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映画「波紋」の感想。悲劇は喜劇だけど、どちらも底は一緒。

久しぶりに映画を観た。

「淵に立つ」で存在感が強烈だった筒井真理子さんの魔性と狂気がすごかったので、今回の新興宗教というテーマが入るとどうなるのか、と戦々恐々として腰が引けて観たが、観終わって、まさに「絶望(なのに)エンターテイメント」だった。

皆さんの周りで、東日本大震災をきっかけに、生き方の違いが出てきてしまい、チグハグになった、解散した家庭や仲間、グループもあったんじゃないか、と思う。

この映画も、その直後から始まる。

震災の影響でか旦那が失踪した後に、新興宗教にハマる彼女。自分の親の介護を嫁さんにしてもらいながら失踪をしたのに末期がんになって帰ってくる旦那、家を出て住んでいる一人息子が久々に帰ってくると…

筒井真理子さんの怒りや憎しみ、それを密かに仕返しする微妙な表情の変化が絶妙で、「そうそう、あるある!」と叫びたくなります。演技の微かなデフォルメが、かえってリアルに迫ってくる。

そして彼女を取り巻いている何気ない生活の中の人達の、単純なつぶやきのような言葉の中にある深い意味。

その一つ一つに、彼女は自分の生き方を静かに「アップデート」していきます。

話の展開は、時に演劇風に進んでいきます。

この映画の中で、旦那役の光石研さんの最後のセリフが一番良かった。

あの言葉が言える、受け入れられる世の中になって欲しいし、自分も言いたいなぁ。

今を生きる、自分と生きる、そして…

久々に映画を映画館で見られて良かった。

この出演者の皆さんの演劇だったら、チケット入手困難で正規で一万円以上しそうなのが、映画館だと1900円。

セリフの中に何度か「ことわざ」が出てきましたが、私も一つ感想としてことわざを言わせてもらえば「悲劇は喜劇」。

だれしも多少なりとも不条理の中に生きていると思いますが、自分の悲劇を喜劇として見ることができたら、すこしでも楽になりますよね。

是非、気になる方は劇場へ!

今、私はお酒の一滴の波紋の中にいます。

一日楽しかった。おやすみなさい。


神保町サイゼリヤ前から

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