ロンドンで、日本の「働き方」がすべてではないと気づいた / 第4回FRaU WFH*(うふふ*) Meeting開催報告
「うふふ*」でハッピーな働き方を考えていこう
2020年8月26日に、第4回FRaU WFH* Meeting(うふふ*) が開催され、86名ほどの方にご参加いただきました。
このミーティングの名前のWFHですが、Work From Home、そしてWednesday Future Hub を表す「ダブリュー・エフ・エイチ」では読みにくいため、関龍彦FRaU編集長のご提案で、先々週から呼び方が「うふふ」に変わっています。
最初に、島田由香さん・関龍彦FRaU編集長・箕浦龍一さん・石川淳哉さんが4人で集まって飲んでいた時にこの水曜朝のミーティングのアイデアが出たというお話が石川さんからありました。毎週水曜日の朝9時から10時の時間帯を、働き方のこれからをリードするための場・エネルギーをチャージできる場にしたい、と島田さん。
FRaUの働きがい号は進めていいと講談社内でも言われているので、この場でいろんなヒントがみつけられたらいいなと思っています。この活動の「うふふ」という呼び名は思いつきから出た言葉ではありますが、ハッピーな働き方につながっていい呼び名だと感じています、と関編集長。関編集長からは、「うふふ」とひらがなで書いたときのルールとして、WFH*にならい、日本語で「うふふ」と書いた後にもにアスタリスクをつけましょう、とご提案がありました。今後はこちらでも「うふふ*」という表記にしていきます。
ロンドンから見た日本の働き方
前半の「働き方の新しい波」のコーナーは、総務省 白倉侑奈さんによる「ロンドンからみた日本の働き方」。
上司でもある箕浦さんから、白倉さんについてのご紹介がありました。
総務省でも3,4年前から若手中心にハッピーな働き方の実現に取り組んできていて、第1期の総務省の働き方改革チームの事務局の柱となって、提言書のとりまとめにあたってくれた白倉さん。2018年夏まで総務省で働き方改革を担当。その後ロンドンに留学され、日本の働き方は何が問題なのか、「ロンドンから見た日本の働き方」という形でまとめたものを、今回発表してくれます、と箕浦さんが話されました。
白倉さんは2018-2020年にイギリスに大学院留学をされ、特に去年から今年にかけてはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのHR(人的資源管理)コースに在籍し、欧米における研究、例えばモチベーションやリーダーシップ、組織行動などについて学ばれました。
ここで学んだことを日本の文脈に当てはめて議論したいということで、昨年12月からイギリスに留学や赴任で来ている、ロンドン周辺に住む20-30代の日本人40名程度からなる「ロンドンから日本の働き方を考える会」を主宰され、先月提言書をまとめられました。今回はこの会から、白倉さんに加え、松永 いづみさん、大塚和慶さんにもご参加いただきました。
この提言は、イギリス大学院生の立場を活かし、20代30代の視点によりまとめたもので、組織への提言と個人への提言のパートに分かれます。
【目次】
1章 本提言書の問題意識と方針
2章 組織への提言:パフォーマンスの向上にむけて
(1)モチベーションを高める職務デザインと評価
(2)ダイバーシティ&インクルージョン
(3)メンバーシップ型からジョブ型へ
(4)チェンジ・マネジメント
3章 個人への提言:変化の時代を生き抜くために
(1)人生100年時代のキャリア戦略
(2)パートナーと考える家族とキャリア
4章 おわりに
2章 (1) について:
白倉さんはモチベーションを高める手法として、職務特性モデルに深く興味を持たれました。国家公務員の職務を説明することに適している理論でもあります。国家公務員は職務の多様性や職務の重要性が高い反面、裁量権とフィードバックの部分は弱くなりがちです。多くの関係者がいて、一人で決められないストレスがあったり、公務の受益者が一般の国民の方で、直接のフィードバックを受けることが難しいのです。
自分がどこに重きをおいて行動すればモチベーションが高まるかを考えたり、部下のマネジメントの際にも役立つのが職務特性モデルであると白倉さんはまとめられました。
2章 (4) について:
チェンジ・マネジメント
人の価値観や組織の文化を変えなければ実施できない「適応課題」を克服し、変革を進めるためにチェンジ・マネジメントの概念を取り入れることが有効です。イノベーター理論を取り入れ、適応が早い人から巻き込むこと。
トップも巻き込んだメッセージの反復的な発信が有効なことは、先週の環境省さんの例でもよくわかります。また行動指針の策定と成功体験の共有をしていきます。
*イノベーター理論:変革に適応できる速さで、5つのグループに分類
イノベーター
アーリーアダプター
アーリーマジョリティ
レイトマジョリティ
ラガード
変革に前向きなグループから順に活動に巻き込み周囲に波及させること、ターゲットとするグループごとにそれぞれ異なるアプローチを取ることが重要と考えられています。取ることが重要と考えられています。
イノベーター理論は、欧米ではレイトマジョリティやラガードがいても、イノベーターやアーリーアダプターがいればいいと強引にどんどん進めてしまう印象があると白倉さん。
具体的にターゲットごとにどういうコミュニケーションをして、どのタイミングでどんな手段で話していくかというコミュニケーションプランをつくっていく。どういう形でコミュニケーションをするとロスがおきないか、イノベーター理論をとりいれながら、長期のスパンでコミュニケーションしているグローバル企業が多い。コミュニケーションの方法は、ミーティングに招待、社内報など、ソフトな方法で行われているようです、と松永さんが加えられました。
提言書の作成過程で、会のメンバーに子供が生まれるなど、プライベートでの変化があってもキャリアを継続できるパートナーシップについても考えようと、組織の部分だけでなく、個人の部分も加えることになりました。
3章(1)人生100年時代のキャリア戦略では、常に学び続けてアウトプットする環境をつくることを述べています。また、3章(2)パートナーと考える家族とキャリアでは、パートナーとともにキャリアをあきらめずに働き続けるために、具体的な例を踏まえて検討しています。育休は同時にとったほうがいいのか、別々にとったほうがいいのか。家事のアウトソーシングの利用など。
実際にロンドンで感じたのは、お互いのキャリアをあきらめずに調整して仕事や学びを続けている日本人カップルが多かったことでした。
個人のパートを担当された大塚さん。
提言をまとめる中で、自分のキャリア形成にどう向き合うかを改めて考えたとのこと。大きな組織だと人事が社員をローテーションしているので、自分のキャリア形成が人任せになり、自分でどうしたいかを置き去りにしていたと振り返られました。
自分でできることを小さなことでもしていこう。そしてこれからお互いの目標に向かっていくときに、中長期の目線でパートナーと二人三脚でやっていきたいとお話されました。
松永さんからは、人生100年時代にパートナーをもつか、結婚するかなどはそもそも個人の選択。ロンドンでは多様な選択が尊重され、それを支える制度が整っていると感じましたとのお話がありました。
白倉さんからは、欧米のモチベーション理論はそのまま日本人にあてはまらないところがあるとの指摘がありました。日本人は自分の健康を損なうなど、生活の基盤が崩れかけていてもモチベーション高く働いてしまう面があり、ここは一般的なモチベーション理論で説明しづらい部分です。今の職場で悩んでいる方が、組織・個人、それぞれのパートを通してこういった視点を感じ取り、今の働き方を当たり前と思わず、一度立ち止まって考えなおすきっかけを得られるような提言になっていると嬉しいです。
93ページからなる提言書を読んでからまた話したいと島田さん。このテーマはもっと深めていけるので、またみんなで議論していく時間を取りたいですね、と石川さんからもお話があり、後半のコーナーへ。
最幸の職場はどこだ?
後半はWellbeing Life イノベーター 栗原大さんから「最幸の職場はどこだ?」というテーマでお話がありました。
ライフシフトを4年前に読んで、働き方を考え直したという栗原さん。
ご自身のチーム作りにおいても、昨年からリモートワーク推奨をしています。
2010年のアメリカ赴任が栗原さんにとっての転機でした。
職場に近い場所に住み、年間300ドル払えばゴルフもやり放題の環境。
日本人補習校の先生を土曜日にやっていて、仕事でもそれ以外の生き方の面でも、今の自分につながるいろんな気づきを得たのだそうです。
もともと出張族でしたが、コロナでこの3月から約半年間のWFH(Work From Home)を継続中で、三食自炊し、睡眠を7時間とれるようになりました。
Zoomによるオンラインの研修やミーティングが多いため、自宅で立ちながら仕事するようになりました。コロナのためジムが休みの時期にトレーニング機器を自宅にそろえました。断捨離したり、植物を多く置くようにしたり、音楽をたくさん聴いたりもしました。
最幸の職場はどこなのか?
オフィス
家
コワーキングスペース
二拠点生活
いろんな形態が考えられます。
オンライン+自然の融合
リアルがあれば、最幸
オフィスは要らない
オンライン✖️自然
どうするのが一番心地よく働けるのか。栗原さん自身、機会あるたびにいろいろ試されていて、二拠点生活も検討し始めているとのこと。
栗原さんのお話をうけて、是非皆さんにとっての最幸の職場を知りたいという島田さんの声もあり、次回は参加者皆さんの最幸の職場を考えることになりました。
関編集長の編集後記
前半のロンドン発の白倉さんのお話。そして後半のアメリカが転機となったという栗原さんのお話。今回は日本を海外から見た視点でのお話でした。
この「うふふ*」の活動で日本の新しい働き方を考えるにあたっては、オリジナルなものにしていきたいと思っています。
日本の思想家、岡倉天心がフェノロサと一緒に欧米にわたって、アジアやヨーロッパなどの影響を受けつつも、日本の美術はオリジナルであることを証明しています。
働き方についても、日本人のいいところ・オリジナルの部分は残しつつも、アメリカやヨーロッパのいいところを集められたらいいのいかもしれません。
今回も関編集長が明快にまとめてくださいました。
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Facebookグループでもどんどん自分の思いを投稿してください。どこかでアウトプットして1ミリでも動いてほしいです、と石川さん・島田さん。
この動画をシェアして、「うふふ*」に仲間を呼び込んでいただけるとありがたいですと石川さん。参加のお申込みはPeatixをご案内してください。
https://peatix.com/event/1591359
動画
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次回は明日9月2日です。
前半の「働き方の新しい波」のスピーカーは、
「ワーケーション From 福井県高浜町」
福井県高浜町役場 野村つとむさん
後半の「ここでは参加者みんなが主役。お悩みコーナー」は、
「皆さんにとっての最幸の職場とは」を考えます。
お申し込みはこちらから。
このリンクで一度お申込みいただければ、次週以降についてのミーティングのご案内も毎週お送りしますので、ぜひご登録ください。
文:宮崎恵美子
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第0回(2020年7月29日レポート):WFH*については、こちらでご覧ください。
https://note.com/teamwaa/n/n22a021812f1d
WFH*の読み方は「うふふ」 / 第2回FRaU WFH* Meeting開催報告(2020年8月12日レポート)
https://note.com/teamwaa/n/n18a7a94ee6fc
政策につながる組織のミッションとして行えたからこそ、環境省の「選択と集中」プロジェクトは成功した / 第3回FRaU WFH* Meeting開催報告
https://note.com/teamwaa/n/n1b74d08d63dc
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