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ICTの効果的活用ではなく積極的濫用

先週に続いて今週もICTの学校現場での活用に関する言葉を紹介します。

今年(2021年)の2月に、県内の小中学校、高校、特別支援学校の教員有志と指導主事が集まって学校教育の様々な分野について研究発表が行われました。

学力向上に関するテーマでは、授業力向上や探究活動、ICT活用などについて県内の先導的な事例紹介があり、質疑応答では活発な意見交換がありました。その分科会の場で、県指導主事の学力向上担当が会場の教師・指導主事に伝えたのがタイトルの言葉です。

県の担当者は「タブレットなどのICTはあくまで道具であって、授業で活用する場合にはその目的を見失わないように効果的に活用する必要があると言われています。その通りなのですが、効果的に活用できるようになるまでICTの活用を躊躇っていたら、いつまで経っても使えるようにはなりません。効果的に活用していくためにも、今は、ICTの効果的活用ではなく積極的濫用くらいの意識で使ってほしい」と話しました。

県教育委員会の思い切った言葉に、会場は少しどよめくものの、多くの教員は頷いていたのが印象に残っています。この言葉に私も同意見です。確かに先行してICTを導入している学校を視察すると、ICTを使うことに引っ張られてしまい、授業で効果的に使えているのか悩ましい場面も少ないですがあります。

そんな授業を一緒に参観した人は「ICTの活用に溺れている」と表現していました。まさに、溺れている、、、のだと思います。けれど、私はそれで良いと思います。泳げるようになってから海に飛び込むのではなく、まずは海に飛び込んでみて泳ぎ方を覚えるやり方もあるからです。
ですから、私は指導主事の先生(学校を訪問して教師にアドバイスをする担当者)には「事前練習としてICT研修はやるものの、それだけで使えるようにはならないので、現場の先生にはどんどんICTを使ってもらって、その上で本当に目的を見失っている先生がいたらアドバイスをしていく。指導主事の先生はライフセーバーとして、溺れたらいつでも助けにいくから恐れずに海に飛び込んで(積極的にICTを活用して)と現場の教師に伝えてほしい」とお願いをしています。
冒頭の研究発表会で「効果的活用から積極的濫用」という言葉が出たのも、そんな背景もあったからなので、とても心強く感じました。

これは先週の投稿でも書いた内容ですが、教師はICTのプロではありませんが、児童生徒の変化を看取ることに関しては専門家です。ICTを使って授業をしていくうちに、子ども達のリアクションから、多くの教師がICTの効果的な活用方法を自然と身につけていくと確信しています。

だからこそ、これはお願いになるのですが、来年度はGIGAスクール構想が本格的に始まる年であり、保護者や地域住民の方には、学校現場の挑戦をあたたかく見守ってほしいです。
授業参観の際、教師がICTを使っている場面であまり効果的に活用できていないのだとしても、批判ではなくその挑戦自体を評価してほしいと願っています。
なぜなら、上手く活用できないその一歩は、学校におけるICTの効果的な活用に向けて避けては通れない道であり、教師が上手くできないながらも新しいことに挑戦する、その姿を見せること自体が児童生徒にとってプラスになると私は考えています。

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