見出し画像

【映画感想文】映画『ラストマイル』- 目まぐるしく展開される物語と生々しい描写の連続は 話題性をも超え...

映画『ラストマイル』を鑑賞してきた。
観に行きたい!と思ったのは、単なる話題性と 星野源が出ているから(ファンなので)、というのでしかないのだが、
ふと思い立ち 定時退勤をしばいた足でミッドウィーク鑑賞。

東京に越してきて(戻ってきて) 映画館が生活圏内になったのは 浪漫があってわくわくする。

もとよりドラマ『MIU404』を全話視聴してから 満を持して映画鑑賞に挑もうと思っていたが、
なにぶんドラマを見通せる時間も集中力もないもので、その気でいたらきっと逃す気がしていた。
ドラマ『アンナチュラル』×『MIU404』の役者揃い踏みという話題を除き、ほぼ予備知識なしで鑑賞したのだが、
結果的にドラマを見ていなくても問題なく鑑賞できる内容であった、が、
いやはや、ミッドウィークに軽い気持ちで観るもんじゃなかったな、と思った。いい意味で。
集中力皆無につき ドラマ通でも映画通でもない自分だが、ネタバレを極力避けつつ 言葉を選んで それでいて緩く雑感を残したいと思う。

前述の通り 星野源みたさで鑑賞した自分は、映画のストーリーと演出の迫力にまんまと現を抜かしたわけだが、
鑑賞し終えた直後は 抜け殻となっては「星野源ほぼ出んのかい!」というまあなんとも薄い感想にふわっとした感情が上乗せされていた。
(星野源の出演量の少なさは 本人が『星野源のオールナイトニッポン』で言及されていたようですが、私その時間は就寝しております)
そのふわっとした感情が 日を跨いでじわじわと蘇ってくる感じがある。

自分自身、バイト時代には物流業界に従事していたこともあり 何かと感情移入できる内容だった(映画予告も観ずに鑑賞したため あらすじもつゆ知らず)。
バイトは 早朝5時から3時間半ほどの荷物の仕分け作業という単純なものではあったが、
夏は暑く冬は寒く暗い朝から力作業というだけで充分精神的にも体力的にも堪えたし、悩める時にはボロボロ泣けるくらいの仕事ではあった。
数時間のバイトでさえこんなんなのだから、ドライバーさんの苦労は計り知れるものではない。
私的利用で配達を依頼しては 忙しない動きの中にも愛嬌を忘れないドライバーさんを相対して、本当に頭が上がらないなと都度思う。
工場での検品の仕事に就いた時には ひたすらベルトコンベアが行き交い、トラックに荷物を乗せ終わると同時に別のトラックが出入りする。
ネットショッピングの普及により、近年は派遣社員を取り入れた仕分け業務、委託業者による配達などの動きが盛んになってきている。
物流現場の過酷さを目の当たりにしてきた自分にとって、それらがまざまざと反映される描写の数々には なかなか刺さった。
目まぐるしく進む映画のストーリーには少なくとも日本の現実とはかけ離れた迫力がありつつも、
自分たちの生活から切っても切り離せない物流業界の生々しい部分も見て取れた。
言ってしまえば 話題性のみで語れるような映画ではなく、社会風刺をリアルに描写した緊迫感溢れる映画でもだった。

定時退勤の軽い気持ちで向かった映画館で、映画が始まる前にほとんどポップコーンを食べ尽くしたことが功を奏し、
手に汗握る展開で文字通り手に汗握り、ポップコーンに目を遣る暇もなく あっという間にストーリーが進んでいった。
それなりの覚悟も心の準備もせず観に行ったわけだから、それはそれは抜け殻にもなろう。
一夜明けた今でもなお、ふわっとした感情を生む余韻がじわりと残り続けている。
いろいろな人のレビューに目を通したいし、結果的に観ていない『MIU404』などの作品もより観たくなったし、
あわよくばもう一度映画を観たっていい。いやはや、映画を観てこのような感情になったのは久々だ。
シェアードユニバースムービーという話題性も含め、演出的にも非常に満足感の高い映画だったように思う。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?