのか。コレは考えなければならない重要なポイントだと思う。
ブッシュによる他国への侵攻が許されてプーチンのそれが許されないのは、ひとえにブッシュがアメリカの大統領だったからである。アメリカが金と力を持ち、そして金と力を持つ友人を多く持つからだ。我々はそれに従うしか無い。だから彼らがイラクをメチャメチャにし、シリアを見捨てても、誰も大きな声では非難しないのだ。
そしてウクライナはイラクと異なり白人の国である。白人の命はそれ以外の人々のモノより重い。ウクライナの惨状にはシリアのそれとは比べ物にならないほど、白人(がマジョリティの)国家とその影響下にある国々からの同情が集まる。つまり大国による他国への侵略、国家による市民虐殺という同じ事象に対する我々の態度の違いの根底には、レイシズムが横たわっているのではないかということだ(※3)。それは、アジア・アフリカのかつて第三世界と呼ばれた国々が、ウクライナの苦境に驚くほど冷淡である事と表裏一体なのだろう。またこれは、日本人の(ウクライナ人を除く)難民に対する冷淡な態度にもつながる話である。
次に、日本における打倒プーチンの声の裏に中国(※4)対する牽制を感じる点に付いて考えたい。コレはプーチンがウクライナを攻略する事を国際社会が容認したら、中国が将来台湾を侵攻する事に対するOKサインを出すことになる、というものだ。それってブッシュがイラクに侵攻した時点でOKって事になってるんじゃないの?という気もするが、西側諸国がウクライナの求めに従って軍事援助をしている現在の状態が、西側の思惑に従って「ウクライナが戦争させられている」状況に変化する事は十分にあり得る話だ。ましてやウクライナが西側の都合で戦争をやめられない状況に陥る事態は、絶対に避けなければならない。
また、今一度、ロシアだろうがアメリカだろうが、どんな理由があるとしても、どこかの国が他の国家を武力で侵攻する事、ましてや非戦闘員を虐殺する事など決して許されない、という事を確認しておきたい。プーチンのウクライナ侵攻が許されないのは、それを許せば日本に対する中国の脅威が増すからなどでは無く、単純に正義にもとるからである。そして結局、この正義を掲げて守る事が、米中の非人道的な軍事侵攻や、権威主義国家支援を阻止することにつながるだろう。
蛇足として付言すれば、であるならば、日本政府は自国民に対する虐殺行為を続けるミャンマー軍事政権に対する支援をすぐにでも中止し、民主化勢力への支援に切り替えるべきだろう。非戦闘員を虐殺する様な国家を支援する行為は、何度もいうが有害極まりないのである。人道や基本的人権を、能天気に「ポリコレ」などと揶揄する風潮は、やがて自分の首を絞める事になると思われる。
さらに、1999年のチェチェン侵攻の時からプーチンが他国の非戦闘員、更には罪なき自国民までを、何万人も虐殺しまくって恥じる事を知らぬ人間と知りながら(※5)、持ち上げ、貢ぎ、阿る人物を、我々が日本の総理大臣に何年も据え続けてしまった事も総括されねばならないだろう。プーチンに対する阿りには北方領土に対する下心があったのは公然の事実であり、その様なあからさまな不正義を積み重ねた結果、何が起こるかがこの度の侵攻であろう。そもそもプーチンが北方領土を返還する気がさらさら無いコトは、ロシアウォッチャーがずっと以前から指摘しており(※6)、それは合理的に考えれば当然の事だ。外務省も当然それは理解し、官邸に説明していた筈である。自称愛国者が都合よく状況を解釈し、自分に都合の良い未来を妄想した結果がコレである。
かつて我々は「1番やりたい事は中国ともう一度戦争をして勝つ事」と言って憚らない人物を都知事に選び続け、中国との二国間関係を決定的に悪化させた訳だが、この手の極右達の妄想が如何に有害かをもう一度きちんと認識したい。愛国者を自称し、自分に都合良く歴史を修正しようと目論む様な人物に、自国を取り巻く状況を的確に把握し、有効な対応をする事など不可能なのである。それはかつての帝国軍人達を見ても明らかだ。
ウクライナに話を戻すと、ウクライナ東部防衛に於いて今や軍の主力なっていると言われる、所謂ネオナチの問題も取り上げなければならないだろう。プーチンが侵攻の口実とした事で一躍脚光を浴びた彼らは、現在では正規軍に編入されているが(!)、元々はサッカーのウルトラスあがりの民兵組織である(※7)。清廉な愛国者のイメージで一般的な認知度を上げてきた様だが、これは腐敗国家(※8)で極右が台頭する典型的なパターンだ(元々ウクライナはヨーロッパ有数の腐敗国家である。念の為。)。現在も戦場で命を掛ける事に憧れるミリヲタ白人至上主義者を戦闘員として世界中からリクルートし、訓練しているという報道もある(※9)。これまで東部戦線で実績を積みながら、ロシアとウクライナの和平協議をさんざん妨害して来たと言われており、ネット上では、東部戦線に赴いて直接彼らに停戦を守る様説得しようとするゼレンスキーに対し、ヘラヘラと舐め腐った態度を取る彼らの様子が動画で上げられている(※10)。ゼレンスキーが停戦を決断しても彼らを抑えられるかは未知数だ。ホモフォビア(LGBT襲撃事件を起こしている)で極右の白人至上主義者(ロマ襲撃事件も起こしている)であり、現実よりも自分に都合の良い妄想を信じ、それに国家を巻き込む事を躊躇わない彼らは、愛国者を自称し、暴力装置としては有能でも、ウクライナにとっては極めて有害な存在といわざるを得ないだろう。
さらに言えば、戦火から避難しようとごった返す駅の中で、アジア系やアフリカ系の人々が、ウクライナ人により露骨なヘイト行為を含む差別を受けた事も記憶に留めたい。また、中々報道に載らないが、兵役忌避者や反戦活動家に対して苛烈な制裁が加えられているという情報もチラホラ観測される(※11)。ウクライナは、決して真っ白な英雄的抵抗者では無いという事は留意するべきだろう。プーチンに付け入られるような人道上の瑕疵は、ウクライナが元々内包していたモノなのだ。
もう一つ、プーチンが侵攻直前の2月21日に行った演説(※12)において、その妄想じみた歴史修正ぶり、ウクライナに対する差別意識が話題になった。自国に都合良すぎる歴史解釈は極右や愛国者を自称する人々がしばしば行う事だが、それに一国の大統領がハマってしまう害悪が分かりやすく形になってしまったと言える。プーチンのウクライナ侵攻と日本の中国侵略の余りの類似性が多くの人々に指摘されているが、それも宜なるかな、というところである。
こうしてみると、歴史修正主義とレイシズムの親和性、そしてそれが世界にとっていかに有害かがわかるだろう。
もう一点は、この戦争をどの様に終わらせるのか、という事だ。(※13)
とにかくプーチンをなるべく早く止める為に国際社会は出来る事をするしかないのだが、経済制裁に即効性は無く、プーチンが侵略行為を止める見込みは立たないままだ。経済制裁が効いたとしても、ABCD包囲網下で日本がどの様な選択をしたかを考えれば、プーチンの暴発を避けながら、いかに暴力の連鎖を止めるかを考える必要がある。いずれにせよ簡単に上手くいくものではなさそうであり、このままではウクライナがユーゴ紛争の様に泥沼化する可能性さえ指摘されている。そんな中、非戦闘員の被害を抑える為にもウクライナは早期降伏すべしとの論がでているが、ネット上で大バッシングを受けている。プーチンが非戦闘員の虐殺を躊躇わない状況下での早期降伏はリスクが高い、という事も理解できる。当面はウクライナがベターな条件で停戦出来るよう、求めに従って武器供与を続けるしか無さそうだが、同時に先述した様に、西側の都合でウクライナが戦闘継続を強いられる状態にならない様に留意が必要だ。簡単な事では無いが、あくまで民間人被害の最小化を念頭におくべきだ。
しかし、西側諸国がウクライナへの武器供与を増やし、ロシアへの強行的な姿勢を示す程、代理戦争の様相が強くなり、戦争は長期化してしまう。「ココでプーチンを潰しておかないと、今後はプーチン的なものを許容する世界になってしまう。それはあまりにも危険だ。」という考えも有り、中々割り切った結論が出るものではない。
そしてなんとかプーチンを止められたとしても、ゼレンスキーが何かの弾みで失脚すれば、ウクライナが極右に支配される事もあり得る。ウクライナが戦後に極右に乗っ取られた権威主義国家にならない為にも、国際社会は民主主義で選ばれたゼレンスキーが、無事に極右の武装解除に成功するように支援していくしかない様だ。また戦後、更に追い詰められたロシアが、戦間期ドイツの様に、今まで以上に危険な国になって行く懸念も考慮すべきだろう。
なお、この度の戦争報道は大きく扱われるソースのほとんどがウクライナ政府からのものである、という点にも注意が必要だろう。プロパガンダやチェリーピッキングに踊らされぬ様気をつけたい。
付言すれば、代理戦争という観点からは、エマニュエル・トッドが「アメリカがウクライナを利用してロシアを弱体化させようとしている、という指摘は有るけど、中国がロシアを使って米国を弱体化させようとしている、というような指摘はまだないよね」などと言っている様だ。米露ではなく米中の代理戦争化の恐れに付いても留意するべきだろう。
なんともスッキリした答えが見つからない状況だが、引き続き情報を集め考えていきたい。
最後に憲法改正との絡みである。
プーチンが核兵器をちらつかせて西側諸国のウクライナに対する支援を牽制している事も有り、ウクライナが侵略されたのは核兵器を持っていないからだという意見が散見され、さらに日本核武装論をここぞとばかりに主張する、国際安全保障に全く無知無頓着で、軽薄な輩も観測された。
核による戦争抑止論が覆された今、確かに我々は安全保障戦略のアップデートを迫られていると言えるかも知れない(※14)。そんな中、我々の恐怖感情を利用して、今一度日本を「中韓に舐められない様な誇り高き」国にしたいというアホな極右政治家もいるのだろう。そして、もしかしたらこのままロシアの「侵略やったもん勝ち」に成りかねない状況で、極右政治家に中国の脅威を煽られ、パニック陥った我々が秋以降の国会で改憲に突き進む可能性は高い。
我々にとって不幸な事は、この状況下で与党の憲法改正実現本部長が「天皇制度は如何に男系男子による継承維持が歴史的に重要か、神武天皇と今上天皇は全く同じY染色体であることが、「ニュートン誌」染色体科学の点でも立証されている(注:もちろんデタラメです)」などと呟いてしまう様な人物であり、参院憲法審査会では教育勅語の重要性がマジメに議論されているというポンコツな現実である。
つまり我々は近年中に憲法が改正される事、そしてそれはいささかウヨったカルト風味の劣悪なモノになる事を覚悟しなければならないという事だ。高度に民主化されたと思われていた国家が、ふとしたはずみでロシアの様な権威主義国家になってしまう事は、ワイマールまで遡らずとも、近年東欧や中米で実際に起こっている事例があり、日本がそれに続かない保証は全くない。
彼らは報道機関やSNSを統制し、国民をフェイク情報漬けにして適切な判断力を奪う事を躊躇わない(※15)。だから民主主義国家において報道の自由、言論の自由、表現の自由は最も重要なのだ。表現の自由とはエロい萌え絵を公共スペースに貼る自由などでは無く(※16)、国民にとって重要な情報は政府にとって都合の悪いものである場合がある、という事なのだ。我々はウクライナをはじめとした国際状況と共に、日本国内の政治状況も注視する必要があるだろう。「知ること」の重要性はシリアとウクライナの報道をめぐる状況を比較しても明らかなのだから。
愛国者を自称する人々の現実を否認するメンタリティは、陰謀論とも親和性が高い。陰謀論の話はディープステートとかQとか反ワクとか(※17)、エンタメとしても消費可能なオモシロ話しが多いので、不謹慎にも楽しんでしまいがちだが、SNSの普及と共に最早笑っていられるレベルを超え、実社会に多大な影響を及ぼす様になっている。トランプが大統領になっちゃうとか。
しかしこの手の妄想が「愛国心」を取り込んで暴力的でマッチョな美学と結びつくとき、それは破壊的なまでに有害なものになってしまうのではないか。この度書いた事については引き続き考えていきたいが、当面言えることは、妄想に陥ったラウドマイノリティに引きずられて状況判断を誤らない為にも、楽をせずに本を読んで勉強し、正しく適切な知識と教養を深めていきましょう、というコトだろうか。
結局我々は韓国、台湾、オーストラリア、東南アジア諸国をはじめとする近隣の民主主義国家と協調し、友好的な外交関係を結び、権威主義国家に対峙していくしかない。その前提として、日本の民主主義をどう守っていくか、そして、アイデンティティを異にする人々とどの様に適切なコミュニケーションをとっていくか、一人ひとりが勉強していくしか無いのである。この期に及んで近隣諸国へのヘイトと国内分断を煽り、フォロワー相手に金儲けをしている様な論者は、もはや邪悪としか言いようがない。
コロナ禍中、外出を控えざるを得ないこの機会に、ネットばかり見てボケっと陰謀論に取り込まれ、気が付いたら有害な極右レイシストになっていたりしない様に、筋の良い本を沢山読んで知識を深めたいモノです。
上記の考察はいずれも結論を急ぐモノではなく、引き続き忘れずに考えていく必要があるものとして書き留める事とする。
※1.色々調べた結果「cluster(クラスター)」というアプリを選びました。行政機関と提携して「バーチャル渋谷」等を手掛けている企業によるもので、スジが良さそうだったのと、「バーチャルSNS」というコンセプトを謳っていて敷居が低そうだったのが理由です。やってみた結果は「まあオモロいな」ぐらいですが、小3の息子がバッチリハマってるんで、依存性はあると思われる。画面の小さなスマホでやると酔う。
※2.①『ビビビ・ビ・バップ』(奥泉光:著)
前作(『鳥類学者のファンタジア』)は大西順子がモデルとも噂されるジャズピアニスト、フォギーが、40年代ナチス・ドイツからバッパー第一世代の集うニューヨーク、ミントンズ・プレイハウスまで縦横に活躍するオカルト・タイムトラベルSFだったが、こちらは国家が衰退して多国籍企業が「帝国」の様に振る舞うアナーキーな近未来が舞台。VRが重要なネタになっております。フォギーがドルフィーと共に世界を破滅から救う!
②『ホモ・デウス』(ユヴァル・ノア・ハラリ:著)
世界的大ベストセラーになった前作『サピエンス全史』に引き続き、今度は人類の未来について考察する。取り上げらる多岐にわたる膨大なトピックやエピソードはほぼ既出の物だが、これらを繋ぎ合わせ、新しい視座を提示する手法は、深い教養と知性に裏打ちされていて非常にエキサイティング。アハリはフランス革命以来初めての新しい価値の創造が、間もなく為されようとしているという。そしてそれがなされた時、ホモ・サピエンスは消滅するというのだ。「そうです。神は人間の想像力の産物ですが、人間の想像力そのものは、生化学的なアルゴリズムの産物に過ぎません。」人間をデータ処理アルゴリズムとして解釈し、情報の自由が至上の価値となった時…難しいんで続きはまた今度。しかし、イーロン・マスクのTwitter買収騒動は、アハリの言ってる事を証明してる気がするな(適当)。
③『報道の自由を。ゲームの中にできた「検閲されない図書館」』
https://ideasforgood.jp/2021/08/24/the-uncensored-library/
他にも色々記事を読んだりしたけど省略。
※3. 『ホワイト・フラジリティ: 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?』(ロビン・ディアンジェロ:著)
多くの白人が、黒人に対する人種差別を指摘されるとやってしまう過剰な防衛反応はなぜなのか?日常を取り巻く権力関係についての論考なので、レイシズムだけではなく、日本のアンチ・フェミニズムやLGBTを取り巻く言説等を理解するにも応用が利く。ゲイを面白ネタにしている奴に指摘をして激昂されたコトがあるんだけど、まあ当てはまる。ヘテロ男性がセクシストなのは普通の事だし、そこから利益を得ているのも当たり前と…(以下略)。
※4. ①『中国史とつなげて学ぶ日本全史』『世界史とつなげて学ぶ中国全史』(岡本隆司:著)
②『太平天国 皇帝なき中国の挫折』(菊池秀明:著)
③『中国ナショナリズム-民族と愛国の近現代史-』(小野寺史郎:著)
中国関連本など無数にある訳ですが、取り敢えず最近読んで面白かったモノを。日本とは全く異なる風土に異なる政治体制が生まれ、異なる文化のもとで異なる価値観が育まれるのは当然の事ですが、何千年も前から中国が偉大な存在である事は事実なんで、先ずはリスペクトする所から始めた方が良いんではないでしょうか。②太平天国の方は事件的面白さに加えて中国人のモノに対する考え方を知るのに為になった。へ〜そういうなんだ〜、中国人は昔っからアナーキーだったのだね、という感じで興味深い。③は華夷思想に基づく帝国だった中華王朝が、日清戦争後、苦しみながらウエストファリア体制に基づく国民国家になって行く流れをナショナリズムの観点から。「西側」の牛耳る国際社会に対するルサンチマンが、どの様に形成されていったかなど。中国もコレから衰退局面で、だからこその強権支配なのでしょうが、一帯一路とかいうアレの他にも抜け目なくアフリカ経済に食い込んでおり、22世紀がアフリカの世紀に(多分)なる事と考え合わせると、国民国家モデルの衰退が論じられるようになった昨今、中国は新たな帝国モデルを模索してるんだろうなとも思われ、それは権威主義的なモノになるのか、中央権力の希薄なアナーキーなモノになるのか非常に興味深い一方、目先の選挙の事しか考えてないオッサンと老人に政権を任せてる我々は…(以下略)。
※5. 『世界最悪の独裁者プーチンがこれまで実行した「殺戮の歴史」』
https://friday.kodansha.co.jp/article/238031
※6. 『「プーチンは2島返還で決着したがっている・・・」根拠なき定説はなぜ生まれたのか』
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37716
※7. 『ULTRAS ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』(ジェームス・モンタギュー:著)
世界のウルトラスに取材したルポルタージュ。500ページを超す大作。翻訳も良い。ウルトラスとは要するにサッカーのフーリガンの事です。ネオナチが多い(ウクライナのはスタイルはネオナチそのものだが、反ユダヤではなく反ロシアらしい。)。1章使ってあのアゾフ創設初期からのメンバーに取材し、2014年から彼らがウクライナ社会に認知されていく過程が描かれている。ウクライナの腐敗国家振りもよくわかります。ロシアやヤヌコビッチ政権との闘いの中で、元々敵対してたチームのウルトラス同士が、そして遂には反ファシズム勢力とすら団結し、勝利を勝ち取るくだりは感動的なんだけど、章扉裏のニーチェの言葉「怪物と闘う者は、…」がメチャメチャ示唆的。因みにロシアのウルトラスは、あまりにも危険過ぎて取材を断念したらしい。サッカーとナショナリズム絡みでは『サッカーと愛国』(清義明:著)、『橋を架ける者たち――在日サッカー選手の群像』(木村元彦:著)あたりもオススメ。こっちは新書で読みやすい。ウルトラスにはネオナチばかりではなく、アンティファ(反ファシズム)もいるのです。蛇足ですが、左記より在日問題に興味を持たれた方には『ルポ 思想としての朝鮮籍』(中村一成:著/名著!)、朝大生と隣のムサビ生の恋物語等『朝鮮大学校物語』(ヤン・ヨンヒ:著)もおすすめ。
※8. ①『FEMEN(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/FEMEN
②『FEMEN(公式)』
https://femen.org/
ここでフェミニスト団体のリンクを貼るのはズレている様に見えるかも知れないが、ウクライナの腐敗国家ぶりなど何処からでも掘れるので敢えてコレを。創設者のオクサナ・シャチコはフランス亡命後、変死。深堀り推奨。戦時下、マッチョイズムが横行する中で、活動がより大きな困難に直面している事が懸念されている。下記『プーチン政権と闘う女性たち』はおまけ。こちらはロシアの腐敗に抵抗する女性達の視点から。なお、プッシー・ライオットのリーダーはとうとうロシア脱出したらしい。変死しないと良いが。
https://m.youtube.com/watch?v=FBDpS1Dz_qo
※9. ①『極右「アゾフ大隊」、ウクライナの抵抗で存在感 ネオナチの過去がロシアの攻撃材料に』
https://www.cnn.co.jp/world/35185777.html
②『ウクライナ危機の影の主役――米ロが支援する白人右翼のナワバリ争い』
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220129-00279459
※10. ①『Zelensky has visited disengaging area in Zolote』
https://youtu.be/i4NpPh8af9A
②『‘I’m not a loser’: Zelensky clashes with veterans over Donbas disengagement (VIDEO)』
https://www.kyivpost.com/ukraine-politics/im-not-a-loser-zelensky-clashes-with-veterans-over-donbas-disengagement.html
※11. ウクライナのすさまじい軍国主義と反戦運動弾圧:ウクライナの政治家・左翼数百人が誘拐・拘束され行方不明か
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/486916363.html
このブログが参照するソースの信憑性についてはよく判りません。ロシアの作ったフェイクの可能性もある。しかし考えてみれば、総力戦下でこういった事が無い方が不自然な話で、日本もかつての戦時下で苛烈な言論弾圧を行った。ただ、「戦争とはそう言うもの」で済ますべきでは無いだろう。
※12. 『プーチン・ロシア大統領のテレビ演説要旨』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21DCN0R20C22A2000000/
※13. 『戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで』(著:千々和泰明)
歴史学的見地より、「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」、「将来の危険」と「現在の犠牲」という2つの対立概念を軸にして20世紀の代表的な戦争の終結状況を検証する。太平洋戦争に付いては特にページを割いて論じられているが、日本の軍人と政治家は、最初から最後まで妄想と希望的観測で戦争を始め、終わらせようとしたのだな、という事が淡々と事実ベースで論じられていて痛々しい。こんな犯罪的にクソな戦争指導者を「英霊」呼ばわりとかあり得ませんので。読んだ上で今回の戦争に付いて考えれば、最早プーチンによるウクライナ属国化は不可能ぽい以上「妥協的和平」による終結となるだろうが、「将来の危険」は大きく残りそう、という感じ。ロシアからプーチン的なモノを排除するのは相当困難だろうしな。
※14.『戦争とは何か 国際政治学の挑戦』(著:多胡淳)
統計的手法を用いて戦争をめぐる状況を科学的に解き明かし、戦争の発生をいかに防止するかを考察する。第3章「平和の条件」によると、民主主義国同士では戦争が起こりにくく、また報道の自由が担保されている国は戦争を起こしにくい事を示すデータが参照されており、興味深い。日本の事を振り返れば、某一強政権が、公文書を廃棄したり統計を改竄したり国会を開催しなかったりして、情報公開と議会の監視という民主主義のチェック機能をひたすら骨抜きにする事に血道を上げており、そういう人たちはまた「外国がコワイから日本も核武装する!」とか短絡的なコトを如何にも言いそうなわけですが、国力衰退中の国家(もちろん日露が念頭)は戦争で一発逆転狙いがちっつう話で、本書ではマジで日本からやらかす可能性が指摘されてます。まあ、急激に進む人口減少は止めようが無く、男女格差も改善の見込みは無く、在日外国人虐待と円安により世界の労働力市場からも見放され、優秀な人材は外資に流れ、軍事費は増強しても育児教育には投資せず、没落と極右台頭が加速的に同時進行しそうな現在、他国からはそんなふうに見なされてもおかしくないんで、筋悪な憲法改正などしたりしたら色んな国のミサイルがコッチ向くのでわ。と書いてる間にも、賄賂がステキに効果を発揮したり、贈った方も贈られた方も逮捕されなかったりしてて、ホント民主主義、ジャーナリズム頑張れという気持ちです。
※15. 『ロシア、デジタル鎖国で世論操作 政府側、1000万超SNS拡散 偽情報で世界と分断』
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59816300Y2A400C2MM8000/
※16. ①『国連女性機関が『月曜日のたわわ』全面広告に抗議。「外の世界からの目を意識して」と日本事務所長』
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6257a5d0e4b0e97a351aa6f7
②「月曜日のたわわ」を人々はどう見るか 田中辰雄
https://synodos.jp/opinion/society/27932/
コレを書いている時に話題になっていたトピック。ちょっと前までの、「駅構内には「痴漢は犯罪です」のポスターがある一方で、満員電車の中にはエロ週刊誌の広告が普通にペタペタ貼ってある」という地獄の様な状況は少しずつ改善されているのかなとは思うが、この記事が出ると、自民党の某男性議員がイキリ立って抗議を表明したりしており(表現の自由云々とか)、「痴漢を助長する様な表現はやめて欲しい」という話に何を頓珍漢なことを、表現の自由いうなら政治家がマスコミに圧力かけるのやめて欲しい、などと思った次第。②はこの件に関するウェブモニター調査を材料にした統計ベースの論考。イデオロギーを排した中立的視点から。トピック一つにも色んな観点が有り、勉強になります。
※17. 『ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ』(著:ユリア・エブナー)
極右、ミソジニスト、インセル、ジハーディスト、白人至上主義者、Q等の陰謀論者コミュニティについてのルポ。彼らは、家父長制などのヒエラルキカルな世界観を持ち、漠然とした恐怖感に取り憑かれ、被害者意識を内面化してるんだな〜。という感想。そりゃアイデンティティの異なる他者に対して暴力的にもなるよな。そして女性やマイノリティは、異性愛者の白人男性に比して、圧倒的に標的になりやすい。「レッドピル」については検索推奨。チラつく某権威主義国家の影。YouTubeオススメ機能のヤバさなど。ホロコーストはヘイトスピーチから始まる事を思えば、ホント深刻。蛇足ですが、陰謀論に陥るのは娯楽的に楽しい上に、他者による説得不能らしいので、貴方の親が変なYouTube動画に耽る様になったら、ネトフリを教えて海外ドラマにハマる様に仕向けると予後が良いらしい。本書にも対策についての考察はあるが、ヘイトが娯楽なのに比して、カウンターは労働ポイのがネックだよな。アートの可能性について言及されてるけど、やっぱ海外ドラマなのか。