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「Obasan」〜日本人の血を引くという理由だけで所有物を失い勾留された日系カナダ人の歴史〜

"Obasan"はカナダの小説家、詩人であるジョイ・コガワさんの自伝的小説のタイトルです。
(1981年、邦題『失われた祖国』)

ジョイ・コガワさんは日系二世のカナダ人です。
第二次世界大戦において、真珠湾攻撃をきっかけにカナダ政府は日本人を祖先に持つ者を排除する命令を出しました。
日本人の血を引く者(つまりカナダ国籍を持つカナダ生まれのカナダ人である二世の方々も含みます)は有無を言わさず持ち物の所有権を失い、手紙は一言一句検閲され、家畜展示場に強制収容され、戦後になっても子ども大人に関わらず農場での労働を強いられる生活となりました。

本の中では子どもからの目線も含め、当時の状況や情緒が見える景色や人々の様子から見て取れます。

「歴史は繰り返す」
ということばを聞いたことがあります。


手法は違えど、人間の心理というのは簡単に操られてしまうものなのでしょうか。


"Obasan"のような歴史的事象に基づいた話を読むと、
歴史を知ること理解すること全く違うと気付かされます。

学校では歴史を「知る」(テスト前にことばと年号を暗記してテスト後すぐ忘れる程度の認識)ことに何の意味も感じませんでした。

Q:括弧に適切な年号と名称を埋めなさい。
(A)年ー(B)攻撃:第二次世界大戦において日本軍がハワイのオアフ島にある(B)に在泊中のアメリカ太平洋艦隊主力および同島の航空基地を奇襲し,大損害を与えた。

恥ずかしながら学生時代一番嫌いな科目は「歴史」でした。↑このようなテスト形式でただの暗記科目だと思っていましたので。

現在の学校現場では指導内容が改善されていることを願いますが、少なくとも私は当時学校で歴史を理解するまでに至りませんでした。

ようやくここ数年になって出来事の背景や、その結果どうなったのか、その出来事に関わった人々がどのような想いだったのか、、、

そんな風に歴史を理解したいと思うようになりました。

“You know those prisons they sent us to? The government called them ‘Interior Housing Projects’! With language like that you can disguise any crime.”
私たちが連れていかれた拘置所を知ってる?政府は「内部住宅計画」って呼んだの!そんな言葉の綾でどんな犯罪も誤魔化せちゃうの。

Joy Kogawa “Obasan”

“People who talk a lot about their victimization make me uncomfortable. It’s as if they use their suffering as weapons or badges of some kind. From my years of teaching I know it’s the children who say nothing who are in trouble more than the ones who complain.”
被害者面してやたらと話す人は不愉快です。自分の苦しみをどこか武器や勲章のように利用しているような気がして。長年の教師経験から、文句を言う子よりも本当に困っているのは黙っている子だと知っています。

Joy Kogawa "Obasan"

“He knows the war was just an excuse for the racism that was already there. We were rioted against back in 1907, for heavens sakes! We’ve always faced prejudice. He knows we were no military threat. So what is he saying? That the innocent should be made to suffer for the guilty?” She was almost spluttering. “That’s scapegoatism. As long as we have politicians and leaders and media people who feast on people’s fears, we’ll continue making scapegoats.”
戦争は元々あった人種差別の言い訳に過ぎないと知っています。1907年に暴動を起こされたんですよ!日系人はずっと偏見の対象。軍事的な脅威ではなかったと知っているはず。なのに何て言ったって?「罪のない人が罪人のために苦しめられなければならない」って?
「それは誰かを悪者扱いして罪を逃れる主義なだけよ。人々の恐怖心を煽る政治家や指導者、メディア関係者がいる限り、スケープゴート(諸悪の根源のレッテルをいつも貼られる存在)を作り続けることになるわ。」

Joy Kogawa ”Obasan"


"I am Canadian."というフレーズも文中何度も出てきます。
それに対し、ご家族親戚は日本で生まれ育ってカナダにやって来た一世の方が多い環境のため、日本語のフレーズやお風呂で背中を流し合うといった日本らしい文化なども表現されています。
カナダで生まれ育ったカナダ人だけれど、自身のルーツとの間にいるような苦悩、カナダ人なのにカナダで人種差別される不平等な社会の中での葛藤、そういった人間の情緒や不都合な出来事を忘れた時、人々は同じ過ちを繰り返すのでしょうか。

"The past is the future."
過去が未来。


そんな本の中に出てきたフレーズも心に刺さりました。

どんなに行き詰まった状況でも、朝目が覚めたのなら、それだけで奇跡。

想像を絶する苦難を乗り越えた人生の大先輩達にもっともっと学ばなければいけないと、本を読み終わった後感じました。



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