「ドーシャを体験しよう!」三浦まきこ先生
サンガ新社&ティーチャーズ共同開催、オンラインサンガOPEN企画 【ヨガの世界観をカラダで味わう】全5回の3回目 「ドーシャを体験しよう」が開催されました。(クリパルヨガ教師松倉福子さんによるレポートです。)
三浦まきこ先生は、パートナーである三浦敏郎先生と共に「クリパル・ジャパン」を拠点に、長年クリパルヨガの日本への普及に努めてきました。
クリパルヨガは、1970年代にインドからアメリカに渡ったインドの伝統的なヨガの流派です。その特徴として、個人の体験を尊重し自己探求を促すことが挙げられます。クリパルヨガの本拠地クリパルセンター(米国のボストン近郊)にアーユルヴェーダ学部が出来たのは2005年。今回は、そこで研究開発されてきた「クリパル・アーユルヴェディック・ヨガ」を体験しながら3つのドーシャをカラダで味わうというプログラムでした。
「クリパル・アーユルヴェディック・ヨガ」は、アーユルヴェーダを現代のライフスタイルに合わせ、理解しやすくし、ヨガに融合したものです。私たちは、5大元素を基とする3つのドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カパ)すべてを、一人ひとりがそれぞれに違った割合で持っています。クリパル・アーユルヴェディック・ヨガは、ドーシャに働きかけるヨガの呼吸法やポーズを行うことで、バランスを整え、心身を健やかにし、個人の持つ力を最大に引き出すことを目的としています。(クリパル・ジャパンHPより引用)
アーユルヴェーダとは
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語でAyus(生命)+Veda(知恵、科学)を意味し、「生命の科学」や「生命の知恵」と訳されます。
5000年の歴史を持つインドの伝統医学システムで、人間を個人としての単体としてではなく、世界やまわりの自然、宇宙全体の中の一人としてとらえます。調和を大切にし、それにより全体性を高めるものと考えます。そして生命を身体、マインド、魂、感覚をとおして(複合的に)全体としてとらえます。
アーユルヴェーダの世界観
5大元素(空、風、火、水、土)で世界が成り立つというサーンキャ哲学がベースになっています。トリ(3つの)ドーシャ(性質)とは、ヴァータ(空と風)、ピッタ(火と水)、カパ(水と土)をさします。
ドーシャが持っている質(グナ)は20のペアがあります。
(※第1回目で扱ったトリグナ(サットヴァ、ラジャス、タマス)はマハグナとよばれ、アーユルヴェーダでいう20のグナとは別領域となります。)
(今回の講座では扱われませんでしたが、20のグナの質のペアについて参考としてご紹介いたします。)
・重い / 軽い
・遅い、鈍い/鋭い
・冷たい / 熱い
・油っぽい、湿っている/乾いた
・滑らか / 粗い
・固体 / 液体
・軟かい / 硬い、鋭い
・静か、不動 / 動く
・小さい、微細 / 大きい、粗大
・濁った、粘り気がある/透き通った、粘り気がない
これらのドーシャ中でいずれかの質(グナ)が増えすぎると、悪い症状を起こすと考えられています。ドーシャがバランスがとれていてサットヴァな状態でいればいいのですが、私たちは周りの環境やそこから取り込むもの(食べ物、体験)全てによって常に変化しています。当然何かが極端に増えすぎることもあり、不安定になり不定愁訴が出てきます。
●ヴァータがもつグナ: 軽い、動く、冷たい、乾いている
軽くて不安定で動きまわるヴァータは、増えすぎると落ち着きがなくなり、考えがグルグル回って眠れなくなるという症状を起こしやすい。冷えや乾燥が元になって起こる疾病(便秘、関節の痛み)や症状(体の冷えや乾燥)がある。
●ピッタのグナ: 熱、鋭い、軽い、液体
ありとあらゆる炎症(口内炎、胃腸炎、皮膚炎、膿み、逆流性食道炎、下痢、イライラ)を起こしやすい。
●カパのグナ: 重い、冷たい、湿った、粘性、安定(不動)
重だるさからくる不定愁訴。例えば、倦怠感、無気力、肥満、固執、むくみ、浮腫など。
アーユルヴェーダの二つの法則
・同質は助長させ、
・反対の質は調和する
アーユルヴェーダはとてもシンプルです。
それぞれのドーシャの反対の質を増やすことでバランスをとることができるとされています。だからセルフケアでも、反対の性質を持ったケアをすることで体の調子を整えていきます。例えば、ヴァータのケアをするときは、ヴァータの構成要素「風と空」から生じる性質「軽い、動く、冷たい、乾いている」とは逆の要素、すなわち「重い、不動、温かい、湿り気」を増やすよう意識をします。
そして、調和させるときにはワン・ポイントがあります。それは「8対2の法則(極端にならず中庸を目指す)」。つまり、陰陽図で「白の中には小さな黒がある。黒の中には小さな白がある」ということです。「全部が黒/全部が白」と極端な働きかけをするのではなく、そのドーシャが持つ基本的な性質を残しつつも全体として反対の質を増やすといういう働きかけをするのです。あくまでも調和を大切にしたアーユルヴェーダの世界観が現れていますね。
主座
ドーシャには主座といわれる「ホーム」のようなものがあり、そこに意識を向けるていきます。意識(心、チッタ)を向けたところにエネルギー(プラーナ)が流れてバランスを取ることができます。
それぞれのドーシャの主座は次の通りです。
ヴァータ:大腸
ピッタ:小腸、胃の下部(アグニの近く)
カパ:肺、胃の上部
実践:3つのドーシャの体験
実践編では3つのドーシャを、それぞれクリパル・アーユルヴェディック・ヨガを通して直接体験していきました。三浦まきこ先生のインストラクションにそって、各ドーシャに意識を向けることで、反対の質を増やしバランスをとろうとするのです。つまり、五大元素やグナの声掛けを通して必要なところに意識を向けて、どの辺りに注意が向くか。そしてどんなフィーリングがあるかに気づていくということです。
3つのドーシャごとに、ほぼ同じシークエンスを繰り返しました。ですが、意識の向ける先により形の上でヴァリエーションが生まれ、体験が全く変わってきます。では、それぞれ、見ていきましょう。
①カパを調える体験 (水+土/肺、胃の上部)
「胸を開く、自力で上に伸びる、身体の中のスペースを感じる、口角を上げる、ハートにたっぷり呼吸を送る、手のひらを上向き・・・」などの言葉がけにより、カパの持つ「重い。冷たい、湿った、粘性、安定(不動)」というグナに働きかけ、中和させます。
例)木のポーズ
(軸足に体重をのせ、反対のつま先をブロックに乗せ(または直接床に)膝を外側に開く。両手Vの字で指先を上へ胸に注意を向ける。目線、口角を上げる。)
②ピッタを調える体験 (火+水/お腹)
「空間を作って風通しを良くする、股関節を開く、静かなスムーズで音のない呼吸、お腹の真ん中を意識する、余分な熱を外へ、サーダカピッタ(知性の脳)を静める・・・」などの言葉がけが印象的でした。
例)木のポーズ
(軸足に体重をのせ、反対のつま先をブロックに乗せ膝を外側に開く。両手の指先を合わせて合掌。口の中のスペースを広げ、両手を前へ伸ばし横に開く。手の平上向き。滑らかな呼吸。ポーズの後は沈黙を味わう。)
③ヴァータを調える体験 (風+空/大腸)
重さのあるもの(クッションやブランケット)を身体の上に置く。手の平を下向きにする、腹式呼吸、身体にふれ温かさを感じる、ウジャイ呼吸で摩擦により熱を出す、床を意識する、骨を感じる、身体を小さくコンパクトにまとめる・・・などの言葉がけがありました。
例)木のポーズ
(軸足の裏で床を押し、足の指先下へ、膝を開く。腰に手を当て腕力で腰と足を下に下げ、目線床に息を吐く。手を下げてムドラを作ってもいいい。足、下腹部を感じる。)
3つのドーシャを整えるヨガの体験を終えて
はじめの ①カパを整える体験では、胸を開くことでザワザワしている気分が高揚しました。一方、②ピッタを整える体験では、鋭さで心を集中させながら穏やかさや広がりのある動きをすると、思考で忙しかった頭の中がぼんやり緩んで眠くなりました。そして最後の ③ヴァータを整える体験で下半身や骨を意識して体に触れることで、自分とつながり大地とつながる体験になりました。
同じポーズでも3つのドーシャそれぞれの体験が違うことに気づいた。またドーシャの比較や五大元素やグナによる違いやつながりが感じられました。アーユルヴェーダを学び続けている三浦まきこ先生の声かけは、それぞれのドーシャによって話し方や声のトーンまで微妙に変化しています。ポーズとポーズのトランジションの動きも、ドーシャ別の違いを感じて更に意識を集中することができました。
私自身は眠りが浅かったり、つい動き回ってしまう性質なので、ヴァータを整え、ケアすることが最も必要だと常々感じています。でも同時に自分の中にそれぞれのドーシャの種があることにも気づいています。今の自分を知ることにつながる喜びがあることも感じられました。
甘み、辛み、苦み、塩辛さ、酸っぱさ・・・様々な味を深く味わうように、カラダを深く味わい探究していきたいと思いました。そして「ヨガの世界観をカラダで味わう」のシリーズを通して体験することが豊かな学びなのだと改めて感じ始めています。
(より深くアーユルヴェーダを学びたい方に… 10月31日(日) 10:00-12:00 【オンライン講座】秋のためのアーユルヴェーダ 〜ゆったりヨガとオイルケア〜 三浦まきこ先生 https://kripalu.jp/product/28182 )
文責:松倉福子
米国クリパルセンター公認ヨガ教師(500時間)/マインドフルネス瞑想指導/朗読家。https://fukuko.yoga/