やりたいこととやらなきゃいけないことのグルグルをとく糸口のはなし
自分は2月という月が一番短いという事実に対して少々焦っている。
おまけになんでも今年は124年ぶりだかで節分が2日。立春は3日で2021年の2月3日は初午でもある。
新しい年を迎えて、今年こそは・・・と願ったあれこれはもう忘却の国の彼方に行ってしまったらしくすっかりなりを潜めている。
1日は24時間で1週間は7日。
1年は365日ないし366日。
誰にも等しく訪れるだろう時間は容赦なく過ぎ去っている。
後でやろうを繰り返して1日が終わり、
明日やろうを繰り返して1週間が終わる。
来週やろうを繰り返して1か月が終わり、
来月からやろうを繰り返して1年が終わる。
そんなような言葉をネットで見つけてやる気になるどころか自分を責めはじめてさえいる。
今年こそはと思っていたのも気が付くとすでに1月が終わってしまった。
そして今月、2月は他のどの月より短いのだ。
このままでは12月になって、来年やろうと思っているかもしれない。
時計を見ればかれこれもう1時間近くたっていた。
スケジュール帳を開き、ペンを片手にぼんやりと何かを思いふけっているかと思うと急に立ち上がって本棚から本を出して開いてみたり、本を読むのかと思えばポケットから取り出したスマホを見ながらウロウロ歩く。かと思うとイライラした様子で頭をかいたりしていた。
落ち着かない気持ちのままソファにどかんと座ると、先にソファに腰かけて何やらじっと描いていたスケッチにはそんな僕の様子が描かれていた。人の行動をネタにしてセリフや思考をあてはめて脚注をつけるのが彼のこのごろの楽しみのようだ。
「ねえ、人の思考を勝手に書き出さないでくれる?」
スケッチを勝手にのぞき込んでいることは棚にあげて偉そうに僕は言ってみた。
「君が焦っている理由を知りたくてね」
「焦ってる?僕が?」
「そう。どうみても落ち着いているようには見えない。」
「ああ、焦っているかもしれない、だって2月はひとつきが短いじゃないか。ほかのどの月よりも!」
焦っているのを見透かされた気恥ずかしさも手伝って声が荒くなる。
「君はそうして絵を描いたり、友達だってパンを焼いたり、コンサートにいったりみんな、みんな自分の好きなことをやっているというのに僕は何もできていやしない、やりたいことも、やらなきゃいけないことも、何一つだ!またこのまま僕は何もできないままで2月が終わって一年が終わって一生が終わるんだよ!」
昨年、勤めていた部署が変わった。新しい仕事の仕方になじめず、どこから手をつけてよいのかわからず、時間だけがすぎていた。声を荒げて言うほどでもない単なる八つ当たりだ。自分の不甲斐なさに対する泣き言。
「2月なんて月はさ、たしか君が産まれる前からひとつきが短いことが決まっていたような気がするよね?」
いたずらっぽくそう言って笑う。こちらの機嫌の悪さを知っても決して同調することはない。座り心地の良いソファからすっと立ち上がったかと思うとすぐに戻ってきた。手にはマグカップがふたつ。
「はい、これ、あったかいのいれてきた。まずは一息つこう」
そういって彼は隣に腰かけると湯気の立つカップを僕に差し出す。
「2月は一番短い、これは事実だね。僕は好きな絵を好きなように描いているし君の友達もパンを焼いている人もいればコンサートや映画を楽しんでいる人たちもいる。ただ、それはみんなそれぞれ違う人のことだよ。そしてそのことと君が何もできていないと感じていることは別の話だと僕は思うんだ。例えば今の暮らしは君が望んだものだろう?そのカップだって紅茶だって牛乳だって君が選んで買ってきてくれたものだよね。つまり君は好きな紅茶を選んで飲むことができている。それに君は毎日本当によくやっているよ。」
言葉を選んでくれているのが伝わって来て、声を荒げたことがかっこ悪くて申し訳ない気持ちになる。
「君は少し気が付きすぎて考えすぎるからね、色んな事に気がむいてグルグル考えてると脳はそれだけで疲れちゃうんだって。けれど思慮深いのは利点だし、君が苦しむ必要はないんだよ。えーと、そうだ、いい方法がある。僕もこの前、人からおそわったんだけれどね」
「このNoteを使ってごらん、君がやりたいこととやらなきゃいけないことをここに書き出してみて。一度に全部じゃなくてもいいから書いていけばいい。そしてやりたいことで楽しいことからひとつずつやっていこう」
そうして僕は言われた通りやりたいこととやらなきゃいけないことを書きだした。すると彼は書いたものの一番前に□を書いてくれて、できたものを塗りつぶすことも教えてくれた。「きっとできるからね。やりたいこと、たのしいことからはじめるんだよ。」と念を押して僕を一人にしてくれた。
そうして僕は書き出してみて、できたひとつを塗りつぶしてみる。
頭の中でグルグルしていたものの糸口が見えた瞬間だった。
やらなきゃいけないこと
□ 新しいゴミ箱を買う
□ 役所の書類を出す
□ 新しい名刺を作る
□ 頼まれていた調べごとをする
□ 郵便局へ行って支払いをすませる
□ zoomのアプリを入れなおす
□ 実家へ連絡をする
やりたいこと
□ モリー先生との火曜日を読む
□ 英語を勉強しなおす
□ リストを作って定期的に見直す
□ 1年の間にやりたいことを割り振ってスケジュールをくむ
■ 自分は2月が一番短いという事実に少々焦っているではじまる小説を書く
長々お読みいただきありがとうございました。これは「自分は2月が一番短いという事実に少々焦っているではじまる小説があったら読んでみたい」という言葉にひかれて最近の気づきも含めて書いてみました。新しい自分への小さな一歩の積み重ね。note毎日更新もやりたいことのひとつ。登場人物は架空です。
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