[Chapter6]スティグマは伝染する
「スティグマ」とは日本語で言うと「烙印」。かつて奴隷制度があったときに、奴隷の体にやけどのような形で番号振っていて、それが奴隷であることの烙印だったように、現代では、障害者や女性、LGBTであるとかそういった『人々の集団を定義するカテゴリーに対して貼られ、かつ価値を貶めるようなもの』のことを「スティグマ(烙印)」と呼んでいる.
また、ゴッフマンという社会学者は「スティグマ」を『深く名誉を傷つける属性であり、汚され、無視された人へと弱めてしまうもの』と定義づけている.
東京大学先端科学技術センター准教授である熊谷晋一郎氏は「スティグマ」は伝染する.インフルエンザのように、人から人へうつり、そして蔓延していく.そんな社会現象なのだと説明している.
「スティグマ」が蔓延するプロセスは「きっかけ・ステレオタイプ・偏見・差別」の4段階に分かれており、これを熊谷氏は次のように説明する.
また「スティグマ」には「公的スティグマ」と「自己スティグマ」と呼ばれる2つのタイプが存在している.
ここで大事なのが「自己スティグマ」である.障害者も障害者に対して偏見を持つことがあるのである.女性が女性に、LGBTの人がLGBTに、不登校の人が不登校の人に、偏見を持つことがある.さらに厄介なのは「自己スティグマ」は当事者自身に自己嫌悪の感情をもたらすことだ.「あの人と比べて自分は苦しんでないから助けてもらう価値なんかない」そんなふうに周囲の人間と自分を比べてしまって「助けて」と言えなくなる.(「援助希求行動」が出来なくなる)
また熊谷氏は「自分の努力や意思の力によって克服できると間違って信じられている属性。これがスティグマを貼られやすい」と論じている。依存症やうつ病、ADHD、職歴や学歴などが代表例だ。依存症はよく意思の力が弱いからだ、本人の努力不足だ、本人が結局悪いのでしょうと勘違いされてしまう.こういう属性に対してスティグマが貼られやすい.
また「ここだけがあなたの居場所だよ」と『相手が頼れ依存できる対象を自分に独占すること』を「共依存」と呼ぶ.「私以外はみんなあなたを最終的には裏切るよ.本当にあなたのことを思ってあげられるのは私だけだよ」そんな共依存的な親密さは暴力につながりやすい.ここは○○な痛みを持った人たちのための場所だよ、専門的支援が受けられるから安心できるよ(囲い込み)、そんなふうに真面目な支援者ほど共依存の誘惑に駆られる危険性があることは、重々承知しておかないといけない.
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