自分史コラム 自分の「寿命」について
私がライフワークにしている自分史では「過去の事実は変えられないが、過去の解釈は変えられる。そしてその解釈をしているのは現在の自分で、その現在の自分をはっきり自覚することで、未来にどうなりたいかが明確に見えてきます」とお伝えしています。
つまり自分史とは、過去を振り返りながら、実はすごく未来志向のものなんだということ。
これは実際に自分が自分史活用アドバイザーとして活動しはじめてから、ハッと気づき、すごく腹落ちしたことなのです。
それ以来私はこのことを最重要テーマの如く繰り返して伝えてきて、聞いてくれた方は全員とは言わないまでも、前向きに未来を捉える意識をもってくれたと感じています。
しかしその「未来」も永遠ではありません。
「人間は生まれた瞬間から死に近づいている」ということばのとおり、時間は確実にすぎていきます。そしていつか自分の「寿命」が必ず訪れ、次の世界へ旅立つことは紛れもない真理なのです。
そんなことを考えていたら、友人がこの本を教えてくれました。
自分の寿命、実感ある?
この本の著者で医師の小澤竹俊さんは、横浜にあるめぐみ在宅クリニック(在宅療養支援診察所)の院長で、一般社団法人「エンド・オブ・ライフケア協会」の理事をされています。
1994年からホスピス(終末医療)に関わり、3500人を超える患者さんの最期を看取る経験を通じて、こうした教えを「いのちの授業」として全国の学校で講演しながら、この本含め著書を7冊発刊。NHKスペシャルなどTVにも取材された著名人ですが、私はいつものことながら存じ上げませんでした(汗)。
教えてくれた友人は、私が以前にここで紹介したイネイト活性療法を受診した結果ガンが見つかり、自分の生命について考えるためにこの本を買ったと教えてくれたのです。
この本は「人生を変えたい」と願う人への小澤医師からの問いかけとメッセージ。タイトルの通り、寿命が告げられ、人生の終わりに直面しなくてはならなくなった患者さんたちからの教えがたくさん綴られています。
読み始めると、私が自分史講座でお伝えしたいことがそのまんま書いてあり、「そうそう!そうなんですよね!」という思いから、前回紹介した川原卓巳さんに続き、驚くほどのスピードでスイスイと読んでしまいました。
しかしそれと同時に、この本に書いていることは真理でありながら、7冊もの本になり、大きな話題になっているという事実は「もしかしたら自分の寿命について考えていない人がそれだけ多いということなんじゃないか?」という思いが浮かんできました。
いまこれを読んでくれているみなさん、どうですか?
自分の寿命、リアリティをもって感じてます?
または想像したことありますか?
答えが出ないことだからこそ
とはいえ「そんなこと、いきなり言われても…」という人がほとんどだと思います。
私だってそう感じないわけじゃない。自分の寿命がいつかだなんて、普通に生きれている人は日々の生活のなかで実感、想像することはまずないでしょうし、その理由は山ほどある。
そんなネガティブなことを考えたくない、忙しすぎて考えるヒマがないとか。それは十分理解できることです。
また以前、ある企業で自分史を軸にした私のワークショップを受けてくれた、若くて優秀な社員の方々のほとんどが、終了後の感想で「自分のことを振りかえったことがなかった」と言うことに驚きました。
自分自身のことすら振り返る習慣がなければ、自分の寿命なんて、考えたくもない、というのも本音でしょう。
でも、今の時代に本当に求められているのは、この寿命のように「考えても答えが出ないことを想像し、学んでいくこと」なんじゃないかと私は思うのです。
かくいう私も「いま普通に生きれている」ことが奇跡なんだと、この年になってようやくしっかりと思えるようになりました。
それは20歳くらいのとき、海で友達を助けようとして一緒に溺れかけたことと、2011年の東日本大震災、そして両親の死が大きかった。
「人は望む望まないに関わらず死ぬときは死んでしまうのだ」という厳然たる事実を前に「私自身がいま生きれているということが奇跡、つまり生かされているのだ。たとえそれが明日終わるとしても。だから今を精一杯生きよう」と学んだのです。
これはあくまでも私のケースで、そうした経験がないとダメとか、こう感じることが正しいとか、ましてや不慮の死を肯定するつもりは全くありません。
ただ、もしいまのあなたが、本当に自分らしく生きているのか、またはそんなことすらも感じないまま生きているのだとすれば、この「寿命」というド直球な問いに対する答えについて考える、想像することが、大きな気づきを与えてくれることは間違いないと思います。
寿命を考えることは怖いかもしれない。でもそれは自分史で過去のネガティブな記憶に向き合うことも同じです。
いずれにしてもその事実に向き合い、どう解釈するかは自分次第なのです。
私が知るかぎり、今を精一杯輝いて生きている人は、多かれ少なかれこのテーマに向き合っていることは間違いありません。
過去、そしていま、未来の自分に向き合い、少しずつでも消化していくことができれば、生きれていることに感謝の気持ちが生まれ、前向きになり、人生はもっと色鮮やかに目の前に見えてくるはず。
私は先ほど、小澤先生が書いていることと同じ思いを持っていると書きましたが、彼のような体験をしているわけでもありません。
ただ、私自身が「自分は人の役にも立たず、逆に迷惑や心配ばかりかけてなんで生きているんだろう。自分が生きている意味、使命ってないんだろうか」と悩んでいた時間は小澤先生よりも確実に長かったことだけは間違いありません。
そこからいろいろな人の助けを借りながら、自分なりに得てきたモノだからこそ、こうしてお伝えできるという自負があるのです。時間はかかったけども、気がつけて本当に良かったと思っています。
もし、自分の使命みたいなものが見つけられず、モヤモヤしている人に、このコラムや小澤先生の言葉が届いてくれたら、こんなにうれしいことはありません。
仲間の一人として、私も参加させてもらい、寿命が尽きるその日まで、一緒に並走していけたらと思っています。
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映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等の…
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