![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/91004845/rectangle_large_type_2_8c0ef2373c4aaed485bbbde883763d39.png?width=1200)
対人援助職のためのシェアリングサークル開催レポート #2
対人援助職を職業にされている人に向けたシェアリングサークルの第2回目が、マインドフルネス・ビレッジ内にて開催されました。ファシリテーターは、群馬県内の児童養護施設や公立中学校にて勤務するソーシャルワーカーであり、マインドフルネスの在り方を日々探求されている内田範子さんです。
シェアリングの体験を含め、ビレッジのヨガ講師 山田直さんが開催レポートとしてまとめてくださいました。
「深いグランディングから始まる」
月に一度のペースで開催されるこのシェアリングサークル。前回終了後の内側からじんわりと湧き上がる温かな感触を思い出しながら、今回もとてもリラックスした心持で参加させていただきました。
参加者は医療・福祉・介護などの現場で働かれている方や、対人援助職を目指す方、ヨガ講師などで、幅広く門戸を開いてシェアリングの場を温めていただきました。
ファシリテーターである内田さんの飾らない、だけれども心にスーとストレートに染み込んでくる言葉のリードによる瞑想の時間から毎回始まっていきます。これがとても心地よい楽しみのひとつ。
家にいてもいつもフワフワと落ち着かない私たちの心を、まずはここに座っているというリアルな感覚に向けさせてくれ、それの土台である建物、それが乗っている大地、そしてそれら全てを支えてくれている地球へと意識を拡大していくと、私という存在が頑張っていてもそうではなくても、無条件に支えてくれるものがあるんだという安心感に包まれていきます。深いグランディングです。
その中でただ呼吸を感じ、今ここにいる温かみの中で瞑想を終え画面に戻ってくると、すでに満たされた気持ちのなかに自分がいることに気づきます。心を開きお互いにシェアし合うには、まず日常のモードから離れ、この自分自身に戻る心持ちをお互いに持ち合うことが大切なのだと実感します。そしてこの場への安心感が自然に高まっていきました。
「現場の苦悩をわかりあう」
そして今回のシェアリングのテーマは「現場の苦悩」。
対人援助やケアをする人の現場には不規則な労働時間や、低賃金、感情労働による疲労や高い離職率、人材不足など本当にたくさんの大変な課題があり、その現場の苦悩は計り知れません。
それをどんな場面で感じるのか?
その時どんな身体感覚を感じているのか?
そんなことを3人1組に分かれて、お互いにじっくり話し、聴き合いました。
私たちのグループは、みなヨガの講師でした。
他の多くの業界がそうであったように、ヨガの業界もコロナ禍に入ってからというもの、多くの変化を強いられました。外出制限によるクラスやスタジオの閉鎖、手探り状態で始めた慣れないオンラインでのクラス開催、リアルなクラスが再開してからも生徒さんとの接触が制限され、身体的にも心理的にも距離感のある指導形態へと変化しました。
またマスク着用による息苦しさは、呼吸をとても大切にしているヨガにとって、今だに大きな足かせとなっています。
そんなこの2年間の想い、そして今の現状をお互いにマインドフルに聴き合い、語り合い、わかりあい、理解を深めました。その時の自分の身体感覚を振り返ると、肩のこわばりや、のどや胸の奥のつかえなど感じ、押し込めてきた自分の感情にも触れていったような気がしました。
私のようなフリーの講師にとっては、このように誰かと日々の思いをシェアする機会は少なく、不要なアドバイスや良い悪いのジャッジもなくただ深く聴いてもらうという体験は、本当に貴重な救いとなるのを感じます。実際に身体的にも軽さを感じていました。身心の繋がりというのをダイレクトに実感できる時間でしたね。
「共有トラウマ、ペルソナを外す」
内田先生が導入部分で説明されていた「共有トラウマ」というものに触れる部分もありました。これは、援助者が自分も被害者なのにそのことを押し殺して頑張らなくてはいけないという思いをもつことを意味するそうで、地震などの被災者援助や今のコロナ禍の中でもとても多く起こったことだとのことです。
ヨガの講師なども同様に、上記のようなコロナ禍の先の見えない不安を抱えていても、
「どっしりと落ち着いていないといけない」
「講師らしく振るわなければならない」
といった先生像に縛られ、その思いを生徒さんと共有するようなことはなかなか叶いません。そしてそんな思いはあらゆるところからこぼれ落ち落ち、気づかぬうちに埃のように意識の階層に降り積もっていきます。それが重く心身を固めていきます。
私たちはそんな職業的ペルソナを外し、ありのままにこの思いを分かち合う機会を本当に必要としていたのです。そんなことにも気づきました。それには上下関係やランクの少ないものどうしが集まり会い、マインドフルに聴き合い語り合う場が必要だったのです。
「マインドフルな自分への優しさ」
そして最後にペアになり、「自分への優しさ」というワークに取り組みました。
これは、「〇〇さん、あなたにとって優しさとはなんですか?」
と片方が問いかけ、片方がその言葉を受けて思いを巡らし、
「思いやりです」とか「温かな言葉です」などと答えていくというものでした。
それを繰り返していくと、不思議なことにポカポカと温かい感情が内面から湧いてきました。
ひとつの言葉が次の優しい言葉を生み、次の言葉がまた次の優しい言葉を生む。その繰り返しがひとつひとつをコーティングしていくように積み重なり合い、お互いがお互いを温めあっていきます。そんな相乗効果は、問いかけを投げかける方も受け取る方も同様に高まっていきました。
そこでは私とあなたという「側」というものが薄まり、あるいは消え去り、間主観の溶け合ったマインドフルな関係性の中にいました。言葉は私たちを制限すると共に、深く解放するという事実に驚きもしました。
ペアワークが終わり、全体でのシェアでも同じような感想が出てきていました。
「最初に硬さを感じていた身体が、今は凄く緩んでいます。」
「ただ聴くということが、こんなに心に影響することに驚いています。」など。
シンプルなことは、それゆえにダイレクトに心身への影響を強く及ぼす。そんなことも感じました。
言葉からこぼれ落ちてしまったもの、表に現れていない裏のものを深く聴く。
命のレベルでお互いに存在すること。それを大事にすること。
このシェアリングサークル自体がこれからますます回を重ね、互いの自分への優しさを温め合う場になっていくことがますます楽しみになってきました。本当にありがとうございます。
次回シェアリングサークルは11月13日(日)9時-11時です!
https://peatix.com/event/3385932/