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幸せな人生とは?『グッド・ライフ』
「幸福の予測因子」
すこし前まで、こう言われたら口を噤んでしまっていたような気がします。
「幸せってなんだろう?なんて、考えられるだけで余裕がある、昔は生きるのに必死だった」
たしかに贅沢なのかもしれません。でもいまだからこそ「幸せ」を問い直す気運が感じられるようになりました。
本著はTEDトーク視聴者数が歴代10位に入り話題となった、84年に渡る
追跡調査「ライフスパン研究」によって科学的に導き出された「幸福の予測因子」=よい人間関係について書かれています。
「文化が人を惑わせる」
社会の中で重要とされる前提、価値基準、慣習といったものがあり、それらは先の寓話の「水」のような存在になっていて、私たちは自覚も承諾もしないまま、その中を泳いでいる。
ここでいう先の寓話とは、お魚について尋ね流と、お魚にとって水は存在を意識するものではないので、水ってなあに?と問い返されるというもの。
あたりまえ=文化が違うことを人は意識できません。
文化のメッセージや慣習が、人を幸福や健康から遠ざけてしまうことがある。」
「幸せ」を考えるとき、周りと比べたり人からの評価でなく、自分の心の底から湧いてくる何かがあるでしょうか?
どちらがいいのではなく、まず正直に自分が自分に本音を聞いてあげるプロセスは大切だと思います。
「スケジュールから外れている」
みんな進学し、みんな就職し、みんな結婚し、みんな子どもがいて‥
そんな「みんなの」スケジュールから外れてしまったことで、疎外感や劣等感を抱くこと。たしかにあるかもしれません。
私自身も大学卒業後に留学とは違う形で海外で暮らしたため、なんだか気が付いたら周囲とは違うスケジュールになってしまったな、と思った経験があります。
「ソーシャル・ユニバース」
自分の周りにいる人たちを思い浮かべてみます。
縦軸に「元気がもらえる」「消耗する」横軸に「会う機会が少ない」「会う機会が多い」をとります。
改めて眺めてみると、次にするべき行動が見えてきます。
会えば元気がもらえる友達にもっとあえるように連絡をとってみようとかどうしても苦手な人、なるべく会う機会を減らすしかないのかな?そのまえに、消耗しないために何かできることあるかな?とか。
これも「するべき」でなく、本音を自分に教えてあげればいいんだな。すこしほっとできるかもしれません。
「今すぐ決断すべきこと」
本著の最後の著者からのメッセージにはこうあります。
まず、幸せな人生は目的地ではないと認識することだ。幸せな人生とは道そのもの、道をともに歩く人たちそのものだ。
とてもマインドフルなことばだと思います。
There is no way to happiness , happiness is the way .
著者のひとりロバート・ウォールディンガーは精神医学教授、臨床精神科医、精神分析医であると同時に、禅の師でもあります。
本著でもティク・ナット・ハンのことばを引いていましたが、長きに渡りライフスパン研究に携わってきた氏にとっては実感なのだと思います。
この瞬間にー今このときにしその人のほうを向いてみよう。電話をしよう。思いを伝えよう
本書は84年の膨大なデータから導かれた科学的研究ですが、読んでいると不思議と穏やかな気持ちになります。データからの「使える」情報をちょっとピックアップして、効率的に活かそうとは思わないのです。
研究を引き継いだ研究者が、ときに疑念(対象が白人男性に限られていたことなど)を抱いても、被験者のファイルを読むと目を輝かせて「やはり研究に参加したい」と思い直すようになる、というエピソードが紹介されています。
読者としても読み進めるうちに、登場する被験者の人生に寄り添う気持ちが生まれ、どんな人生であっても日々の営みはひとつとして同じものはないオリジナルであることに感動します。
誰もが望む「幸せな人生」。
しかし、人生はただただ素晴らしいとも思うのです。
Life is beautiful.