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かかりつけ薬局を持つということ

   薬局のことを書こうとして、そう言えば、かかりつけ薬局を持ちましょうみたいなキャンペーンがあったなと思い出した。いつ頃のことだったかと気になり、調べてみると2016年にスタートしたれっきとした制度のことらしい。2016年の調剤報酬改定ではかかりつけ薬剤師指導料が新設されたということらしい。ということはかかりつけ薬局・薬剤師というのは法律用語なのか。
   そうとは知らず、私が書こうとしていたのは言葉そのものにおいての「かかりつけ薬局」のことである。しかし、結局は行き着くところは同じなのでさほど差異はないかもしれない。
    あつぼんは、生後8ヶ月で病気の確定診断がついたその日から大量の薬を処方された。当時の大学病院はもう院内処方はしていなかったので、自分の希望する薬局に処方箋をFAXしてもらうサービスがあった。ご自宅の近所の薬局はどこですか?とそのスタッフに問われても、まだいまの家に引っ越して半年程度で、土地勘も全然なかった私は、住んでる町そのものではないが、住所から察するに近隣だろうと思われる薬局を勘で選び、送ってもらった。
    FAXしてもらったものの、実は薬局の場所もわかっていなかったので、おそらく初回であったこともあり、こちらから電話したんだったと思う。生後半年ちょっとの赤ちゃんに、通常では考えられない量と種類の薬を突然 調剤依頼された薬局さんも、いま思えば面食らったことだろうと思う。その時の私には薬剤師さんの気持ちを推し量る余裕はなかったのだが。
   しかしファーストコンタクトで、私は「この人は信用できる、きっと頼りになる」と直感的に思った。その薬剤師さんは自分の不明な点を主治医の先生に直接電話して確認してくれ、ご自身もしっかり理解、納得した上で請け負ってくれたからであった。さらに「お子さんもまだ小さいのにおうちを簡単には出られないでしょうから持っていきますね」と言ってくれた。薬剤師さん側からするとごく普通の職務の一環であったのかもしれないが、当時のまだ息子のわけのわからない超難病告知に打ちのめされていた私にとっては、初めて心許せる医療専門職の人との出会いであったのだ。人に寄り添うということはこういうことだなと思う。
   以来、最初の直感は外れることなく、今日に至るまで15年以上に渡り、ずっとお世話になっている。あのとき、その薬局を選んだことは、本当にラッキーというか引きが強かったのだと思う。あつぼんは、そういう意味で「持ってるヤツ」だった。
   医師に聞きそびれたこと、聞いたけどいまひとつ理解できなかった薬のことなどもついついその薬剤師だと気軽に教えてもらえる。たしかにかかりつけ薬局・薬剤師を持とうということには理がある。
   実は息子のことだけではない。コロナ禍においても非常に心強かった。家族に感染の疑いが出たときも(というか私のことであるが)すぐ連絡し、試薬を使わせてもらった。このフォームを入力すると家族分のあともう1セット渡せるから、お守り代わりになるよと薬剤師ならではの情報と提案もしてくれた。
   市場に薬が品薄になったときも(一時期去痰剤がめちゃくちゃ品薄になったことがあった)、いつもなんとかして工面して、きちんと処方分の薬を手立てしてくれるのも、本当に心強い。今では私は自分の花粉症の薬まで調剤してもらっているので、足を向けては眠れない。
   医療的ケア児と暮らしていると、ふとなにかのボタンの掛け違いや、急な体調不良などで、あっさり窮地に立たされることは実はままある。しかし、こと薬のことに関しては我が家は絶対的な味方がいる。これだけは揺るぎない。
    

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